第五話 格の違い
ルシフェルの宣言に、今度はガーゴイル達が互いの顔を見合わせ、嘲笑する。
「貴様が魔王にだと? 下僕どころか仲間も居ない悪魔になりたての貴様に何が出来る?」
「貴様こそ笑わせる事を言うな」
「全く本当に良く喋る連中だ。そんな連中を下僕に持つ奴など高が知れておるわ。何と云おうと魔王となるのは我だ。誰に従うつもりもない。もし会いたいと云うならそのサタナエルと云う者をここに連れて来い。ならば、そいつを下僕にしてやっても良いぞ」
ガーゴイル達の顔から一瞬にして笑みは消え去った。
「貴様、図に乗るな!」
「そもそも貴様が下僕になる有無などどうでも良いのだ。ただ城に連れて来いとだけ仰せつかっているだけだからな」
「行くつもりはないと云えばどうするつもりだ?」
「来るか来ないはどうでもいいのさ。来たくないならこうするまでだ」
一匹のガーゴイルが隣でルシフェルを睨んで唸っている魔獣の尻を叩く。
他の魔獣の隣に立つガーゴイル達も続いて魔獣の尻を叩いた。
魔獣達は涎を垂らしながら勢い良く駆け出し、四方八方からルシフェルに飛び掛かる。
ルシフェルの腕に、足に、体に喰らいつき、鋭く尖った牙が肉体に食い込むと共に、傷口からどす黒い血が迸る。
「生きてさえいれば、どう連れて行こうがいいのだからな」
大概の悪魔なら五匹、いや、三匹ほどの魔獣に噛まれれば、その苦痛にもんどりうって倒れ、出血によってやがて気を失う。
それをルシフェルは、痛がって倒れるどころか平然と立っている。
それどころか右手の五指の尖った爪を突き立て、左腕に咬みついている魔獣の体を貫き、透かさず今度は左手の五指の爪で右腕に噛み付く魔獣の体を貫いた。
体に風穴を開けられた二匹の目が赤から黒く変色し、ルシフェルの体から力なく離れ落ちた。
ガーゴイル達が唖然とする中、ルシフェルは両足に噛み付いている魔獣の首を摑み、ゆっくりと締め付けて行く。
魔獣達は耐え切れずに足から口を放し、情けない鳴き声を上げるが、それも暫し、悲鳴に変わって口からどす黒い血を吐き出し、先に斃れた魔獣達のように目が黒く変わり、動かなくなった。
ルシフェルは動かなくなった魔獣を前方に立つ二匹のガーゴイルに投げつけた。
勢い良く投げられた魔獣達は、ガーゴイル達に動く間を与えずにそれぞれにぶつかり、共に倒れた。
「図に乗っておるのは貴様達の方だ」
ルシフェルは最後に残った魔獣の首を摑み、締め付けて行く。
食い下がるように咬みついていた魔獣も、ルシフェルが締める力を強めると堪らず口を開いた。
ルシフェルは見せつけるように魔獣を掲げ、空いた手の爪で魔獣の体を貫き、地面に叩き付けるように投げ捨てた。




