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【打ち切り完結】どうやら俺の錬金術は世界を救うらしい  作者: 森鷺 皐月
第一章 錬金術師として手始めを
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流されやすい悩み

 アイリやエルフ達の厚意に甘えて俺達はアイリの家に上がらせて貰った。

 あまり褒められたことではないが、家の中を見回す。

 何の変哲もない俺の知っている世界に似たような洋式の部屋だ。


「青葉、先に入って来いよ」


 ライドの言葉に甘え、先に入らせて貰うことにしたのだが、何故我が物顔でこいつがでかい態度を取っているのかが謎だ。


「ゆっくりと英気を養って下さいね」


 アイリが笑顔を向ける。悪意は無いは無いで慣れないから女は苦手だ。

 適当に返事をしたところで、風呂場に向かう。

 ふわりとした良い香りがする。アロマか何か炊いてるのか?

 不思議と疲れが取れてくるような気がする。

 ここの所、錬金術の勉強や依頼ばっかでシャワーオンリーだったし、少し休ませてもらうか。

 ふと鏡に映った自分の顔を見る。


『男のくせにまともに女の子も守れないなんて、あんた何のために此処にいるの?』


 一瞬フラッシュバックしたその声は間違いなく女で、俺に直接的なトラウマを植え付けた人物だ。

 守るつもりだった。

 あの子を守るつもりだったけど、結果論で言えば俺は何も守れずにただ傷痕を残しただけ。

 だけど──


「考えたところでどうしようもねぇよな」


 今更だ。俺のこのトラウマは一生治らない。

 一生、女を否定して生きていく人生だ。

 洗面所と浴室を繋ぐ扉を開けると、そこにも優しくて良い匂いがした。

 石鹸の香りなのだが少し違う。香りだけで洗われるような気分になる。


「………」


 疲れを癒やす魔力とか?

 いや、いくらなんでも考えすぎだ。

 俺って流されやすいのか?

 異世界にどっぷり浸かってんじゃん。

 元の世界なんてどうでもよくなるくらい浸かってんぞ。

 しかも、いろんなものに好奇心持ちまくりだし。

 何かあれぱすぐに錬金術で開発出来ないかなとか思っちゃうあたり、錬金術病というか錬金術馬鹿というか。


 仕方ないだろ。

 この手で描くものが形になるってそれだけで楽しいし、嬉しいものなんだよ。

 だから、このわけのわからない力だって受け入れられる。

 そこに形が残るから、挑戦したいって思える。

 もちろん、がむしゃらに突っ走っていることも分かる。

 自分が今、何が出来るのか。

 世界を救うと言っても何をすればいいのか。

 この世界が終わってしまうのはいつになるのだろう。

 どれくらいの時間が残されているのかも分からない。


 元の世界で俺が消えて、誰か……家族とか悲しむだろうか。

 いや、所詮は小間使いだ。

 困ることはあっても悲しみはしないだろう。

 だとしたら、俺は帰らない方が幸せなのか?

 終わりの近いこの世界にいても元の世界にいても俺には先がない。

 この世界で死ぬか、元の世界でだらだらと目的もなく生きるか。それって同じことじゃないか。


 だって、未来が死んでるじゃないか。


 このままでいいとは思っていない、決して。

 でも、俺は何処かで折れてしまって相手に譲ってしまう。

 理由としては面倒くさいからだ。

 全く自分ってものを持ってないな、俺は。

 だから流されてしまう。

 きっと流されながら死んだ未来へと向かうのだろう。

 色んな奴から反感買う理由ってこれかもな。

 この世界じゃまだいないけど、そのうち絶対に出て来る。


 ──俺を全否定する奴が。




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