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【第四話中編】切れた口火【戦闘】

抜け道は、非常に足場が悪く、そして崖と隣り合わせだった。


前を歩いていた男はひょいひょいと足場から足場へ移動する。

僕は追いつこうと急ぐが、距離の確認や助走の時間を図っていたら、

あっという間に置いて行かれた。


「ちょ、ちょっと待って!」声を出し、手を伸ばす。


片足を踏み外す。

勾配は垂直ではないとはいえ、急降下を始める体。

(あ、足場、足場はどこだ!?)祈るような気持ちで真下を見渡す。


その時、手の甲に刻まれた紋様が光り出したのを僕は気づいてなかった。


そこに足場が『現れた』。

あまりに不安定で、全体重が乗れば崩れてしまう小さな足場。

止まることはできず、別の足場を探す。


そして『現れ』、踏み抜く形で痛みと共に減速していく体。

…そして大分勾配が緩やかになる。

極度の緊張感と、踏み抜いた足場による足の痛みで、頭がふらっとする。


「お…、お前、どうしてここに?」そこにいたのは、傷を負った首領だった。


崖に体を預けながら、恐らく矢の類で傷を負ったであろう体が痛々しい。

「ここが死に場所かって走馬燈が巡ってるところに降ってくるなんてな…。」

弱弱しげに笑う首領だったが、その目はまだ生気を帯びている。


「さて、私の役目は十分果たせたかな。」首領は俯き、呟いた。


直感的に思った。

この人はいわゆる人をまとめる長じゃない、

目を逸らさせるためだけの『偽の目印』だ。


何かはわからないが、大事なものを隠している、気がした。


「さて、ここは崖の下で、追いつかれるとは思わないが。」語り出す首領。

「手伝ってくれ。面白い情報が手に入ったから、死ぬにはまだ早そうだ。」

満身創痍な体で眼だけ生き生きとしていた。


そう、その地下水路に入ればいい。

かなり激流だから、壁に寄ったり、俺を離してくれるなよ。

そうでないと2人ともお陀仏だからな。


肩を貸し、案内されるまま引きずりながらその穴にたどり着いた。


ドドドという音は水というよりも地面が削れる音にも聞こえる。

「ははっ、怖気づいてもここ以外道はないぜ?」心配の原因は首領なのだが。

「…わかりました。行きますよ。」僕は覚悟を決める。


途中の壁に当たらない見事な着水と同時に、足が流れに呑まれ仰向けになる。


恐怖からか、首領をぐっと引き寄せ、抱き着く格好になった。

「ははっ、大丈夫さ。あたいにはこの『力』がある。」

ゆっくりと手を天井に向け、手の甲から紋様が光り出す。


流れの強さ弱さには、速さ遅さの他にも関わるものがある。

それは始まりから終わりへ向かう距離と角度。

私に宿る『進路』の力が、激流を変えるのさ!


すると、滝のような音が川の音に近づいて行く。


…この『力』の欠点は対象が強い程、中和に時間かかることなんだよなぁ…。

ただでさえヘロヘロなのに時間を引き延ばさなきゃいけないのはつらい…。

本来の流れならすぐ着くのに…。


どうやら僕らに触れた水だけが『進路』を変え、緩やかになっているようだ。


「…ちなみに、その傷は。」僕は恐る恐る聞いた。

「あぁ、これね。」首領は待ってましたとばかりに顔をこちらに向け笑う。

「『奴ら』、大量の弓兵を連れてきたのさ、私で無ければ蜂の巣だったね。」


『進路』を変えるにも矢が触れないとだめだったらしい。


「僕らの村では害がある獣に対して、矢に毒を塗って狩ることがある。

もし毒矢だったら危なかったですね。」

弓矢の使い方を巡らせたら思いついたので口にする。


「ん、あぁ…。たぶん、毒もらった。」首領は当然のように言う。


唖然とする僕の顔を尻目に、笑う。

「なぁに、毒も皮一枚のところで留まらせれば問題ない。

さすがに一気に矢が来たから見るも残念な姿なんだけどな。」


「それに、溜まってた毒もこの水で洗い流してるから。」

だんだんと生気が戻ってくる首領の顔。

そんなあっけらかんとした首領を見て、僕は思った。


(ここが狩猟場の水辺だったらそれは大罪なんだよ…。)

今の状態の主人公を矢面に立たせると最終話になるので戦闘後。

頭の中の言葉は()で表現してみました。


5/10更新

タイミングを時間を図るという表現に変更。

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