雪の降る季節に:8-4
「いつもどおり作ればいいんですか?」
「はい。いつもどおりで」
「聖女さま。それだとまた失敗しちゃうのでは?」
「今度こそだいじょうぶだと思う」
パンの生地をこね、かたちを整えて焼く。
しばらくして焼きあがると、ミミさんが驚きの声を上げた。
「ふっくらしてる!」
かまどから出されたパンは、見事にふっくらと焼きあがっていた。
大成功だ。
食べてみると、ほんのりした甘さにふんわりとしたしょっかんが心地よい、おいしいパンだった。
「見事なパンだ。これなら人気なのもうなずける」
「いつものミミさんのパンです!」
「ありがとうございます、聖女さま!」
ほっとしたようすのミミさんは安堵のあまり涙を流していた。
「でも、ふしぎですねー。どうしてミミさんはふっくらしたパンを焼けたのでしょう。失敗したときとおなじレシピだったのに」
「それが違うんだよ、ソフィー。一つだけ違うところがあったの」
材料も作り方も調理器具も同じだった。
違ったのは――室温。
「室温? 部屋のあったかさが関係あるのですか?」
「ソフィーは知ってる? パンがふくらむ原理」
「え、えーっと……」
視線を上に向けて考え込むソフィー。
「イースト菌ですよね」
ミミさんが代わりに答えた。
パンの生地にはイースト菌というものが含まれて、それが活動して生地を発酵させることで生地をふくらませるのである。
「き、菌!? ばい菌がパンに入ってるんですか!?」
「悪い菌じゃないよ。パンをふくらませるのに大事な菌なの」
「そうなのですか……。手帳にメモしないと……」
そしてイースト菌は適切な温度でないと活動しない。
厨房が寒かったからイースト菌が活動せず、パンがふくらまなかったのだ。
「あーっ」
ミミさんが両手を合わせる。
「そういえば最近、燃料代を節約しようとして部屋をあっためてなかったの!」
「それが原因だったわけか」
「部屋が寒かったからパンがふくらまなかったんですね……」
「単純な理由だったな」
「記事! これは新聞記事にしないと!」
ソフィーがカメラでわたしをひたすら撮影していた。
「聖女さま大活躍! 人気のパン屋を救う! ――って見出しで新聞に載せますね」
ミミさんは心底安心した顔をしていた。
「パンの神さまに見放されたかと不安でした。そうじゃなかったんですね」
「これからまたおいしいパンを焼いてくださいね。わたしもこれからはミミさんのパンも買わせてもらいます」
こうしてミミさんのパン屋は営業を再開した。
……と、思いきや。
「助けてくださーい! 聖女さまーっ!」
ソフィーがまたわたしたちのもとへ助けを求めにきたのだった。
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