(二十六)都市島・8
青空に、浮雲がぽっかりと一つ、漂っていた。
それと共に漂うのは、軽く焼き焦がした蕎麦粉薄焼の、食欲をそそる匂いだ。
海浜行き列車乗り場の周辺は、ちょっとした広場になっていた。下町の雑居建物群と人混みを抜けた先にあり、その空はどこまでも広い。
既に一般市民区域から離れていることもあって、背後の雑踏が嘘のように、乗り場の周囲は静まり返っている。近くには、小型の電気自動車が一台、止まっているきりだ。
正面には、頭上にカルデラ湖を湛え、中腹に高級住宅街を携えた小山がずっしりと腰を下ろし、右手上方、桂管路を辿った先には、ベネトナシュ空域基地の基地浮島が小さく見える。左手に伸びる線路を伝い、山を迂回して半周すれば、海浜だ。
高く、遠く、小鳥の鳴く声が聞こえる。
復元動物だろうか。
「おまたせ! あれぇ? ノリトくん、先に食べてて良かったのに」
「あ、そ、そうですか? 皆、待たなくても?」
ぼんやりと周囲の風景に染まりながら、両手で大事に持っている蕎麦粉薄焼の匂いにひたすら耐えていたノリトは、思わぬ言葉に面食らった。
イオキベ工房では、工房長のイオキベが「いただきます」を言うまでは、食事に手をつけない暗黙の了解があるのだ――何だか仔犬みたいだなぁ、おろおろする黒髪の少年を見つめながら、栗色の髪の彼女は微笑んだ。
「食べよう! 食べよう! いただきまーす!」
「はい、いただきます!」
思い切って頬張るトゥシェに続き、ノリトも蕎麦粉薄焼にかぶりついた。
香ばしい薄皮を前歯が通り抜けると、しゃきしゃきとした刻み野菜に行き当たる。
それをさらに突き抜ければ、じっくりと味付けされた照焼鶏肉が口内に躍り出る。
「美味しい!」
「おいしいねぇ~」
前方の小山と蒼穹を眺めながら、あむあむと口を動かしていた二人は、不意に声を上げると、顔を見合わせ、笑う。
少しぽってりとした彼女の桃色の唇の上に、白い泡が付いているの気づき、ノリトは慌てて目を逸らした。そんな少年の様子に、トゥシェは小首を傾げる。
彼女が食べているのは、甘さたっぷりの泡立乳脂肪と、天然の苺をふんだんに使った贅沢な甘味蕎麦粉薄焼だ。女性陣とソブリオは、昼食にしっかり小麦麺を食べているはずだが、こういう物は別腹らしい。
「お待たーっ!」
「ああ、良かった、次の便に間に合ったわね」
スズを始めとする海水浴行きの残りの小隊隊員と、海浜行きの2両編成列車が乗り場にやってきたのは、ほぼ同時だった。
「わぁ! また、大量に買いましたね~」
「大尉が欲張ったですもんねぇ? 店員、すんごい大変そうだったよ」
「どうせイオキベさん達も来るだろうからと思ったんだけど、買い過ぎちゃった……」
「蕎麦粉薄焼に蕎麦粉片面薄焼、唐揚げに芋揚げに飲料類、普通の量じゃないですよ」
両手に下げた大きな籠を示して、レーニスは苦笑した。スズ、アンテットも、ひと籠ずつ抱えている。
「あれ? ヴァリー……に、リーオ、さん?」
一気に賑やかになった乗り場に、滑り込んで来た列車。そこから降りてきた二人連れを目にして、ソブリオが呟いた。レーニスと同じく大きな籠を2つ下げ、銀髪の奥の、灰色の瞳を丸くしている。
列車から降りてきた茶色い髪の彼は、初日にノリトとイオキベを取り調べた取調官だった。その隣に立つのは、オンラードの葬儀の際、彼と隊歌を唱和していた、背の低い赤い髪の事務官の女性だ。あの時と同様、その小柄な身体を、きちんと制服に包んでいる。
あっ、と声を上げて、ヴァリーは隣の女性と顔を見合わせた。いかにも仲良く手を繋いでいるところからして、二人の関係は一目瞭然だ。赤髪の女性も、はにかんで彼を見上げている。
「えー! リーオ! そういう男が趣味だったの!」
