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藤田五郎警部の幕末回顧録〜誠に生きた男達〜  作者: 佐久間五十六


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19歳青年期

それから1年後の頃であった。江戸市中をぶらついていた時の事である。江戸小石川関口で旗本と口論になり、こともあろうか斬りつけてしまう。その時の状況を詳しく聞くと、酒を飲み泥酔して道に寝ていた旗本を一が一刀両断したと言うのだ。流石の一もみねうちで勘弁してやったが、一介の浪人が旗本に刀を向けたと言う事に変わりはなく、重罪に問われる可能性が高かった。


「一!」

「父上!?」

「京都まで走れるか?」

「何だよ突然?」

「京都に吉田道場と言う道場がある。そこの道場主にコレを見せろ。」

「これは父上の文ですか?」

「いいから急いで行け!」


一の父右助は、一を京都に逃がした。

「それにしても父上は何故あんなに早く来れたんだ?しかも逃げる算段まで。」

「しかし、困った事をしてくれたぜ。」

「右助様の坊ちゃまも大きくなられましたな。旗本にみねうちとは、これは痛快ですな。」

「少し打撲痕はありますが、ほぼ無傷ですね。」

「江戸市中をくまなく探せ!名前は分からんが、身長180cmの大男。腰には業物鬼神丸国重!」

「酔って寝てたわりにはよくそれだけ覚えていたな。それより江戸市中は危険だな。急に京都に向かえとは…。」

チャリン。

「ん?」

「旅費だ。使え。父より。」

「1両!?前言撤回。父上は段取りが良い。」

「父上!一の事は聞きました。旗本を斬りつけるなど大罪。市中は大騒ぎですぞ?」

「まぁそのうちほとぼりも冷めるだろう。まっ昼間から大酒を食らって道端に寝っ転がっていたなど、口が裂けても言えないだろうしな。」

「一の奴京都まで無事に辿り着けるだろうか?」

「大丈夫だヒロアキ。一には旅費も持たせたし、吉田道場の道場主は私の古くからの友人なんだ。一ももう19歳の青年。道くらい迷わず行けるだろう。」

「一にはな、もっと広い世界で活躍して貰いたいんだ。いや、活躍する。そんな気がしてならんのだ。」


父右助の手助けもあり、一は一旦京都の吉田道場で当分の間預かりの身となった。流石に、旗本にみねうちしたくらいでは指名手配にすらならず、一は山口一刀流の強さ…いや己の強さを見極めるには丁度良いと思いながら、京都の吉田道場に潜伏させてもらう事に相成った。まぁ、幕府に捕まるよりはマシだろう。


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