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The Vampire Castle  作者: 二上 ヨシ
The Ground
18/81

st.ⅩⅦ    The Arazorc’s Masic Mirror

             

「ああ~、ああ~。そうでございますか~」


 世話係の若いゴースト、ミントさんは、部屋の片付けをしてくれながらそう相槌を打った。彼女は少しばかりおっちょこちょいで、水差しをひっくり返したり、レオ様の体を通り抜けてしまったり(彼はそのあまり冷たさに閉口していた)、でもとてもおしゃべりで明るくてやさしい人だった。特徴的な語尾ののばし方が、何だかほっこりする。

 彼女によると、私はあの処刑のあと一週間ほど眠っていたらしい。血がたくさん出ていて、もう少しでショック死するところだったと聞いて寒気がした。あの時は覚悟みたいなものを決めていたけれど、今から考えてみると正常な思考ができていなかっただけかもしれない。今になって、恐ろしさに足が震える。


 柔らかな枕にもたれ掛りながら、手首の包帯を見つめた。未だズキズキと痛むし、指先は痺れが残っている。頭も少しクラつくことがあった。

 でも、私は生きてる。みんなに助けられて。

 恩返しをしたら、人間界へ帰る方法を探してみよう。それに関しては授業でチラッと、人間が魔界から戻る方法はないと聞いていたし、あったとしても別れがたい人たちはいる。

 でも突然連れてこられたこの世界には、生まれ育ってきた私の歴史がない。それは私を、とても空っぽな存在へと変えてしまった気がしていた。どこか非現実的な日々が、いつか変わって見えるときが来るとは到底思えなかった。誰かを愛せばまた違うのかもしれないけれど、それはまた分からない。

 

「で、ですねぇレオナルド様はそりゃあ、頭もいくて、エエ人なんですよ~。ここへ来てかれこれ五十年ほどになりますがねぇ、あの方の悪い話なんて妬み以外にはほっとんど聞かない。この国の医術師の中でもトップクラスですし、尊敬を集めてらっしゃるんです~」


 短い髪を耳にかけながら、ミントさんは天蓋つきベッドの柱を拭く。

 医術師とは医療系魔術を扱うプロフェッショナルのことらしい。合格率1%以下の超難関国家資格で、膨大な術式と数万種類の魔形字の意味や組み合わせを覚えなくてはならない。さらにその術式はガラス細工のように繊細で、発動させるのが非常に難しいSランク魔術らしい。

 一度この部屋の本棚にある基礎本を手にとって開いてみたけれど、文字で真っ黒なページに頭がくらくらとした。正直、お勉強は得意じゃない。


「ですからソフィア様も、あっちの方はご安心くださいませね~」

「あっちの方……とは?」

「ほらぁ、やっぱり“初めての時”は緊張なさるでしょ~? けど医術師のあの方ならそこはウマぁく」


 誰もそんな心配してませんッ! というかここの人たちは、ヴァンパイアに限らずそんな話題ばっかりなの!?

「ムフフフ~」と笑う彼女に、下手な愛想笑いをしていると扉がノックされた。


「あいあ~い。今開けます~」


 誰だろう。レオ様が帰ってきたのかしら。ここは一応彼の部屋だけど、私が着替えていたりしてはいけないからと、必ずノックをしてくれていた。


「えっと、どち陛下ァアッ!」


 半ば叫ぶような声に、ビクッとした。

 “陛下”……? 扉の向こうに佇む、黒い瞳と視線がぶつかってヒヤッとした。どうしてそっとしておいてくれないの? あの日のことは忘れたいのに。


 手首が、痺れとは別の震えを起こし始めていた。


「あああ、あの、陛下~。申し訳ございませんが、レオナルド様に入れるなと申し付けられておりまして~はい」

「五分でいい」

「ででで、でも……」


 ミントさんは困ったように私を振り返った。

 王と私は、いずれ何かしらの話し合いをしなければならないはず。それならもう、この際一気に終わらせてしまおうと思った。その方が早く前に進める。両手を握りしめ、無理やり震えを封じ込めた。


「中へお通ししてください」

「ソフィア様……よろしいんですか~」

「はい。五分だけなら」


 王は私を見つめたまま、部屋の中へ足を踏み入れた。ミントさんは心配そうにしながら、ここをそっと出て扉を閉めた。

 怖い、逃げ出したい。けど、皆に頼ってばかりはいられない。

 私だって頑張らなきゃ……!


