他流試合
吉田道場(京都)と試衛館(江戸八王子)による他流試合が始まった。5人ずつ一対一で防具を身につけ竹刀を持って行われた。吉田道場の副将に山口一。試衛館の副将は沖田総司であった。
「沖田さん?お手柔らかにお願いしますよ?」
「それはこちらの台詞ですよ山口さん。」
まず山南敬助が出て来て、吉田道場の門下生を圧倒。続く永倉新八と土方歳三も勝利。これで試衛館側の勝利が確定した。そして迎えた副将戦。勝敗は決していたが、山口一の希望で沖田総司との一戦が行われる事になった。
(凄い殺気だ。これは全力を出さないと殺られる。)
「とりゃー!」
(これが天然理心流免許皆伝の強さか…。さばききれるか?)
「とりゃー!」
(突きのスピードが尋常じゃない。これが真剣なら確実に殺られている。)
「山口さんも凄いな。総司の三段突きをしっかりさばいている。」
「山口一刀流だったか?ローカル剣術だと侮っていたが、中々やるな。」
「胴!そこまで!」
「総司が1本取られた!?」
「いやぁ~流石ですね。山口さん。今日は僕の負けです。」
3-1でこの他流試合を制したのは試衛館(江戸八王子)だった。試衛館の面々が帰り支度をしていると、近藤が吉田道場主に呼ばれ何か話をしているようであった。
「よろしいのでしょうか?」
「あの山口と言う男の実力を見ただろう?彼の腕は吉田道場では伸び悩むだろう。貴方がたの様な方々と一緒にいた方が、彼の為だ。」
「と言う訳で山口君。試衛館の皆様と江戸に戻りなさい。父右助殿には私の方から話しておく。それが君の為だ。あぁ、それから預かっていた鬼神丸国重も返しておくよ。」
「ですが、私は重罪人です。試衛館の方々に迷惑をかけないでしょうか?」
「その事なら彼らは知っていたよ?」
「え?そうなんですか?」
「ほら、待ってくれているよ?急いで行ってあげなさい。」
「はい。お世話になりました。」
「おせぇぞ山口!」
「すみません。」
「何、誘ったのは私達の方だ。」
「ご迷惑をかける事があるかも知れませんが、よろしくお願いします。」
「つーか山口さん大きいね?」
「180cmありますから。」
と、身の上話をしながら5日間をかけて多摩八王子に戻った。試衛館にいれば、強い食客達が守ってくれると吉田道場主は思ったのだろう。それに江戸市中から多摩八王子はかなり距離がある。そう言う理由もあって、試衛館
に住み込む事になった。
「山口さんの愛刀見せて?」
「どうしたんですか?急に?別に良いですけど。」
「へぇ~、こいつは業物だ。鬼神丸国重か。」
「はい。京都の名工が作ったとされていますが、無銘ですよ?」
「その刀で人を斬った事はありますか?」
「ありますよ。」
「へぇ。そっか。深くは聞かないけど。」
「いえ、本当の事ですので。」