思わず声を上げたアンテットに対して、リーオと呼ばれた赤髪の彼女は、素直にこくり、と頷いた。そばかすも可愛らしい頬が、真っ赤に染まっている。あまり多弁な方ではないらしい彼女は、それでもヴァリーの手を離さなかった。
「いやー、ご内密にお願いします、皆さん」
隣に立つ彼女の素直な様子に、満更でもなさそうなヴァリーが、頭を掻きながら言った。
「えー!? ほんとに!? いつから? いつから!?」
「なんで!? まじ!? まったく別部署じゃん! どうやって!?」
アンテットとトゥシェが、我先にと二人の元に駆け寄る。二人をたしなめながらスズも後に続くが、心なしかその顔は、うきうきしているように見えた――他人の恋愛は、甘味に続く別腹なのかも知れない。
「いやあ、ほら、僕ら、隊歌の先導をしているじゃないですか。そんでそのう、時々練習したりもするんですが、そんな関係もあってそのう、親しくなる機会があってそのう……ね?」
続きに困って、リーオを見るヴァリー。赤髪の彼女が微笑ましく頷くと、アンテットとトゥシェが黄色い声を上げた。
「いつから! いつからなの!」
「えーと、半年ぐらい前からかな……ね?」
再び、隣の彼女を見るヴァリー。リーオが頬を染めながら、改めて頷くと、再び黄色い声が上がった。
「あの、オラシオン大尉、司令官にはまだご内密にお願いします……。いずれ折を見て、ご報告しようと思ってますので」
「もちろん! 当小隊には箝口令を敷くわ。……でも、上官には早めに報告して置いた方が良いわよ? 少佐、そういうところは気にされる方だし」
「はい、理解しています。ただ、今はちょっと……少佐に言いづらくて」
「どうして?」
ヴァリーは隣の彼女と視線を交わすと、決心したように言った。
「ホームへの帰還申請を出してるんです、直接。間もなく、ベネトナシュ基地での任期も終わりますし。そのまま退役して、ホームの安定居住区域に入って……家庭を持ちたいんです、彼女と……ね?」
彼の言葉に、赤髪の彼女は、安心するかのように微笑み、頷く。アンテットとトゥシェが、一層大きく、黄色い声を上げた。
スズもまた、微笑んで了解した。
帰還申請を出すのにガイツハルスを通さないのは、嫉妬心の強い彼からの難癖を恐れてのことなのだろう。心の中で、やれやれ、と黒髪の彼女は独りごちた。
それじゃあ、と片手を上げて、ヴァリーはノリト達に背を向けた。赤髪の彼女も、ぺこりと頭を下げると、その隣に続く――ずっと、手を繋いでいる。
彼らが広場に停めてあった電気自動車に乗り込み、警笛を一つ鳴らして立ち去るまで、何となく一同は、その姿を見送った。
「あの自動車、ヴァリーが用意してたんだねぇ~」
「用意周到じゃない、見習わなくっちゃ」
「なかなかの随伴ぶりですね。さすが、少佐に顎で使われてるだけあるわ。それに比べてうちの男どもと来たら……」
「相手が淑女なら、随伴のしがいもあるんだけどね……ぎゃっ! いや、だからそれ、淑女のすることじゃないでしょ!」
アンテットの嫌味を軽口で返したレーニスの向う脛に、脛蹴りが決まった。
毎度の二人の掛け合いが始まった時、列車の進発を告げる警鐘が鳴る。慌てて一同は、列車の先頭車両に乗り込んだ。
「あれ? ソブリオさん! どうしたんですか!?」
ふと振り返ったノリトは、銀髪のソブリオが、まだ呆然と広場の向こう、電気自動車が去って行った先を見つめていることに気づいた。
「どうしたの? ソブリオ!」
スズの呼び掛けに、体をびくりとさせ、ソブリオがゆっくりと振り向く。前髪の奥、灰色の瞳、焦点が合っていない。
「あ……あー、あーっ!!」
突然、ソブリオが大声を上げた。普段には無いその声量に、少年はびくりと慄いて、目を丸くする。
「そ、そうだ、俺、忘れ物しました! そうそう、しまったなぁ、あれ、忘れる訳には行かなかったの、すっかり忘れてました! はははは!」
