8話目
泣き始めて少しすると、ようやく涙が止まった。
ふぅ、とゆっくりと息を吐き出すと、天ちゃんへと視線をやると、特に気にしていない様子の天ちゃんが珈琲を飲みながらこちらを窺っていた。
「それで、どうしたんだ?」
話しにくそうにしていた俺に気を使ってか、そう声を掛けてくれた。・・・やっぱり、天ちゃんは優しい先生だな、と思いながら、「あのね・・・」と昨日のことを話した。
―――「それで・・・どうしたら、蓮さんが不安に思ってることを俺に相談してくれるのかな?」
昨日のことを話しながら、目を合わせてくれず、無理に笑みを浮かべる蓮さんのことを思い出した。すると、また涙が零れた。それを慌ててごしごしと拭うと天ちゃんの言葉を待った。
天ちゃんはそんな俺を見て小さく溜め息を零した。
「お前はどうしたいんだ、相談してもらって…それで?」
「・・・頼って、ほしい。俺は蓮さんと対等で居たいんだ。年下だし、難しいかもしれない、けど。だって、恋人だし、さ・・・。」
「・・・恋人、ね。」
天ちゃんは小さく笑みを零しながら、ポンッと俺の頭を撫でた。俺の言葉に少し嬉しげな笑みを浮かべた様に見えたのは気のせいだろうか。
「天ちゃんはさ、蓮さんがなんで寂しそうにしてるのか、知ってるよね・・・?教えてくれなくてもいいから、どんな風に聞いたらいいのか、ちょっとアドバイス、くれたらなー・・・って。」
俺は必死になって天ちゃんに聞いてるのに、天ちゃんはクスクスと笑みを零していた。
「・・・お前、ちゃんとしてたんだな。まぁ、馬鹿には変わりねぇけど。」
小さく呟いた天ちゃんの言葉は聞こえなかったけれど、嬉しそうに笑みを浮かべていたので悪いことは言われてないとは思うけれども・・・、なんて考えていたら、天ちゃんは更に続けた。
「蓮と俺が親友だってのは知ってんだろ?」
「うん。」
「一緒に育ったってのは?」
「・・・知ってる。」
「そうか。まぁ、聞いてる通り、俺たちは両親に捨てられたり、亡くして1人になったりしたやつがいっぱいいる児童養護施設ってところで一緒に育った。…親友というか、兄弟が一番近いかもな。それから仲良くなって、何でも話せるようになった頃だ。今みたいに遠くを見るようになった。」
そういった天ちゃんはなんだか蓮さんと同じ様な寂しげな笑みを浮かべていた。