「いや、そのままでいい」


 ベッドから下りようとした私に王はそう言った。めくった布団を掛けなおし、王がベッドのそばの椅子に座るのを俯き加減に見ていた。


「何の御用でしょう」

「ソフィア、これはほんの詫びの印に……」


 そっと、赤いベルベット生地のケースを差し出してきた。細長いそれの中身は、大体想像がつく。


「結構です」


 手を出さず、それだけ言った。王は自らケースを開けると、そこには息を呑むほどに美しいネックレスが収められていた。人間界のダイアモンドより美しいものが、この世にあったなんて。でも――

 

「いりません」

「これだけでは不満か?」


 それに少しムッとした。私は物が欲しいわけじゃない!


「いいえ。もしレオ様が同じものを差し出してくれたなら、私は涙を流して喜んだと思います」

 

 それに王は頬をピクリと上げた。


「つべこべ言わず受け取れ、それまでここから動かんからな!」


 な、何て勝手な……! というか仮にも謝りに来たのになぜ上から目線なの? 私はそっぽをむいて、かたくなに受け取りを拒否した。

 王は諦めたように手を下ろすと、大きくため息をつく。


「分かった、では何が欲しい? レオとのことは絶対に認めん! だが物なら宝石でも家でも君だけの国でも、何でも与えてやる」

「何でも?」

「ああ、何でも言え」


「……せん」 


 王は僅かに小首を傾げた。聞き取れなかったらしい。


「すまない、もう一度……」

「いらないと言ったんですッ! 何も!」

「……ソフィア」


 この部屋に誰もいなくて良かった。いいえ、たとえ誰かいたって、そんなことは構っていられなかったかもしれない。それほどまでに今こころは、様々な思いに支配されている。

 この人は何でも物で償えると思っているんだろうか。だとしたらヴァンパイア王国史上最も優秀な王が聞いて呆れるわ。心の傷が物で満たされるのなら、そんな簡単なことってない。ヴァンパイアには分からないのかしら。それとも彼にそんな人情の機微が解せないだけ?

 マイナスの感情が、火山のマグマように熱く煮えたぎる。


「陛下、どうして信じてくれなかったんですか……」


 聞かれたことにいくら素直に答えても、彼はそれを嘘だとはねつけた。


「ずっと違うと言っていたのに!」


 私は一度たりとも嫌疑を認めなかった。分かってもらいたくて、何度だって必死に話した。


「ずっと真実を話していたじゃありませんか!」


 きっと分かってもらえると、思っていたのに。王なら真実を見てくれるはずだって信じていたのに……彼が下した結論は――


――『ソフィア・クローズ。お前に右手首切断、及び死刑を申し渡す』


 あの冷たい目を忘れたことなんてない。あの残酷な言葉の記憶が消えることなんてない。今だって、本当は怖い。目が覚めたらまた、私はあの暗くて寒い檻の中にいるんじゃないかって、明日が処刑の日なんじゃないかって、恐ろしくて恐ろしくてたまらない。


