17話目
「おっはよー、天ちゃん!」
さっそく、荷物を取りに保健室へ向かった。
元気よく声をかけながら、ガラガラと勢いよくドアを開ける。
すると、げんなりした様子の天ちゃんがこちらを睨むように見つめていた。
「・・・あ、あれ?ご機嫌ななめ?」
「朝からうるせぇんだよ。ってか、海斗、昨日のは一体なんだよ?」
昨日の逃げ出してしまったことだよな・・・と思い、
「あーうん、まぁ。」と適当に返事をしながら「あっ!」と声をあげる。
「元はといえば、天ちゃんが悪いんだ!」
びしっと指しながらじとりと見つめると、「あ?」と低い声が返ってきた。
「だ、だって、桜さんに話したでしょー?そのせいで・・・。」
天ちゃんの低い声にビクビクとして、最後の方はモゴモゴとした感じになってしまったが、
ジロリと視線を再度向ける。
俺の言葉にばつが悪そうな表情に変わり、「それは・・・悪かった。」とボソリと謝罪した。
その小さな謝罪に、「聞こえなーい。」と返そう思ったが、目的のために口を開いた。
「それより、蓮さんから上着と荷物預かってる?」
「あぁ、これだろ?」
ほぼ、なにも入っていない鞄を受け取り、綺麗に掛けてあったであろう上着を羽織った。
「あ、昨日結構遅くまで飲んだんでしょー?蓮さんから4時ぐらいに連絡来てたし。」
にしても、天ちゃん普通そうだな、と様子を見ながら、今朝思っていたことを言うと、
天ちゃんから何故か、拳骨が降ってきた。
なんで!?理不尽!!
「・・・今日、仕事だったから、昨日は1時過ぎには解散したっての・・・渋々。」
・・・飲み足りなくて、ご機嫌斜めなのか、と納得していると、あれ?と首を傾げる。
なら、なんであんな時間に?と疑問が浮かぶ。
それに対し、電話で聞こうかな、お礼も言わないとだしね、と内心呟きながら、携帯を取り出す。
「おい、海斗。堂々と教師の前で電話しようとすんな。」
ムスリとした様子でブツブツと文句を言いつつ、保健室から出ていってしまった。
なんだかんだと文句を言いつつ、見なかったことにしてくれるのが、
天ちゃんらしいなーと内心感謝し、耳に携帯をあてる。
『プルル・・・プルル・・・』
呼び出し音が鳴り続ける。
・・・出る様子もなく、留守電の設定にもなってないらしく、ひたすら呼び出し音が続く。
・・・天ちゃんが戻ってきても、蓮さんの声を聞くことは出来なかった。