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藤田五郎警部の幕末回顧録〜誠に生きた男達〜  作者: 佐久間五十六


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9/11

他流試合

吉田道場(京都)と試衛館(江戸八王子)による他流試合が始まった。5人ずつ一対一で防具を身につけ竹刀を持って行われた。吉田道場の副将に山口一。試衛館の副将は沖田総司であった。


「沖田さん?お手柔らかにお願いしますよ?」

「それはこちらの台詞ですよ山口さん。」


まず山南敬助が出て来て、吉田道場の門下生を圧倒。続く永倉新八と土方歳三も勝利。これで試衛館側の勝利が確定した。そして迎えた副将戦。勝敗は決していたが、山口一の希望で沖田総司との一戦が行われる事になった。


(凄い殺気だ。これは全力を出さないと殺られる。)

「とりゃー!」

(これが天然理心流免許皆伝の強さか…。さばききれるか?)

「とりゃー!」

(突きのスピードが尋常じゃない。これが真剣なら確実に殺られている。)

「山口さんも凄いな。総司の三段突きをしっかりさばいている。」

「山口一刀流だったか?ローカル剣術だと侮っていたが、中々やるな。」

「胴!そこまで!」

「総司が1本取られた!?」

「いやぁ~流石ですね。山口さん。今日は僕の負けです。」


3-1でこの他流試合を制したのは試衛館(江戸八王子)だった。試衛館の面々が帰り支度をしていると、近藤が吉田道場主に呼ばれ何か話をしているようであった。


「よろしいのでしょうか?」

「あの山口と言う男の実力を見ただろう?彼の腕は吉田道場では伸び悩むだろう。貴方がたの様な方々と一緒にいた方が、彼の為だ。」

「と言う訳で山口君。試衛館の皆様と江戸に戻りなさい。父右助殿には私の方から話しておく。それが君の為だ。あぁ、それから預かっていた鬼神丸国重も返しておくよ。」

「ですが、私は重罪人です。試衛館の方々に迷惑をかけないでしょうか?」

「その事なら彼らは知っていたよ?」

「え?そうなんですか?」

「ほら、待ってくれているよ?急いで行ってあげなさい。」

「はい。お世話になりました。」

「おせぇぞ山口!」

「すみません。」

「何、誘ったのは私達の方だ。」

「ご迷惑をかける事があるかも知れませんが、よろしくお願いします。」

「つーか山口さん大きいね?」

「180cmありますから。」


と、身の上話をしながら5日間をかけて多摩八王子に戻った。試衛館にいれば、強い食客達が守ってくれると吉田道場主は思ったのだろう。それに江戸市中から多摩八王子はかなり距離がある。そう言う理由もあって、試衛館

に住み込む事になった。


「山口さんの愛刀見せて?」

「どうしたんですか?急に?別に良いですけど。」

「へぇ~、こいつは業物だ。鬼神丸国重か。」

「はい。京都の名工が作ったとされていますが、無銘ですよ?」

「その刀で人を斬った事はありますか?」

「ありますよ。」

「へぇ。そっか。深くは聞かないけど。」

「いえ、本当の事ですので。」

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