表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

47/50

雪の降る季節に:8-3

「こんなパン、とてもじゃないけどお客さんに出せないわ。これじゃ廃業よ」


 涙ぐむミミさん。


 どうにしかして助けてあげたい。

 でも、原因がわからないと解決しようがない。

 念のために厨房も見せてもらったけれど、特に変わったところはなかった。


 実際にパンを焼いてもらう。

 焼きあがったパンはやはり、つぶれた失敗さくだった。


 いつもどおりのレシピなのに、どうして失敗してしまうのだろう……。

 ソフィーがわたしの手を握ってくる。


「聖女さま、このソフィーからもお願いします。ミミさんのふっくら焼きあがったパンをまた食べたいんですっ」


 ふっくら焼きあがった、か……。

 レシピどおりに作って失敗しているのなら、どこかに必ず普段と違った部分があるはず。



 ひとまずわたしたちは自宅に帰ってきた。

 パンがふっくらしない原因……。

 見当もつかない。


 パンの材料が劣化したのかと思ったけど、それも違った。

 調理器具もちゃんとしたものだった。

 うーん……。


「ミーシェ、これを見てくれ」


 悩んでいるとき、キール王子が植木鉢を持ってきた。


「植えた種が芽を出した」


 鉢植えに盛られた土から、小さな新芽が頭を出していた。

 キール王子はうれしが笑みを浮かべている。


「こんな寒い冬でも芽を出すのだな」

「驚きですね。てっきり冬を越して暖かくなってから芽を出すと思ってました」

「暖炉のある部屋に置いておいたからかもしれない。どんな色の花を咲かせるのか、今から楽しみだ」


 キール王子は萌芽を心からよろこんでいる。

 王子、こんな笑いかたもできるんだな。

 普段のクールな笑みとは違う、子供っぽいむじゃきな笑いかたにわたしはときめいた。


 ……暖かい部屋だから芽を出した……。

 気になって外に出る、

 庭に置いておいた鉢植えの雪を払う。


 外に置いてあった鉢植えからは芽は出ていない。

 やはりあの鉢植えに植えた種は暖かい場所だったから芽を出したのだ。


「キール王子。ミミさんのパン屋に行きましょう」



 それからわたしたちはソフィーを連れて、再びミミさんのパン屋を訪れた。


「ふっくらしたパンが焼けるって、本当ですか?」

「たぶん、今度こそ焼けると思います」

「じゃあ、さっそく作ってみますね」

「あ、待ってください」


 パンをこねようとするミミさんをいったん止める。


「その前に、厨房を暖めてください」

「あ、寒かったですか?」

「わたしは平気ですけど、パンは平気じゃなかったんです?」

「……?」


 ミミさんもソフィーも首をかしげている。

 ひとまず暖炉に火を入れ、厨房が暖まるのを待った。

 そしてちょうどよい室温になってからミミさんにパンを作るのをお願いした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