「今更何をしに来たというんですか! あなたなんて……あなたなんて……っ」


 ダメ、押さえなきゃ! 感情をぶちまけたって何も解決しない。


「ソフィア、私を恨んでいるのなら、私を好きにしてくれて構わない。煮るなり焼くなり、君の気の済むようにしてくれ」

「そんなこと――」


 できるわけない。

 とどめきれずに零してしまった雫に、王は胸ポケットから青いハンカチを取り出した。それを、首を振って拒否する。頬を伝う涙を、自分の手で乱暴にぬぐい取った。

 王は椅子を下り、ベッド脇で膝を折る。


「分からないんだ。どうすれば君に償えるのか。その傷を癒せるのか。レ、レオとのことを認めれば……君は幸せか?」


 そんなこと私にも分からない。どうすれば傷が癒えるのかなんて、私だって知りたい。分からないの! 私自身にも。

 ダメ、どうしよう……涙が止まらない。この人の前で、おいおい泣いているところなんて見せなくはないのに。


「すまない、ソフィア。……すまない」


 あんなことされたのに、眉をひそめ目を閉じて謝罪の言葉を口にする王に、これ以上の思いをぶつけることなんてできなかった。恨んでいるわけじゃない。ただ胸が苦しい。深く傷ついた心が痛い。手首のケガなんかよりずっと。

 助けて……誰か。


「――ようが」


 ポツリと言ったそれに、王は固まっていた。私はきちんと涙をぬぐって、呼吸を整えた。


「太陽が欲しいです。くださいますか?」


 あなたにとって忌々しいその光を。心にまとわりつく氷を溶かすあの温かな日差しを。この胸の闇を明るく照らすあの金色の陽を私にくださいますか。

 

 もちろん “太陽のように赤いルビーのネックレス”、なんてオチはいらないわ。

 王はキリッとした眉を尺取虫のように寄せ、じっと床を見つめた。

 闇の住人である彼に、そんなもの与えられるはずはない。きっとこれで、まとわりつくのをやめてくれるだろう。それでいい、きっと。


「いいんです、その代わりもう私に――」

「いいだろう。君がそれを望むなら」


 ……え? “いい”だなんて、何を言ってるの? どうするつもり?


「宝石ならいりません」

「君の意図は分かっているつもりだ。今すぐにと言うわけにはいかんが、約束は絶対に(たが)わん。国王の名に懸けて」


 そんな大層なものを懸けてどうするの。

 でも熱を帯びたように潤う漆黒の瞳から、なぜか目をそらすことができなかった。どうしてそんな光を湛えて私を見るんだろう。私に対する謝罪の念以上に、何か別のものを感じて戸惑った。これが処刑しかけた人間を見る目? 一時とはいえ、あんなにも恨んでいた人間を見る眼差し?


「ソフィア……」


 王は突然、こらえきれない感情をぶつけるように私を抱きしめた。強く引き寄せ、髪に顔を埋めて切なげに息を吐く。

 これは一体――


「や、やめてください!」


 胸を精一杯強く押した。それに王は苦虫を噛み潰したような顔で、


「それほどレオが好きか」


 レオ様がどうとかなんて話じゃないじゃない! 王は身勝手すぎる!


「え、ええ! とても好きです! レオ様はお優しいですし、頭もよくて、男らしくて。陛下なんかよりずっとステキな方ですから!」


 たたみ掛けた言葉に、王はイライラと口元を震わせた。さっきレオ様とのことを認めるようなことを言ってたのに、何なのこの変わり身の早さは。

 王は掛け布団の上に乗っていたネックレスのケースを掴むと、あろうことかそれを二つにへし折って打ち捨てた。


「何をするんです! 物に罪はありません!」

「うるさい! 後宮の女でありながら、他の男に色目を使うとは何事だ!」


 い、色目!?


「まさかレオともう……」


 王は自分で勝手に言っておきながら腹が立ったのか、勢いよく立ち上がって私を見下ろした。


「どうなんだ! 答えろッ!」


 どうしてまた私が怒られてるの? 何がしたくて何が言いたいのか、さっぱり分からない。


「陛下には関係ありません!」

「関係ないわけがあるか! 君は私の妻になるんだぞ!」

「……え……」


 一瞬頭の中が真っ白になった。今、王は“妻になる”って言った? 誰が? 私が? 誰の? 王の!?

