シルヴァリオン:6-7
シルヴァリオンには覚悟を決めてもらわなくてはならい。
再び黙り込むシルヴァリオン。
しばらくして、覚悟を決めたらしいシルヴァリオンは「わかった」とうなずいた。
「ミーシェ。どうやって抜歯する」
「うーん、そうですね……」
人間の抜歯なら、虫歯に糸を結んで引っ張る方法がある。
もしくは工具で引っこ抜くか。
とはいうものの、竜の牙は糸で引っ張ったところじゃ抜けないだろうし、工具にしても竜の大きな牙に見合うものなんてあるはずがない。
「魔法で爆破するのはどうだ」
「根っこから抜かないと治療にはなりませんので……」
仮にそうするとしても、シルヴァリオンの口の中が大惨事になりそうだ。
……やっぱり引っこ抜くしかない。
「歯を抜く前に、リトリスを精霊の泉に連れていってもいいですか?」
「なぜだ」
「抜歯した直後は出血しますので、止血のために治療魔法が必要かと」
「……いいだろう。だが、魔力が戻った途端逃げたら我は怒りにまかせて町を焼き払うぞ」
そう脅かされた。
森の奥には泉があった。
膨大な魔力を感じる。
「これだよ! 精霊の泉!」
泉の周辺にはリトリスに似た、小動物のような精霊たちが各々憩いの時間を過ごしていた。
リトリスが一目散に泉にめがけて飛び込む。
ぽちゃんっ、と小さなしぶきを上げてリトリスは泉の中に潜った。
ばしゃんっ。
リトリスが飛び出てきた。
ふわふわと飛んできてわたしの前までくる。
「魔力を取り戻したよ!」
「よかったね、リトリス」
「もう悪さはするんじゃないぞ」
「反省してるよ……」
「治療の魔法は使える?」
「当然できるよ。歯を抜いたあとの止血はボクにまかせてっ」
準備は整った
あとは実行に移すだけ。
わたしとキール王子とリトリスは断崖絶壁の前にいた。
切り立った高い崖がそびえ立っている。
崖の上にはシルヴァリオンを待機させている。
彼の虫歯の牙にはロープが結んでおいた。
そしてロープのもう片方は大木に結んである。
シルヴァリオンは今から崖から飛び降りる。
その勢いを利用して歯を引っこ抜くのだ。
うーん、なんとも原始的で物理的で乱暴な手段。
シルヴァリオンにはあらかじめ、覚悟が出来たら飛び降りるよう言っておいた。
わたしたちは崖下で待つだけ。
飛び降りてきたら、即座にリトリスの治療魔法で抜歯の止血をする。
あ、シルヴァリオンの長い首が見えた。
シルヴァリオンは首を伸ばして崖下を覗き込んでいる。
口の中からはロープが伸びている。
「シルヴァリオーン、がんばってー」
わたしは応援した。
シルヴァリオンの首が引っ込んで見えなくなる。
次の瞬間、竜の巨体が飛び出てきて空を舞った。
直後、重力が作用してその巨体は垂直に落下してきた。




