進むべき道
それから3ヶ月、試衛館で世話になった斎藤一は、一旦京都の吉田道場に戻って近藤達とは別行動を執る事になる。以前とはみちがえる程強くなった一に吉田道場で乱取りで勝る者はいなかった。
「いやはや別人の強さだね?最も右助殿が家の道場に連れてきた時から、一君は強かったがね。」
「本当は近藤達と一緒にいたかったのでは?」
「いずれ浪士組を江戸で組むと近藤さんは言っていた。私も機会を見つけてそこに参加しようと思っています。それまではこちらで世話になりたい。」
「こちらとしては構わないがね。」
「誠にかたじけない。」
「お主の剣の実力は吉田道場随一だ。若い君がいてくれるだけで、こちらとしては勉強になるからね。」
「江戸八王子では、天然理心流と無外流を学んできました。山口一刀流とは全く異なりましたがね。」
「どちらも京都では聞き慣れない流派だね?」
「京都ではマイナーな流派ですから。」
と、淡々と話しをする様は斎藤一の成長ぶりを感じさせた。
「山口…いや今は斎藤さんでしたね。」
「何か用か?」
「手合わせをお願いしたいのですが?」
「構わないが怪我するぞ?防具をつけろ。」
「斎藤さんも着けてください。」
「お主と私の実力差を測れぬ程お主は愚かなのか?」
「まぁ、好きにしてください。怪我をしても本当に知りませんからね?」
と、ふと吉田のこせがれが江戸八王子試衛館
の沖田総司に見えた。自分と大して年齢が違わない沖田総司に、何度けちょんけちょんにされたか?特に厄介だったのはあの神がかった速さの三段突きは、実戦で使用すれば死人が何人でるやら。木刀や竹刀だったから良いものの、アイツは天才だった。沖田総司の前では斎藤一もどうと言う事は無い。道場主の近藤はパワータイプで土方は喧嘩殺法。山南、原田、永倉、藤堂と実力者揃いではあったが、やはり沖田総司のレベルは別格であった。
結局斎藤一は江戸で結成された浪士組には不参加で、京都で徴兵にて正式に新選組(壬生浪士組)に加入することになる。それが自分の人生を決定づける事になろうとは、20歳の斎藤一には進むべき道に思えた。
「吉田先生お世話になりました。」
「斎藤君、体に気をつけて頑張りなさい。」
「はい。ありがとうございました。」
と、清々しく吉田道場を後にした。




