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シルヴァリオン:6-6

 シルヴァリオンの虫歯の神経は壊死している。


「壊死とは、神経が死んでいるということか」

「そのとおりです。キール王子」


 虫歯は神経にばい菌が入って炎症を起こして痛みを伴う。

 そして、炎症が悪化すると神経が完全に死んでしまい、役目を果たさなくなる。

 だから最終的には痛みを感じなくなってしまうのだ。


「痛くないならほっといていいんじゃないの? ミーシェ」


 リトリスが疑問を口にする。

 そういうわけにはいかないのだ。


 神経が痛みを感じさせる機能は死んでいても、脳には依然としてつながっている。

 ばい菌の浸食が進むと、神経を伝って脳にまでやってきてしまうのだ。

 そして脳の悪影響を及ぼし、それが頭痛になって現れる。


「それが、シルヴァリオンの頭痛の原因……」

「シルヴァリオン。あなたの頭痛はの原因は虫歯だったんです」

「むぅ……」


 うつむくシルヴァリオン。

 たぶん、虫歯になったのを恥じている。

 それも仕方ない。虫歯になる原因は、歯の手入れを怠ったという自業自得しかないのだから。


「わ、我は果物が好きで、森になるリンゴなどをよく食べていた」

「そのせいですね」


 甘いものは虫歯を発生させる。

 キール王子があごに手を添えて考え込む。


「これでは鎮痛剤や頭痛薬を飲ませても根本的な解決にはならないな」

「どうするの? ミーシェ」

「……歯を抜こう」

「なにっ」


 シルヴァリオンが驚いた。

 虫歯の根本的な対処には古来から一つしか方法がない。

 それは――抜歯。


「わ、我の牙を抜くというのか……」


 歯を抜くのは大人もためらう。

 子供の歯なら、大人の歯が後から生えてくるからいいんだけど、成人の歯となるともう生えてこない……。

 かわいそうだけど、仕方がない。


「ちょっと待て、シルヴァリオン。竜の牙は抜けてもまた生えてくるのではないか?」

「えっ、そうなんですか? キール王子」

「肉食動物の中には永久的に歯が入れ替わるものもいると聞いたことがある。むしろ二度と生えてこない人間のほうが例外だとか」


 わたしたちはシルヴァリオンを見る。


「う、うむ。我の牙はときおり抜けるが、また生えてくる」


 よかった。

 それなら安心して抜歯できる。

 ところがシルヴァリオンは表情を曇らせて視線をそらしていた。


「だ、だから、自然と抜けるのを待てばよかろう……」


 こ、こわがってる……。


「ダメ! 今すぐ抜かないと、脳にばい菌がいっぱい入って死んじゃいますよ」

「し、死ぬのか!」

「死にます」


 半分脅しだけど、もう半分は本当だ。

 虫歯は悪化すると死に直結する。

 しかも、恐ろしいほどの苦痛を感じるという。

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