【第六話前編】君に追いつくために
サリアに会うための段取りはメリダがやってくれるようです。
メディラスの肉体言語に疲れ果てた主人公は眠ってしまいますが、
どうやら夢を見始めたようです。
試しにナレーター風前置き。
夢を見た。それは泉の水を飲んだ直後からだった。
目に映るあらゆるものが『見えて』しまい、吐き気を感じた。
思わず目をつぶり、胸を押さえうずくまった。
「大丈夫か?」背後から声がした。
あぁ、怖い、誰なのか確かめたい。
でも、目に映せば木であれば種から枯れ木まで、
泉に映った自分の姿からも産まれた瞬間から『死の瞬間』までが、
ほんの瞬きをしないうちに頭に流れ込んでくる。
とてもではないが、目は開けなかった。
体の様子もおかしい。
まるで風景から切り取られてしまったかのような隔絶感。
触れるものすべてを『止めたり動かしたり』できる感覚。
自然に身を預け、あるがままを感じることができなくなった。
吐き気を抑え体も動けずに、精一杯話した。
自分は逃げてきたこと、行く当てもないこと。
後ろに立つ誰かが心優しい誰かであることを祈って…。
「まさか、泉の水を飲んだのか!?」その叫びで夢は終わった。
部隊というものに入ったものの、
僕はほかの人とはあまりに違う迎えられ方をしたため、
一緒になった人たちも困惑していた。
怪訝な視線を感じるが、特に何も聞かれない。
メリダさんも席を外してしまっていたため、
なぜそこに昨日までいなかった『誰か』がいるか、
口に出すものはいなかった。
気まずい空気を感じながら部屋の隅にいると、
そんなことは関係ないとばかりに、
陽気な声が入り口から飛び込んできた。
「おっはよーう!グラディス君だっけ!お待たせ!」
メリダさんはにこにこしながら紙をたくさん束ねて持っていた。
「まず正式入隊の用紙ね!ここに氏名と、年齢を書いて…。」
言われるがままに紙の束に必要なことを埋めていく。
「じゃ!次に任務ね!ここに名前をよろしく!」紙をパシッと机に抑える。
周りからはざわめきを感じる。
僕はそんな珍しいことをしてるんだろうか。
何もかも初めてで比べようがない。
「はい終わり!じゃ『淡き竜の爪の補充』、よろしく頼むね!」
そういい終わるとメリダさんは風のように去ってしまった。
どよめきを感じながら、紙に書いてある内容を読んでみる。
「町の裏にある道具屋から『淡き竜の爪』を1個購入し、部隊に納品すること。」
…とりあえず『裏』と呼べそうな寂れた通りに辿り着く。
そこで道具屋があるはずだけど、看板だらけで目移りしてしまう。
通りをきょろきょろしながら歩いていると、不思議な看板が目に入る。
ラコックスさんの手が光ってた時の文様と同じものが描かれている。
聞ける人もいないので、その店に入ることにした。
店の中は雑多にあふれていた。
生活用なのかお祭用なのか、訓練用なのかわからないが、
様々な液体が入った瓶がおかれ、木の実が入った袋が吊られていた。
しかし、肝心の店番がいない。
「すみませ~ん。『淡き竜の爪』ってありますか~。」
奥があるかわからないが、呼びかけてみる。
しばらく沈黙が続き、留守かと思い振り返ると。
入り口で誰かが梁に宙吊りでぶら下がり、こっちを見ていた。
一人称視点で言うところの、お化け屋敷的ギミック。
5/10更新
本文内を和製語に修正してみました。