 王は自分でも少し驚いたような表情をしていたけれど、どこか満足そうにベッドの端へ腰掛けた。


「まあ、女性である君の体に傷をつけてしまったのだ。私が責任を取って罪滅ぼしさせてもらわんとな」


 そのニヤケ顔が、罪滅ぼししたい人の顔ですか? 何いいコト思いついたような表情をしているの?

 ふとおじいちゃんのことを思いだした。町で女性をナンパしている男性を指差しては、よく言っていた。“ああいう顔をしとる男は、大体目の前の女を裸にするために言葉を吐いとるだけじゃ。絶対に聞くんじゃないぞ、ソフィー”と。これはまさしくそんな顔じゃないの?


「結構です!」


 それでも王は「それに――」と言葉を繋ぐ。何を言われたって、私は――


「私の妻になればこの国の全てが手に入るのみならず、“アラゾークの魔鏡(まきょう)”が何でも願いを聞き入れてくれる」


 私の心は、絶対に揺れたりしないと思っていたのに。その一言に、激しく揺さぶられてしまった。


「何……でも」

「ああ。数万年に渡ってヴァンパイアを守護してきた鏡は、王妃の願いを魔力の及ぶ範囲、どんなことでも叶えてきた。あれなら海とて干上がらせることができる。山とて砂地にできる。星を降らせることも、川の水を銀色に変えることも可能だ」


 そんなことができるんなら、きっと人間界にだって帰れる。掌がジッと汗ばみ、緊張して心臓がバクバクと鳴いていた。見つかったんだ、家へ帰る方法が。あったんだ、帰る道が!


「その気になったか?」


 王にグイとあごを引き上げられた。瞳に勝ち誇ったような笑みを浮かべる彼が映る。

 帰る方法は見つかった。でも、それにはこの人と……。


「では誓いのキスといこうか」


 王は私の唇をスッとなぞると、ゆっくりと顔をよせてきた。これを受け入れれば帰れる。暖かな日の下へ、町のみんなの元へ、家族の思い出がつまったあの家へ。

 でも――


「イヤぁっ!」


 王の胸を思い切り突き飛ばした。完全に気を抜いていたらしい彼の体は予想外にたやすく吹き飛び、ベッドの下へズトンと落っこちる。その様子とあの処刑を申し渡されたときとのギャップが著しく、しかもあまりに見事なコケっぷりだったものだから、思わず笑いそうになって慌てて口を押さえる。


「な……にをする!」


 勢いよく立ち上がった王は、ぶつけたらしい頭をさすりながら私をにらみつけた。


「つ、罪滅ぼしと結婚が一体何の関係があるです!」

「君は何も分かっていないようだな! 私と結婚するということは、君と私の子が次の国王になるのだ! 国の母になれるんだぞ、素晴らしいではないか!」


 “君と私の子”って、そんなことまで妄想してるの? この人気持ち悪いよ、お兄ちゃん……っ! ギュッとネックレスを握った。


「何だその嫌そうな顔は! 私のものになる覚悟を決めたんだろう。だったらさっさと子を成そうではないか」


 肩を掴んでベッドへ押し倒され、馬乗りにのしかかられた。また唇を近づけられて必死に顔を背けるけれど、それをしつこく追いかけてくる。頬に何度も王の唇が当たった。帰りたいのはやまやまだけど、そのためにこの人に身も心も売るなんてこと……。


「いや……ぁっ」

「こちらを向け!」


 無理やり上を向かされ、唇が触れ合いそうになったその時――バアンと扉が開いた。


「陛下ぁあ! 五分経ちましたよ~。ちょうど! きっかりです~!」


 ミントさんが時計を手に戻ってきた。それに王は顔を上げ、「ウルサイ! 二時間延長だ! 出て行け!」と怒鳴りつけた。

 だめ、ミントさん! 私を置いて行かないで!


