【第五話後編】束の間の再会
閉じ込められ、街の端まで案内され、謎の戦いを申し込まれ…。
無意識に発動した『想像の力』で草を伸ばし、足を絡めとり、動きを封じた。
一撃でも当てれば答えが分かると、夢中だった…そして、声に遮られる。
「もう、いいでしょう?メディラス。」その声は穏やかな女性だった。
その女性は、おじさんと僕の間に分け入り足元を覗き込む。
そして、異様に成長し、足に巻き付いていた草を確認した。
「…残念ながら、『生き残り』とはっきりわかっちゃった、か。」
「駄目じゃない、ラコックスにはちゃんと言われてたはずでしょ?」
「メリダ…物事には順序があってだな…。」
おじさん、いやメディラスさんはため息交じりに話す。
そして、僕を無視した2人の会話が始まる。
「
あなたが相当暇なのはよくわかったわ。
それで、順序ってなによ。
どうせあなたの馬鹿がつくほどの体力で、
あの子を1日中振り回す気だったんでしょう?
」
「
こいつがサリア様と会う気なら、『心の鍛錬』が必要なんだ。
今の『力』の扱いも暴走に近い。
中途半端に植え付けられた『力』と曖昧な意志では、
場合によっては多くのものを傷つけるかもしれん。
」
「
それで、『力』の扱い方を肉体言語で伝えようというわけね?
あぁ、心優しいメディラス。
あなたの戦士としての実力は十分認めてる。
でもあなたのその熱意は、きっと1割も伝わらないわ。
残念ながら、メディラス。教える力は全く無いといっておくわ。
なんでしたら、今まで何人介抱したか、数え上げましょうか?
そしてそのうち、私の説明なしで何をすべきか気づいた人数も?
ちゃんと、この手帳に書き残していますよ?
戦う以外は、あなたは駄目駄目なんですよ。い・い・で・す・ね?
」
メディラスさんは不服そうな顔をしつつも、返す言葉をなくしたようだ。
村の朗らかなおばさんに尻を敷かれていた強面のおじさんを思い出した。
会話はそこで止まり、メリダと呼ばれた女性がこちらを向いた。
「
あなた、サリア様に会いたいなら、その『力』を扱えないと、死ぬわ。
あなたが会おうとしてるのは、『魔女殺し』サリア様よ。
会えたとしても魔女が扱う『力』に似ているそれを暴走させようものなら…。
あの方の『力』であなたは死ぬ。
」
「そんな…そんなものだったなんて。」僕は言葉をなくす。
『力」に助けられた時もあったけど、
その『力』が会うための障害になるなんて。
僕は茫然とメリダさんを見つめた。
「…だから、今度は私を捕まえてみなさい?」急に声がぼやける。
(
これが、『錯視の力』。
『力』を扱うという事は、自分の思ったように動かすという事。
見た感じ狩人のようだけど、この闇の中でさらに『錯視の力」。
そう簡単には掴まら…ひゃあっ。
)
『力』が解け、腕をひっしと捉えている事を確認する。
メリダさんは人に物を教える恰好のまま固まって、
徐々に頬を赤くしていった。
捕まえられたのは単純に、動いてなかったからだけど。
「
ふ、うふふ。まさか簡単に見破られるなんて。
ちょっと傍に近寄りすぎてしまったからでしょうか。
それとも『錯視の力』を使っている間は動けないことを見破ったのでしょうか。
」
勝手に説明を続けているけれど、
メリダさんが自分の世界に入り込んで話し続け、
僕はただ声のする方に手を伸ばしただけと、言わないほうがよさそうだ。
メディラスさんはため息をついて、声をかけた。
「
…とりあえず話は終わったか?
私は明朝の護衛任務の指揮を執るため戻るが、
こいつの世話と謁見のつてはメリダ、お前に任せたぞ。
」
「わかりましたよ。部隊長殿。」
メリダさんは独特の恰好…、
今日の祭りの屈強な人同士が挨拶のような恰好…をして、
メディラスさんが去っていくのを見送った。
「さて、あなたはとても運がいいわ、そしてとても残念ね。」
メリダさんがおどけたような口調で話しかける。
「運がいいのは『力』を見せたのが私とメディラスだけだったこと。
とても残念なのは、本日を以て我が部隊に強制加入するということね。」
その後も何か言ってたようだが、どっと疲れが出たのかその場に倒れこんだ。
戦闘パート抜きでも読めるようにと考えてたのですが、
前書き必須になりました。
遅筆ですみません。
なかなかいい物語の構成でまとまらず、
悩んだ結果考えが一周してました。
あと、名前が出る人物は
性格くらいしか見えないのを何とかしたいですが、
どうも苦手みたいです。
5/10更新
サリアの二つ名を修正しました。




