キャンバスに描くもの:7-2
「あ、聖女さま発見!」
またも呼び止められる。
声のしたほうを振り向くと、そこにはポニーテールの少女がいた。
首からカメラを提げ、ペンとメモ帳を手にしている。『いつも』のように。
「こんにちは、ソフィー」
彼女の名前はソフィー。
元気いっぱいの、明るい少女だ。
年齢が近いこともあり、町にきてからすぐに友達になったのだ。
「聖女さまはお買い物ですか?」
「うん。お昼ご飯の食材を買いにね」
「お昼はなにになさるので?」
「お魚の料理にしようかな、って漠然と考えてるところ」
「ふむふむ、聖女さまはお魚が好き、と」
ソフィーがメモ帳に書き込む。
そ、それ重要なことなのかな……。
「今日の記事はこれに決定! 『聖女さま、お魚料理を作る』」
「そ、それより絵画コンテストを記事にしたほうがいいんじゃ……」
さすがに日常生活を新聞に書かれたくはない。
新聞。
そう、彼女は新聞記者を目指していて、グリーンヴェイルのさまざまな出来事を取材して新聞を自作しているのだ。
わたしが中毒事件や杯の盗難事件などを解決した話もすでに記事にされている。
町のウワサがあっという間に広まるのは、彼女のおかげでもあるのだ。
ただ、彼女、わたしの生活を事細かに記事にしようとするのだ……。
「聖女さまはグリーンヴェイルの人気者ですからね。みんな聖女さまの生活に興味しんしんなんです」
それはうれしくもあるんだけど……。
「聖女さま。写真を一枚撮らせてください」
「それくらいならいいよ」
わたしは身なりを軽く整えてぴんと背筋を伸ばす。
するとソフィーはなにやら難しそうな面持ちになる。
「もっと自然な姿を写真に撮りたいんですよねー。日常の一瞬を切り取った感じの。お店で商品を眺めているところを撮らせてください」
「わ、わかったよ」
魚屋でお魚を買う。
品定めをしてよさそうな魚を選び、代金を払ってお魚を買う。
その一連のようすを、ソフィーは何度もシャッターを切って写真に収めていた。
「この写真、今度の新聞に載せていいですか?」
「なるべくかわいく写ってるのをお願いね」
「聖女さまはぜんぶかわいいですっ」
ソフィーは興奮していた。
「ところでソフィーはなにを描いてるの?」
「描いてる、とは?」
首をかしげるソフィー。
「絵画コンテストに出品する絵だよ。ソフィーも参加するんだよね?」
「私ですか……。私はもっぱらコンテストのようすを記事にすることしか考えてませんでした。写真のコンテストならよろこんで参加してたんですけどね」
「せっかくだからソフィーもなにか描いてみたら」
うーんと考え込むソフィー。
「聖女さまをモデルにしていいですか?」
「ごめんね。私には先約がいるの」
「王子さまですね」
そのとおり。




