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シルヴァリオン:6-8

 ドスン!

 シルヴァリオンが着地すると、立っていられなくなる地震が起きた。


「ミーシェ!」


 キール王子が抱き留めてくれる。

 やさしい。


 砂埃が舞い上がり、視界がふさがれる。

 咳き込むわたしたち。

 砂埃が収まると、わたしたちの前の間にはシルヴァリオンが立っていた。


 口からは多量の出血。

 虫歯はしっかり抜けたんだ。


「リトリス!」

「わかったよ」

「シルヴァリオン、口を開けるんだ」


 シルヴァリオンが口を開ける。

 虫歯が抜けた部分から血がどくどくと流れ出てきている。

 リトリスが治療の魔法を唱えると血の流れがぴたりと止まった。


 シルヴァリオンのそばには抜けた牙が落ちていた。

 牙は虫歯で黒く変色している。

 よかった。ちゃんと根元まで抜けている。


「これで頭痛は治るのだな……?」

「ちょっと時間がかかるかもしれませんが、ちゃんと治りますよ」

「そうか……」


 安心しているようすだった。

 わたしはそれを見るたびにうれしくなる。

 患者が病や傷から解放されてほっとしたときの表情を。


「ミーシェには本当にいつも驚かされる。今度は竜の病を治してしまうとはな」

「さっすが聖女さまだねっ」

「聖女よ」


 シルヴァリオンの首が伸びてわたしの目の前までくる。

 爬虫類の顔だからあまり表情はわからないけれど、友好的な感情は伝わってきた。


「お前には感謝せねばなるまい。人間に感謝する日が来るとは夢にも思わなかった」

「こちらこそ、精霊の泉を使わせてくれてありがとうございます」


 あ、大事なことを言うのを忘れるところだった。


「これからは食事をしたあとは歯磨きをしてくださいね」

「歯磨き……? どうすればいいのだ」


 うーん、さすがに竜の歯ブラシなんてないだろうし……。


「とりあえず、水で口の中をしっかりゆすいでください。食べもののかすが残っていると虫歯の原因になるので」

「心得た」


 シルヴァリオンが空を見上げる。


「人間も悪くないものだな」

「よかったら、グリーンヴェイルの町に遊びにきてください。いいですよね? キール王子」

「ああ。仲良くすることは法律であろうと縛られない」

「我々竜は、もうあらためなければいけないのかもしれぬ。人間という存在の認識を。そして人間とのかかわり方を。それを聖女ミーシェよ。お前が教えてくれた」


 竜の虫歯。

 精霊が失った魔力の回復。

 わたしたちはその二つの問題を解決したのだった。



 自宅にて。


「これでボクも正式にミーシェと王子の家族だねっ」

「もう、リトリスは最初からちゃんと家族だったよ」

「その気持ちはうれしいけど、ボクはなんとなく後ろめたい気持ちだったから。ところで――」

「なに?」

「ミーシェとキール王子は結婚してるの?」


 ええーっ!?

 いきなりとんでもない質問をされてしまった。


 慌ててキール王子に目配せする。

 キール王子は平然とした表情をしていた。


「今はしていない。『今は』な」


 いつかそうなるのだろうか。

 わたしとキール王子が結ばれる運命。

 その運命は、とてもよろこばしいことだ。


 わたしははにかみ笑顔を浮かべた。

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