【第二話前編】地平の先に見える村
「…おなか減ったなぁ。」
遠くに村らしき影は見えども延々と北へ北へと続く道。
食料は道すがらで見つかるだろうと思っていた。
しかし、だんだんと木々が見慣れないものとなり、『地域の違い』を感じた。
なぜか枯れかけた木ばかりが群生し、白いもやもうっすら浮かんでは消えて。
落ち着こうと水を通しにくい木の幹で作った水筒を取り出すが、水がない。
村の森からなら狩場や湖の場所を把握しているのに…。
『別の村』に行ければ何とかなると思っていた。
辺りには拓かれた道と木々ばかり。
朝だというのに道の向こうは薄暗く、不明瞭だった。
不安が、徐々に心に沁み込んでくる。
その時、向かい側から人が歩いてきた。
僕は思わず声をかけ、食べ物を分けてもらうよう頼んだ。
男は、朗らかに話しだす。
「あぁ、いいぜ。ただし、ちょっと手伝いを頼まれちゃくれないか。」
「俺は、この森にある木の実を探しているんだ。一緒に探してくれ。」
「こんな暗い森で?」思わず聞き返す。
「あぁ、それに得体のしれない生物が襲ってくる。」男はため息交じりに話す。
「ヒルや、ヘビ、クモでしょうか。」僕は尋ねる。
「だったら、わかりやすくていいんだがな…。…木が襲ってくるんだ。」
「そんなの、聞いたこともないよ!」僕は思わず口走る。
「で、どうする。俺についてくるか?止めるか?」男は不敵な笑顔を見せる。
「…行くけど、何をすればいい。」頼れるのは彼だけと諦め、僕は言う。
彼は、背中に背負った荷物から、一本の枝を取り出す。
「これに、火をつけられるか?」火付け道具と枝を差し出しながら男は言う。
「あぁ、わかった。」夜警の時に火おこしをする僕は、難なく枝に火をつける。
それを見て聞こえない口笛が聞こえた気がした。男は言う。
「灯りをもって進むのは俺がやるから、他の枝と火付け道具、このかごを頼む。」
「この煙を『化け物木』が吸うと、『くしゃみ』をするらしい。
変な音がしたら周りに気をつけろよ。」男は燃やしている枝の効果を説明する。
枝は意外と少ない、無駄にしないよう、奥地へ進む足が足早となっていく。




