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エレガントな紳士、荒廃世界を改革する〜有能すぎて天界を追放されたので、地獄化した地球を住みやすくした件〜  作者: 古月
天界編

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第0話 荒廃世界へようこそ!

 人類滅亡後、500年――


 荒廃した横浜で、奇妙な光景が繰り広げられていた。



「ヒャッハー! 今日は遊びの日だぜえええ!」



 そう叫んでいるのは、世紀末に出てきそうなモヒカンの鬼たち。


 そんな彼らを遠巻きに見ながら、街の人々は囁きあう。



「おいおい、今度は何なんだ?」

「今日こそ略奪しにきたに違いねえ」



 その時、眼帯をつけたモヒカンが何かを取り出した。


 それは――動物の骨で作られた、白いボールだ。



「ひいっ!」



 街の人々が悲鳴を上げる。


「あ、あれ人間の骨じゃないよな……?」

「食い殺された奴の骨を見せつけてるんだ……!」

「やっぱり蛮族は野蛮だ……!」


 ところが。


 眼帯のモヒカンは、骨のボールをぽんぽんと宙に放り上げ始めた。


 ひとつ、ふたつ、みっつ。


 器用に3つのボールを回しながら、得意げな笑みを浮かべている。



「……何をしてるんだ?」


「お手玉、っていうんだぜ」



 ぽかんと、街の人々は呆気にとられる。


 厳つい顔のモヒカンが、まるで子供のように無邪気にお手玉をしている。しかも意外と上手い。


「へっへっへ、どうだ! ルシエル様が教えてくれたんだぜ」


「……ルシエル様?」

「誰だそれ」


 街の人々は首を傾げる。



 すると別のモヒカンが懐から別のものを取り出した。


 今度は木でできた、ハンマーのような形をした道具。先端には穴の開いた球がぶら下がっている。



「うわっ、なんだあの凶器!」

「ハンマーで殴り殺す気か!?」

「逃げろ!」



 だが、モヒカンは振りかぶるどころか、その道具を優雅に振り始めた。


 カッ、と小気味よい音を立てて、球が棒の先端に乗る。


「おおっ」


 さらにモヒカンは球を宙に跳ね上げ、くるりと回転させてから再びキャッチ。


「すごい……」

「なんだあれ、面白そう」


 思わず街の人々が見入っていると、モヒカンは得意げに胸を張った。


「けん玉っていうんだ。これもルシエル様が教えてくれた」


「だから誰なんだよ、ルシエル様って」


 街の人々がツッコむ。



 するとさらに別のモヒカンが、懐から何かを取り出す。


 今度は紐のついた円盤のような物体。


「……次は何だ?」

「もう怖くないぞ。何が出てくるんだ?」


 もはや街の人々は、恐怖よりも好奇心が勝っていた。


 モヒカンは円盤を指にかけると、勢いよく下へ放り投げた。


 円盤は紐の先でくるくると回転し――そのまま地面すれすれを滑るように転がっていく。


「おおおっ!」


 まるで生き物のように動く円盤に、街の人々から歓声が上がる。


「ヨーヨーだ。この技は『おさんぽ』っていうんだぜ」


 モヒカンは紐を軽く引くと、円盤は再び手元に戻ってくる。


 拍手が起きた。


「すげえ!」

「俺もやってみたい!」

「それもルシエル様が教えたのか?」


「おう! ルシエル様は何でも知ってるんだ。俺たち『バーバリさん』の希望だぜ」



 その時だった。



「ルシエル様だ!」

「ルシエル様がいらっしゃったぞ!」



 突然、広場にいたモヒカンたちが一斉に声を上げる。


 街の人々が振り返ると、そこには一人の男が立っていた。


 顔の上半分は白いアイマスクで(おお)われている。地味な紺色の着物を身にまとっているのに、その姿からは驚くほどの気品が漂っている。


 まるで仮面舞踏会から抜け出してきたような――エレガントな紳士がそこにいた。



「「「ルシエル様!!」」」



 そう言いながら、モヒカンたちが一斉に跪いた。


 素行の悪さで追放されたはずの連中が、まるで忠実な騎士のように頭を垂れている。


 街の人々は呆気にとられて、その光景を見つめていた。



「やあ、皆さん。お元気そうで何よりです」



 ルシエルと呼ばれた男は、ゆったりとした足取りで歩み寄ってくる。


 そしておもむろに白いアイマスクを外した。


 その瞬間、街の人々は息を呑む。


 端正な顔立ち。すらりと通った鼻筋。長いまつ毛に縁取られた、澄んだ瞳。



「初めまして。ルシエルと申します」



 そう言って彼は完ぺきな一礼をしてみせた。


「こちらの『バーバリさん』たちは、私の大切な仲間です。見た目は怖そうですが、中身は気の良い方々ばかり。どうか仲良くしてやってください」


 それだけ言うと、ルシエルは再びアイマスクをつけ直す。


「さて、私はじゃがいもを育てに行かねばなりません。皆さま、『バーバリさん』と遊んであげてくださいね」


 そう言い残して、ルシエルは優雅に立ち去っていく。


 「いってらっしゃいませ、ルシエル様!」と、モヒカンたちは声を揃えて見送っている。



 一方、街の人々はしばらく言葉を失っていた。



「……なんだったんだ、今の」

「あんなエレガントな人、見たことない」

「なんであんな紳士が、蛮族どもに慕われてるんだ?」



 その時、背後から低い声が響いた。



「聞きたいか?」



 街の人々が振り返ると、そこには巨大な影があった。


 仮面をつけた大男。頭には金色の輪っかと翼が生えている。怪物のように見えるが、れっきとした天使だ。


「ひっ……!」


 街の人々が怯えて後ずさる。


 だが、巨漢の天使は静かに言った。



「面白い話だぞ」



 その言葉に、街の人々は顔を見合わせる。


 怖い。でも、気になる。



 やがて好奇心が、恐怖を上回った。


「……聞かせてくれ」


 誰かがそう言うと、大男は満足そうに頷いた。



「あいつはな、天界から堕ちてきたんだ。俺たちと一緒に」



 そして彼は語り始めた。


 なぜあのエレガントな紳士が、荒廃した世界で、モヒカンの鬼たちに慕われているのか。


 その答えを知るには、少しばかり時を(さかのぼ)る必要がある。



 すべては、天界での出来事から始まった――

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