出会い(3)
「正解、ですか?」
彼女は幼げな笑顔とまっすぐな瞳をこちらに向けている。
「まあ、そんな所です。」
僕が答えた後も彼女はじっとこちらを見たままだった。何かを考えているようだった。とはいえ、女性にじっと見られるのは何だか小恥ずかしいので、
「どうかしました?僕、何か変なこと言いましたか?」
と尋ねた。彼女ははっと気づいた様子で、少し焦って顔を赤くしながら、
「いえっ!なんでも!あ、いや、なんでもなくはないんですが...」
と、何やらもごもごと口の中に言葉を閉じ込めた。こうなるとこちらも気になるもので、彼女の慌てっぷりに僕は、少し笑いながら言った。
「何ですか?よろしければ言ってください。僕、少々のことじゃ機嫌損ねませんから。」
彼女は何を言おうとしているのか。今日初めて会った、ただの冴えないサラリーマンの僕に、おそらく学生であろう彼女は何を思っているのだろう。そう思いながら彼女の返答を待っていると、雨が弱まりはじめ、空が明るくなってきた。そろそろ止みそうだな。帰りにベーコンと鷹の爪とニンニクを買って、今日はペペロンチーノにしよう。そう思っていると、彼女はやっと口を開いた。
「あの、初対面なのにこちら側から、このお願いは受け入れ難いと思うのですが...」
「はい、何でしょう。」
「もしよろしければ、今度、お茶でもいかがですか。」
そう言った彼女の頬を、赤くなりかけている夏の太陽が眩しく照らした。