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魚を育てる方法:2-4

 これだけあれば足りるだろう。

 あとはわたしの魔力しだいだ。

 目を閉じ、精神を集中させる。


 身体の中にめぐる魔力を把握し、自在に操る。

 魔力を両手に集め、ひとつのかたまりにする。

 錬金術を発動できる規模の魔力になると、それを解き放った。


 蒼い閃光。

 視界が一瞬にして蒼に染まる。

 そして光が終わるのも一瞬だった。


「おおっ!」


 周囲で見物していた町の人たちがざわつきだす。

 驚くのも無理はない。


「成功、したのかしら……?」

「僕にはわかる。ミーシェの錬金術は成功した」


 魔法円の中心にあった金貨の袋はなくなり、代わりに無数の石ころの山があった。

 石ころは大小さまざまで、いずれも白い。

 そしていくつもの小さな穴が空いている。


 わたしはそこからひとつ、手ごろな石を手にする。

 そして池に放り込んだ。

 ぽちゃん。


「これは……!」

「泡が出てきたわ!」


 しばらくすると、石から小さな泡がいくつもぶくぶくと水面に浮いてきた。

 これで成功を確信した。


「ミーシェちゃん。これはなんなの?」

「これは『空気石』です。中に酸素を含んでいる特殊な石なんです」


 この白い石ころは空気石。

 水に入れると酸素を吐き出すのだ。

 産出される数が少なくて、大量に買うには大金が必要だけど、わたしの錬金術ならそれよりずっとましな対価で済む。


「空気石を池に入れておければ、酸素不足の問題は解消されるはずです」

「すごいわ!」

「さすがはミーシェだ」


 マリーゴールドさんとキール王子がそうほめる。

 まわりで見ていた人たちも「さすが聖女さまだ」「聖女さまがまた問題を解決してくださった」と賑わっている。


 そういうわけで、魚を人工的に育てる計画を実行に移せるようになったのだった。

 人工池に空気石を入れて、それから魚を入れる。

 それから数日、魚のようすを観察した。


「マリーゴールド。魚のようすはどうだ」

「元気に泳いでいるわ。あとは子供を産ませて育てればいいだけよ。これもミーシェちゃんのおかげね」


 マリーゴールドさんがウィンクする。


「それにしても、キール王子もいい子を見つけてきたわね。大事にしないといけないわよ」

「言われるまでもない。ミーシェは僕が守る」


 キール王子はそういうキザなセリフを平然と言う人なのだ。

 うれしいけれど、やっぱり恥ずかしい。


「ところでキール王子。王子とマリーゴールドさんは以前から顔見知りだったんですか?」

「ああ。マリーゴールドは僕が幼いころの家庭教師だったんだ」


 なるほど。

 だから親しい雰囲気だったんだ。


「マリーゴールドは王都の大学を卒業した優秀な女性だ。知恵が必要なときはいつでも借りるといい」

「ちょっと、やめてちょうだい王子」


 マリーゴールドさんが苦笑する。


「どう考えてもミーシェちゃんのほうが頭がいいじゃない。錬金術だけじゃなくて、科学の知識も豊富だし。私は町長に就任して以降、さっぱり勉強していないから、知識もとっくに時代遅れのものよ」

「ふむ」

「実際、ミーシェちゃんはこれまで二つもこの町の問題を解決してきたんだから。逆に私が彼女の知恵を借りたいくらいだわ」

「いえ、そんなことはありません。マリーゴールドさんのお力もいずれ借りると思います。そのときはよろしくお願いいたします」


 ぺこり。

 頭を下げた。


「あ、これきれいですね」


 顔を上げたとき、あるものが視界に入った。


「でしょう? 貴重なものなのよ」


 黄金の杯。

 きらきらとしてきれいだ。


「いくらお金を貯めこんでも、国が滅びたら貨幣なんて鉄くずと紙くずと化すから、世界で共通して価値のある純金でできた物を町の予算で買ったのよ」

「王子を目の前にして国が滅びるなどよく口にできたものだ」

「あら、失礼」


 マリーゴールドさん、ほんとにおちゃめな人だ。

 キール王子すら彼女を持て余している感じ。


 それにしてもマリーゴールドさん、歳はいくつなんだろう。

 見た目は20代から30代の間くらいだけど、いずれにしても相当若いのに町長をやっている。

 町長ってもっとおじいちゃんがなるものだと思っていた。


「でも、そんな高価なものを無造作に飾っていて平気なんですか?」


 こういうのって金庫で厳重に保管するものでは……。

 持っていこうと思えばかんたんに持っていけてしまう。


「だいじょうぶ。グリーンヴェイルの人たちはみんな善人だからっ」

「……」


 ドヤッとした顔をする町長さん。

 キール王子は呆れた面持ちでため息をついていた。


「っていうのは冗談で。ほら、ちょっと持ってみて」

「え、さわっていいんですか?」

「どうぞどうぞ。隙あらば盗んでいいわよ」

「では、失礼します」


 黄金の杯の細い部分を握る。

 そして持ち上げる――ことができなかった。


 これ、すごく重い!

 片手だと少しも持ち上がらない。

 両手で力を入れればなんとか持てそうだけど、うっかり落としてしまいそうだ。


 思い出した。

 金ってすごい重いんだった。

 これでは盗んで逃げるのは難しい。


「そういうわけで、この黄金の杯はぜったいに盗めないの。盗めるものなら盗んでみなさい、って感じね」

「うーん、でもやっぱり不用心じゃ……」

「マリーゴールド」

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