「ちょ、ちょっと! もう出るわよ!」
「いやぁ、大尉、すいません、同行を申し出てなんなんですが、俺、ちょっと忘れ物、取ってきます! いやぁ、うっかりうっかり! はははは!」
「ちょ、荷物! 荷物!」
「お、うん、はい、これ!」
「わ、わぁ!」
「いやぁ、まいったまいった、しまったしまった……はははは……」
持っていた荷物を強引にノリトに預けると、ソブリオは軽く後ろ手を振る。
すぐに扉が閉まり、彼を残して、ゆっくりと列車は動き始めてしまった。どうやら下町に向かうらしいソブリオの後姿を、一同は呆然と見送る。
「なんだい、ありゃ?」
「さぁ……」
動き出した列車からは、早足で広場を横切るソブリオの銀髪が、やけに鈍く、輝いて見えた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ピュラーちゃーん! ピュラーちゃーん!」
「だーはっはっは! で、出たー! 出たよ! 生粋のピュラー派!」
よたよたと転がるように日除け暖簾を避け、『太郎の立ち飲み屋』にソブリオが足を踏み入れた時、店内には既に、酒と煙草の香り、酔っぱらった声が充満していた。
ガイツハルス少佐が前髪を振り乱して愁嘆場を演じる一方、何が面白いのか、イオキベがその肩を叩きながら大笑いしている。
「おっちゃん、もぎり、一つ」
彼らの存在を無視して、ソブリオは店主に声を掛けた。支えるようにして、対面式高机に両肘を預ける。
「お仲間かい? いらっしゃい! 酒でいいかい? 聞いて驚け、純米吟醸!」
「何でもいいよ、酒類ならさ……」
「何でもいいって言い草ぁねぇだろあんた!……なんだ、髪色の割には地味なソブリオじゃねぇか。どしたのお前、泳ぎに行ったんじゃねーの?」
右隣に入ってきた新参の客に物言いをつけようとしたイオキベだったが、見慣れた顔が暗い表情をしているのを見て取って、怪訝そうに尋ねる。少し呂律が回っていない。
「どうせ俺は地味ですよ。地味で悪かったですね……」
珍しく口答えして、ソブリオは店主が差し出した木の升を一気に呷った。ごっ、ごっ、と音を立て、その咽喉が鳴る。盛大に息を吐きつつ、銀髪の彼は升を置いた。
「おっちゃん、もう一つ……これ、旨いね」
「なんだ、ソブリオじゃないか、どうしたんだ?」
「ラソンも来てたのか、なんだその格好?」
自分の右に居たのがラソンであることに気づき、ソブリオは暗い声で言った。そう言いながらも、二杯目を呷る。
「市井に紛れてのんびり羽を伸ばしてたら、イオキベさんに見つかってさ」
「ふーん……」
見慣れない服装の同僚に大した注意も払わず、ソブリオは気の無い声で返した。そのまま、三杯目を頼む。
「おいおい、お前、呑む調子が早すぎるぜ? どうしたんだよ」
気遣う様子のラソンをよそに、酔眼でじろじろとソブリオを観察していたイオキベが、口を開く。
「大方、失恋でもしたんじゃねーの? 地味に」
「ぐっ……」
図星を突かれ、ソブリオの手が止まった。
「お? 図星? だーはっはっは! マジで?」
「お前、マジかよ? どうなんです、中尉、こういうのって」
「俺に振るな。色恋に関わっている暇なぞ、無い」
今度はソブリオの肩を叩き始めるイオキベ。その一方、ラソンの右隣ではアウダースが黙々と呑んでいた。ガイツハルスから一番遠い位置にいるのは、彼なりの配慮なのだろう。
三杯目を流し込んで、ソブリオは盛大に溜息をつく。早くも、目元が紅くなってきている。
灰色の瞳を前髪で隠しながら、ぽつりと呟いた。
「女の人ってのは、怖いよ……」
「何だよ、お前、マジで」
「だってさ、するりと心に入り込んで来て、傷跡だけ残して、行っちまうんだぜ?」
