6章 授業
「あんましキョロキョロしないで。」
『あ、うん』
梨華とユイラは廊下を歩いていた。二人とも元々この学校にいた訳じゃ無いが、書き換えのうんたらかんたらで馴染んでいるってことになっていた。
ガラッ たったっ スッ...
「...」
『...?』
『アイサツしないの?』
「友達じゃ無い。」
『...そっか』
私のクラスには空いている席という有りがちな物は無いので、一番後ろの私の席の、更に後ろにポツンと一つだけ席が増えていた。
『ここ?』
「そこ。」
(あ...)
「昨日言い忘れたけど、ユイラって元はー」
キーンコーンカーンコーン
ガラッ「はい着席~!」
「...なんでもない。」
『?』
そして授業はインプットされた記憶でこなしたが、体育に至っては...
「うっ...ぐぅ...」
梨華は跳び箱で“本当に飛ばない”様に魔力を制御しなければならず、
『どうしよう...梨華さん助けて...(泣』
男女別々の体育で、ユイラは梨華がいない為右往左往していた。
キーンコーンカーンコーン
「お、終わった...」
『疲れた...』
「帰ろっか...」
あまり目立たないように二人で教室を抜けて、帰路に着いた。
(今日はユイラがいたから、気力集め辛かったな...本当に少しだけしか...)
ヒラヒラ...
「わっ!おぉおお!? 蝶...」
『綺麗だなぁ~』
遠くに消えて行った蝶を見送って、ふと足元をみると、小さく黒い線があった。
(ん?アリか。)
『どしたの?梨華さん。』
「アリが居たから...」
『アリ?』
「ほらこれ。」
『どれ~?』
梨華はしゃがんで行列を指差した。
そしてユイラはまじまじと行列を見つめた。
『 はぁあっ...‼ 』
急にユイラの声が変わり、頭を抱え始めた。
「!...どうしたの!ユイラ!」
今まで優しかったユイラが、歯ぎしりをして唸っていた。
(そうか...!きっとユイラは...)
『うううぅううぐぁあああ!』
(だめだ!今はそんな事を...)
梨華の考えも虚しく、
ユイラは意識を失った。