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キャンバスに描くもの:7-4

「ソフィーはちょっと積極的すぎますけど、とってもいい子ですよ」

「まあ、悪い人間ではないのはわかる……」


 キール王子ってもしかして、ああいうずいずい距離を詰めてくる子が苦手なのかも。



 日が暮れるころ、わたしの絵は完成した。


「わー、すっごいかわいく描けてるよ、ミーシェ」


 モデルになってくれたリトリスは大満足だった。

 自己評価しても、けっこうよくできてると思う。

 さすがに賞はもらえないだろうけど。


「かわいいな」


 キール王子が笑みを浮かべる。

 その笑みが見れただけでも絵を描いた甲斐があった。

 キール王子の笑顔はとっても貴重だからね。


「僕の絵も完成したところだ。見てくれないか」


 わたしの姿を描いた絵か……。

 自分で見るのはちょっと恥ずかしい。

 でも、キール王子の目にわたしがどんなふうに映っているのかも興味がある。


 イーゼルの前に立ち、キャンバスに描かれた絵を見る。

 そこにはソファに腰かける少女の姿が描かれていた。


「すごく上手です! キール王子、画家になれますよ」

「それは過言だ」


 過言ではない。

 繊細な輪郭と、淡い色使い。


 本職の画家にも負けない出来栄えだ。

 それが素人のものには到底見えなかった。

 自分の姿をこんなすてきなふうに描いてくれるなんてすごくうれしい。


「ミーシェの美貌をどれほど表現できたかわからないが、全力は尽くしたつもりだ」

「わたしに美貌なんて言葉は似合わないですよ」

「なにを言っている。キミこそ誰よりも美しい女性だ」

「て、照れちゃいます……」


 田舎娘がこんな美しく描かれるなんて本望だ。

 本物もこれくらいきれいならいいんだけどな、なんて自虐してしまうくらい。



 そして絵画コンクール当日。

 グリーンヴェイルの集会場がコンクールの会場になっていた。


 普段はなにもないだだっ広い空間に、今は無数の絵が展示されている。

 町の人たちがそれらの絵を自由に見て回っていた。


「これ、聖女さまがモデルの絵ですよ!」


 ソフィーは真っ先にキール王子の作品に飛びついた。

 真剣な目つきでその絵を見ている。


「本職の画家顔負けの出来ですね」

「すごいよね、キール王子って。なんでもできちゃうんだもん」


 よく考えれば、キール王子は文字通り王家の人間。

 王城にいたころは芸術に関しての勉強はしっかりしてきたのだと思い至った。


「となりにあるのは聖女さまが描いた絵ですね」

「どうかな?」

「かわいいですっ」


 ソフィーがカメラのシャッターを切った。

 驚くべきことに、わたしの絵は賞をもらっていた。


 賞は佳作。

 10作品選ばれたうちの一つにわたしの絵は含まれていたのだ。

 ちなみにキール王子は優秀賞をもらっている。


「ソフィー。わたしの絵を見せてあげたんだから、今度はあなたの絵を見せてよ」

「私ですか……」

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