ラソンが細い眼を丸くして、アウダースの顔を見た。アウダースは、処置無し、という感じで、黙って首を振る。
喰いついたのは、イオキベだった。
「おー! おー! 興味深いね! どゆこと?」
「ずっと、憧れてた子が居たんですけど、しっかり彼氏が居たんです……」
「うんうん、あるある! で、お前は何か接近試行はしたの?」
「それは、して、ないですけど……」
イオキベは金髪を揺らし、爆笑した。
「だーはっはっは! え? 何もしてないの! 何もしてないのに、『傷つけられた』とか言ってんの? 青臭ぇーっ! なぁ太郎ちゃん! こいつ凄ぇ青臭ぇんだけど! お前、そんな髪色の割に、地味で子供だなぁ!」
「どうせ俺は……」
「――黙れこの馬鹿! 貴様みたいな女たらしに、何が分かる!?」
傷口に塩をすり込むようなイオキベの言葉に抗弁の声を張り上げたのは、その左隣で酒を呷る、ガイツハルスだった。ソブリオの言葉がよっぽど琴線に振れたのか、目に涙を浮かべている。
「ソブリオ君、運命の人を希求する男の恋心、私には分かる、分かるぞ! どんなに愛情を注いでも、どんなに心を尽くしても、振り返ってもらえない苦しみ、嗚呼! つれなき女は魔竜にでも喰われてしまえ!」
「セーリオくーん、滅多なことを言うもんじゃあないよ?」
「うるさいこの馬鹿!……大体だな、私だぞ? この私が愛情を注いでるんだぞ! それなのに愛情を返さないとは、そんな事が有り得るか! 私が愛してるんだから私を愛せよ!」
(何だ、あの理屈……)
(キモい、キモいな……)
(太郎ちゃん、もう一杯くれ……)
ガイツハルスの無茶苦茶な理論に、庇われたソブリオまで引いていた。アウダースとラソンは、最初から引いている。
「だから、ピュラーちゃんなんだよ! あの娘だけだ! あの娘だけだった! 私の好意に、好意で返し、微笑んでくれたのは……嗚呼! 我が心の女神!」
「お前……ほんと、自己中心的で馬鹿で駄目な奴だなぁ」
「うるさいお前になんか言われたくないわこの馬鹿! 色魔! 女たらし!」
容赦のないイオキベの台詞に、ガイツハルスは前髪を掻きむしると、天井を仰いだ。
「そもそもだな! 私は本来、本隊勤務だったはずなんだ! ガイツハルス家の長子として、本隊の高位技術者になるはずだったんだぞ! そうやって、優先教育も受けて来たんだ!!」
少佐の思わぬ告白に、一同は目を丸くした。天井を仰ぎながら、彼は濃茶色の瞳一杯に、涙を貯めている。
「それなのに、弟達が生まれた途端、父上と母上は私を疎遠にした! あんなに、あんなに、褒めてくれていたのに! そうして入れられたのが空軍士官学校だ……。私は、航空騎兵になんぞなりたくは無かったのに! せめて、せめて近衛大隊なら良かったのに、よりにもよって討竜部隊!……だから必死になった! 必死に佐官になったんだ! 佐官になれば、司令官になれば、飛ばなくて済む! このまま出世して、私は本隊に戻るんだ!」
必死の形相で天井を睨みつけ、ガイツハルスは沈黙した。その右隣で、イオキベは一口、升を仰いだ。
「――そうか、セーリオ、お前、飛ぶのが怖いのか」
「――そうだよ! 悪いか、馬鹿! この野郎! この馬鹿! いつも気持ち良さそうに飛びやがって! 何なんだこの世界は! 上下左右に果ても無い、だと? 有り得ん! 有り得んぞ!」
喰い付くような勢いで、ガイツハルスがイオキベの顔を睨む。その拍子に、彼の両目から、涙がぼろぼろと零れ落ちた。
その視線を捉え、イオキベは破顔する。
「よっし! 呑んじゃう! 俺、呑んじゃうよ! つーか、セーリオ、まだいける?」
「うるさいこの野郎! こんなもの、まだほんの序の口だ!!」
「――太郎ちゃん! お代わり!!」
