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10話目【Side:R】


Side:R


 『キーン、コーン、カーン、コーン・・・』


 四限目の終了を知らせるチャイムを聞き、授業終了の挨拶を素早く済ませると、俺はどの生徒よりも先に教室出ると、足早に保健室へ向かう。

 天音から届いた、三、四限目の欠席届を受け取ると同時に自分の早退届を出してきた。


『早退ですか?まぁ、昼休み以降は授業はありませんけど、工藤先生、担任のクラスを持ってるんですから気を付けてくださいね。』


 教頭からの嫌味を頂戴したんだが、いつもか、と自分に言い聞かせると少し自嘲が零れた。

 二限目の際の事を思い出しながら、海斗の心配をしつつ向かっていたせいか、思った以上に気が急っていたらしく、目的地である保健室が目の前であった。


『コン、コン、コン』


 ドアを三回ノックすると、中からの返事を聞くことなく、『ガラリ』とドアを勢い良く開けたと同時に天音へと声を掛けた。


「天音、悪いな。」


 天音はドアの音を聞き、こちらを向いていたらしく、すでにこちらを向いていた。


「・・・本当にな。ほら、そっちで寝てるぞ。」


 天音は奥のベッドを指しつつ、小さく苦笑を零しては「ちゃんとしてやれよ、恋人だろ?」とクスクスと小さく笑いながら、少し揶揄う様な口調で言ってのけた。

 それに「うるせェよ。」と小さく言ってのけることしか出来ず、天音から視線を外した。そのまま、ゆっくりとベッドへ近づき、カーテンを開け、陽にあたる海斗を見ては、顔色は悪くないなとホッと一息ついた。

 スルリと頬を撫でると、海斗の体温を手のひらに感じる。・・・何にもなくて、本当に良かった、と思いつつも、起こさないと、と何度か揺すってみる。


「おい、海斗。起きろ、帰るぞ。」


「・・・う、ん?れ、れんさん・・・?」


 目をショボショボとさせつつ、こちらを見ては俺だと分かると、ヘニャとだらしない笑みを浮かべる海斗にこちらも小さく笑みが零れた。


「嗚呼、・・・帰るぞ?」


 そのまま髪を撫で続けては、海斗は気持ちよさげに撫で受けていた。・・・もう少しこうしていたいという感情が沸き上がるものの、天音の「おい、ここではイチャつくなよ?」という声に「嗚呼。」とだけ返事をし、海斗の荷物を持ってやる。


「俺の家に帰るぞ?」


 海斗は欠伸を零しつつ、俺の言葉を聞くと、嬉しそうに笑みを零す。


「・・・うん、帰る。」


 海斗は照れた様子を見せたが、どこに照れる要素があったんだ?と疑問に感じながらも、そのまま、ドアの方へ向かい、天音に「また。」という意味を込めて、軽く手を上げては天音も返す様に手を上げた。それを横目に保健室を後にした。

 後ろで海斗が「天ちゃん、ありがとうね。」と機嫌良さげに言っているのが聞こえた。たった一言、天音と交わしただけだったが、また心の中に黒が広がっていく。

 

 ・・・自分の心の狭さに呆れるばかりだった。


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