「出て行くのはそっちでしょ?」


 穏やかな声に、王は肩をビクつかせ、私は胸をなで下ろした。


「なにやってんだよ」


 ミントさんの背後から出てきたレオ様は、思わず背筋がゾクッとするほどに鋭い目つきをしていた。

 王は咳払いしながらゆっくりと上からどけると、「考えておいてくれ」と小さく言ってその場を後にした。それを追うようにレオ様も「まだ仕事が残ってるからゴメンね」と出て行く。

 ミントさんは気を遣ってお茶をいれに行ってくれた。

 考えておいてくれも何もない。私を処刑しかけた相手と結婚するなんて、絶対にあり得ないことなんだから。

 迷うとすればただ一つ……。その魔鏡の存在だけ。



***********


「傷口は完全に治りそうなのか」


 部屋を出たザルクは、開口一番そう言った。

 広い廊下の天井は、火を吹くドラゴンや戦う悪魔、そして魔歌を歌う精霊たちが競うように描かれていた。一定間隔で並んだ人よりも大きな絵は、歴代の王や活躍した騎士が描かれて眼をらんらんと輝かせている。


「彼女にバカなところを見せて、自分への恐怖を払拭しようってハラ? それとも――」


 上から釣り下がる豪華な電飾が、二人の姿を白い大理石の床へ映し出す。

 レオナルドは靴裏が廊下を叩く小気味のいい音を響かせながら、ゆっくりとザルクの方へ歩みよった。


「――ッ」


 腕を強く掴むレオナルドに声を詰まらせる。


「こんなもので自分を傷つけて、彼女の同情でも買う気なのか」


 それをザルクは自嘲気味に笑う。


「この腕輪のことを彼女に言うつもりは毛頭ない。自戒だ、あんな事態を招いたことへの」

「そ」


 レオナルドは掴んでいた手を離すと、ザルクの頬に思い切り拳を叩きつけた。受身も取らなかった彼の体は吹き飛び、廊下の端に置いてあった大きな壷をガシャァンと激しく音を立てて割る。


「兄上、オレが弟でよかったね。赤の他人だったら……殺してる」


 その眼は氷のように冷たく、そして青かった瞳は血のような(あか)に変わっていた。ザルクは切れた口内から横へ血を吐き出し、服についた壷の破片を払ってゆっくりと立ち上がった。


「お前ごときに私が殺せたとも思えんがな」

「さっき彼女にしたキスの分も殴ってやろうか?」

「生憎だが未遂だ」

「へぇ、オレは今朝もしたけどね」


 青筋を立てて怒りを湧き上がらせるザルクに、いつもの瞳の色に戻ったレオナルドは呆れたように息を吐いた。


「ま、これに懲りたらさ――今度からはオレの言うことを聞け」


 前髪をサラリとゆらし、カツカツと廊下を歩き出すレオナルドの背を見つめる。


「生意気なことを」


 だがザルクは内心驚いていた。これに懲りたら……“二度と彼女には近づくな”――そう言われるだろうと思っていたのに。

 レオナルドに殴られたのは初めてだった。彼も普段、人間の女の生死ぐらいで感情を乱すこともない。それほどソフィアに入れ込んでいるのだろうことは容易に想像できる。それでもあの男はこの事件を盾に、自分を突き放そうとはしなかった。後宮から出せとすら言わない。彼女へ抱くこの同じ思いに、気づいているはずなのに。


「本当に、生意気な弟だ……」


 彼女のことを一番に考え、彼女の望むことをしてやろうと誓う彼の思いを、ザルクはひしひしと感じていた。それほどまでに彼女への思いが深いことも。

 しかしそれが分かっていても、それでも彼女から手を引く気は起こらなかった。それは自分も、それだけ彼女を愛してしまっているからだろう。身勝手なのは分かっていた。あんな目に遭わせておいて。


「同じ女を、同じように想っているのに……私の方は随分と格好が悪い」


 ザルクは大きくため息をつくと、痛む頬をさすりながらレオナルドとは反対の方向へと歩き出した。


あとがき

 二人とも仕事さぼって彼女の部屋に行ってました。

 (#^∀^)゛o゛「陛下マジ戻ってきたらぶっ殺す Byシュレイザー」

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