二人が一斉に差し出した木の升を、店主が快く引き受け、たっぷりと注いで返す。もう何杯目になるか分からないそれを傾けながら、空軍士官学校同期の二人は、その当時からのお互いの悪口を言い合い始めた。
――つーかお前さ、あの頃から惚れっぽいんだよ。その癖、我儘だしよ。
――貴様に我儘とか言われるのは不愉快だ! 大体お前、あの頃何人と付き合って……。
「しょうがないおっさん達だなぁ……」
「あれで三十路ってのがね、ふふふ」
「――うるせぇ、二十代は黙ってろ」
思わず揶揄する口調になったソブリオとラソンの台詞に、アウダースはぴしゃりと、言葉を叩きつけた。黒肌の中尉、その横顔が発揮する怒気に、二人は口を噤む。
「今日、今晩、此処での会話は、他言無用だ。酒の席だ。男の本音だ。それを理解するのが、騎兵の情けってもんだ。……いいな?」
「わ、分かってますよ」
「了解です」
二人は肩を竦め、目の前の純米吟醸酒に集中した。
そんな彼らを、『太郎の立ち飲み屋』の店主が、やわらかく見守っていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
あまりの暑さに窓を開けると、潮風が飛び込んできた。初めて嗅ぐ香りに、ノリトはすんすん、と鼻を鳴らす。
列車は今、山を大きく迂回して、ゆっくりとした速度で、海へ向かっている。
「しっかし、びっくりしたなぁ……」
箱型座席で、ノリトと向かい合わせに座ったレーニスが、景色を眺めながら言った。視線の先には、都市浮島の縁、その向こうは、絶床世界の青だ。
「よくあることなんですか? 隊員同士の、その、れ、恋愛って」
最後の方は口ごもりながら、少年が薄茶色の瞳の青年に尋ねる。尋ねられた青年は、穏やかな視線を返してきた。
「うーん、あんまり聞かない。それどころじゃない、ってのがまあ、通常だと思う。ただ、この所は比較的襲撃も少なくて、基地運営も安定してる。そんなとこが、背景にあるかもね。でもなぁ……」
「どうか、したんですか?」
「かなり面倒なんだよね、恋人申請ってさ」
「恋人申請!?」
そんな物があると知らなかったノリトは、目を丸くて聞き返した。レーニスが苦笑する。
「そうか、空軍士官学校では、教わらないもんね。市民管理のためにホームが規定してるんだよ、恋人申請の義務を。ほら、僕らは普段、限られた小さな居住区で暮らしてるだろ? そうすると、揉めやすいんだって、色恋沙汰で。そうならないように、正しく、皆に認められる恋愛をしましょう、そういうことらしいよ」
「はぁ……」
「恋愛が発展したら、結婚てことになるだろ? そしたらほら、その、しゅ、出産とかにも関わってくるじゃないか。結婚と出産は、ホームの安定居住区域でしか認められてないからね。そういう一環の流れさ」
「なるほど……」
「そうして生まれた子供たちは、空軍士官学校なり、職業訓練学校に入って、そのまま現場に就く、そしてそこで、機会があれば、恋愛して、ホームに帰投して、結婚して……そういう、一環の流れさ」
そこまで言うと、レーニスは考え深げに、再び窓の外に視線を向けた。
(一環の流れ……)
少年は心の中で、その言葉を繰り返す。
空軍士官学校の落ちこぼれであるノリト、航空騎兵として、正規に空を飛ぶことが許されなかった彼には、既にその流れから、自分が外れているように感じられた。
少なくとも、主流には居ない、そう思った。
(主流の外には、副流があるのかな)
(もしそうだとしたら、僕は今、どんな流れに居るんだろう――)
前の箱型座席から、女性陣の歓声が上がった。
少年の黒い瞳に、上空の青よりも蒼い、海が見えてきた。
(つづく)
むー!
きー!
みー!
剥き身!!!(うるさいし意味不明)
もうほんと、出荷を考えずに海老を剥くような想いです!(むきみ!)
されば次回まで、ごきげんよう!
フライ・ルー!(むきみ!)




