第六話 何かが……!
「云ったであろう、我が魔王となると。その我を高々これだけの魔獣とガーゴイルだけでどうにか出来るはずがなかろう。片腹痛いわ」
辺りに横たわる魔獣の屍に、ガーゴイル達は暫し呆然と立ち尽くした。が、徐々にその顔は怒りに歪んで行く。
奇声を上げ、一匹が飛び出したのを切っ掛けに、ガーゴイル達は背の羽を少し広げ、半ば飛ぶようにルシフェルに向かって飛び出した。
ルシフェルと同じように鋭く尖った五指の爪を閃かせ、前から左右から後ろからと、あらゆる方向から襲い掛かる。
一瞬にして迫り、爪を振るう速さはかなりのものだったが、ルシフェルに触れる事はなかった。
大柄なルシフェルの方がガーゴイル達の動きを上廻り、その爪が掠りもしない。
逆にルシフェルの爪によって、一匹、また一匹と斃れて行く。
倒れていた二匹も加わるが、状況が変わる事はなく、六つの屍が横たわるのにそう時間は掛からなかった。
残っている二匹も、最早足が前に出ず、口を開けて立ち尽くす。
「最初の威勢はどうした? どんな手を使っても我を城に連れて行くのではなかったのか? さあ、どうする?」
ルシフェルが一歩、二歩と歩み出ると、ガーゴイル達はそれに合わせて少しずつ後退る。
「逃しはせぬぞ」
更にルシフェルが前に出たのに臆したか、ガーゴイル達は慌てて羽を広げるなり、飛び上がった。
「ぬう、飛んだか……」
ルシフェルは羽を広げるのを躊躇したが、軽く頷き、羽を広げて飛び立った。
先に飛び立ったガーゴイル達は森を抜けようとしていたが、飛ぶ速さもまたルシフェルが凌駕し、瞬く間に迫り、一匹のガーゴイルの足をルシフェルが摑む。
次の瞬間、また突然ルシフェルの羽は動かなくなり、ガーゴイルの足を摑んだままルシフェルは宙吊りになってしまった。
「お、重い……は、放せ!」
足を摑まれているガーゴイルは必死に羽を羽ばたかせるが、その重さに堪え切れず、徐々に降下して行く。
もう一匹のガーゴイルは宙に静止し、仲間を一瞥したが、助けることなく飛び立ってしまった。
足を摑まれているガーゴイルは必死に後を追おうとするものの、裏腹に降下を続けてやがて力尽き、羽の羽ばたきが止まってしまった。
ガーゴイル共々足を摑んでいるルシフェルも頭から落ちて行く。
その最中、ルシフェルはガーゴイルの足を辿って背に廻り、ガーゴイルの体を地面に向け、自らはその背に乗る形をとった。
目の前に迫る地面にガーゴイルが奇声を上げるが、それは地面に激突した轟音によって搔き消された。
それほどの高さではなく、地面もぬかるんでいたが、ルシフェルの大柄な体重が掛かり、ガーゴイルは圧死した。
ガーゴイルの背から降りたルシフェルは、直ぐに顔を上空に向けた。
飛び去ったガーゴイルの姿が小さく見える。
「一匹逃したか…………むう?」
黒い点にしか見えないガーゴイルに、あらぬ方向からガーゴイルよりも大きな黒い点が物凄い速さで飛んで来てガーゴイルに迫り、ガーゴイルの小さな点を飲み込んだ。
暫しその場で静止していたが、大きな点から小さな点が下に飛び出し、そのまま森の中に消えて行った。




