3/10
2章 意識
だが、少年は動かない。
「あ、あの...すいません...でした...」
「......」
返事がない。寝ているのか?
梨華は顔を覗き込む。
(綺麗な顔立ち...いや、何考えてんだ)
どうやら眠っている訳では無いようだ。
顔が青白く、呼吸も少し荒い。
「え...その...大丈夫ですか?」
「はぁ...はぁ...」
(そうだ。救急車に来てもらえばいいじゃん!)
と携帯を探したが、家に置いて来たのを思い出した。
「くっそ...こんな時にぃ...
しょうがないか...」
人がいないのと、少年の意識が薄い事を確認した梨華は呪文を唱えた。
「ラファエス ライル エシュプラ」
簡単な瞬間移動魔法だ。少年の手を握り、こっちでの自室を思い描いた。
カッ!
梨華と少年は光に包まれた直後、元々二人が居た場所には黒い薔薇の花弁が落ちていた。
そして梨華は何かを感じた。
これが何かの予兆だと....