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せい、よくしこうていし

勢、欲思考停止【仮】

作者: RYUITI

憎悪と性欲の境、

熱情と冷酷の鏡。



似ているようでナニかが違う二人の男は、

対峙しながら互いに違う解釈や感覚の中で、

一つの戦いを行っていた。



戦いの場は褐色の大地。

あちらこちらに岩や粉砕されたナニかの破片が転がっている。


ゴロゴロと転がる残骸に気に止めることもせず。



ガチガチとぶつかる槍の鈍い音に反して、

流れる汗と吹き出る血が早々に双方の体力と精神力を削り溶かしていく。

血を吹く一方は黒い槍を構え、

汗を流す一方は白い槍を交じらせる。

鋭い槍が強い力でぶつかり合う。


まるでナニかを守るように、

ナニかを押し通すように。


幾度となく力の入った打ち合いが繰り返される褐色の大地に響くのは、

暑苦しい程に熱を帯びた二人の声。

「ヌオオオオオオオウ!!」

「ぬあああああああう!!」





互いの槍が八度の衝突を繰り返した後、



色違いの槍を持った彼らは寸分も狂うことなくゴツゴツとした大地に倒れ込んだ。





カチリと針が進む時、




――――――それは唐突に訪れる。



眩しい光に包まれた誰か。


ただの女性だった鳩葉根サチは、

見覚えの無い、

ゴツゴツとした冷たい大地の上で、

眼を覚まし、驚愕した。


仕事場から帰ってきてベッドに身を投げて目覚ましをかけて眠りに着いた所までは覚えていたのに。


起きた鳩葉根サチの視界の中には、

身体と顔が似ている二人の男が倒れ込んでいるのが映っていた。



双方とも死んでるのか眠っているのかわからないが、

鳩葉根サチは状況を確認するよりも先に身体が震えていることに気付いて、自然と後退りをし始めている。

倒れている二人の男の姿が少しずつ、ゆっくりと遠くなるにつれて、鳩葉根サチの心拍音はドンドンと速く強く鳴っていく。


しばらくすると倒れ込んでいた二人の男は眼を細めてみてやっと確認出来るほどに遠くまで進んでいた。


だというのに褐色の大地は一向に途切れる事がない。

進んでいることは確かなのに。


そう、胸の中で焦りが渦を巻いて内部を侵食していくような感覚でいっぱいになっていたその時、


いつの間にか右肩に、

じわりとヒヤりと、

氷のように冷たい感触を覚えた。



ドキリと跳ねるその心臓が、

自分のモノかどうかも判らなくなるほどに、

鳩葉根サチは顔色を青くした。



鳩葉根サチが冷たい石のような状態からふと戻ったところで、

おかしな声が背後から耳に響く。

「やあ♪、おムネの柔らかそうなお嬢サン♪

キミはいきなりでオドロイテルかも知れないけど♪

キミは世界を変えるチャンスを手にイレタンダヨー♪」


何を言っているんだろうコレ。


声がしたほうを振り向けば、

其処には――

鳩場根サチの右肩に変な感触を残していた当人であろう、

小さな(小人のような)ナニかが笑いながらそこに居た。


髪は艶のある金色で眼は丸く全てが白眼でぬいぐるみのよう。



よく見ると頭の上には、

小さくてオレンジ色の生地で天辺に黒い丸が付いた三角帽子が乗っていた。

ゆるりと動く小さな身体に合わせて帽子も揺られていて、

その姿がなんだが可愛らしいと思った時には――

「何をそんなにジロジロ見てるの♪

というかボクの話聞いてる?♪ 」


なんて表情の変化が少ない顔でそう言われているのに気付いて。

私は慌てて視線を三角帽子から逸らした。


「もう♪やっぱり別のところ見てたでしょ♪」

逸らして直ぐ小さなナニかは鳩葉根サチの言葉にそう突っ込みを入れた。


だが――直ぐに。


「まあ♪そんなことはどうでもいいや♪

意味がわからないと思うけど♪

とりあえず君の日常はココで終わりさ♪

チョット失礼♪――オッヤワラカイ♪」


そう小人のようなナニかは呟いて、

鳩葉根サチの腹部に手を当てて何かを引きずり出すような仕草をした。


小さくて柔らかい感触が鳩葉根サチの腹部から腹部下へ伝わっていく。


撫でられるような感覚だったものが、

ゆっくりと強く、強くなっていく。



大切なナニかが身体の中を離れていくような感覚に陥った後、

鳩葉根サチは静かな大地に倒れこんだ。



倒れこんだ女を気にかける素振りも見せず、

小人のようなナニかは何も無い自らの隣をジッと見続けていて。



いつの間にか。


小人のようなナニかの横に、

同じような大きさの黒い影が一つ、


ゆっくりと近付いて――。



「四番目、二人目の異常者の戦闘監視ご苦労。


後、貴様の近くに倒れている女性は誰だ。」


静かに問いを零す。


「あ……一番目じゃないかお疲れ♪

この子?この子は四番目の異常者さ♪どうカワイイと思わない?♪」


問いに対して、気にも留めていないかのように返す。


「貴様……!まさか意図的に異常者を生み出した訳じゃないだろうな。

我らは因子を持つ者達の保護、

干渉のために居るというのを忘れたか!!」


四番目と呼ばれた小人ようなナニかの身体がビクりと大きく跳ねて。


「あーもーそんなに大きな声で起こらなくてもいいじゃん♪

この子は誰がなんと言おうと四人目の異常者だよ♪

だって干渉してみたらさ♪安定を量るべき部分が、

結構ごっそり性の欲求に埋め尽くされていたからボクが保護したのさ☆」


早口で話す四番目の言葉を黙々と聞いた後、

一番目と呼ばれた影は。


「その話が嘘だと判明した場合は、私の手で貴様に罰を下す。

その事を忘れるなよ。」


そう言って静かに、

一番目と呼ばれた小人の隣から消え去った。


一番目が去った後、

四番目は冷や汗をかきながら、

けれど楽しそうにニヤリと笑みを零して。



倒れこんでいる鳩葉根サチは、

小人とは対照的に、拭えない熱に苦しみ出していた。


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