シルヴァリオン:6-5
頭痛の原因になるのは睡眠不足やストレス、飲酒、水分不足が挙げられる。
シルヴァリオンはいずれにも該当していないようだ。
とりあえず頭痛薬を処方すれば治るだろうけれど、それでは根本的な治療にはならない。
うーん。
考える。
頭痛の原因……、必ずあるはずなのだ。
「シルヴァリオン。あなた、ウソついてませんか?」
「なんだだと」
憤慨するシルヴァリオン。
「もしくは、隠しごとをしているとか。恥ずかしがらなくていいんですよ」
「我はウソも隠しごともしてない!」
吠えるシルヴァリオン。
間近で聞くとすごい迫力だ。
鼓膜が破れそう。
耳をふさぎながら目を閉じる。
薄く片目を開けて、ちらりとシルヴァリオンに目をやる。
大きく口を開けるシルヴァリオン。
「あっ!」
そのとき、わたしは気付いた。
やっぱりシルヴァリオン、隠しごとをしていたんだ。
「シルヴァリオン、あなた、虫歯があるじゃないですか!」
シルヴァリオンの口には鋭い牙が無数に生えそろっていた。
……その中に一本、あからさまに色がくすんだものがあった。
あれはたぶん、虫歯だ。
「わ、我は偉大なる竜。虫歯などない……」
ろこつに動揺してるし!
「恥ずかしがらなくていいんですよ。虫歯は誰だってなるんですから」
「……」
「もう一度、口を開けてください」
黙り込むシルヴァリオン。
それから少しして、黙って口を開けた。
わたしたちは口の中を覗き込む。
やっぱり。
くすんだ色の牙は虫歯になっていた。
「ミーシェ。虫歯と頭痛は関係あるのか?」
キール王子が質問する。
関係は大いにある。
歯には神経が通っていて、それは脳まで続いている。
虫歯になると神経が炎症を起こして、脳に影響を及ぼす。
それが頭痛になって現れるのだ。
……と、グリーンヴェイルのお医者さんに教えてもらったことがあった。
わたしは錬金術で医者のまねごとをしていから、医療の知識をお医者さんに教えてもらうことが多々あるのだ。
町で診療をしていると、虫歯の患者はよく訪れる。
「神経というものが身体にはあるのか。ミーシェは詳しいな」
「さすが聖女さまだねっ」
「シルヴァリオン。虫歯は痛くないんですか?」
「痛くはない」
へ?
そんなはずはないんだけど……。
「えっと、我慢しなくていいですから」
「いや、本当に痛くないのだ」
おかしい。
見た目からして虫歯はかなり悪化している。
食事をとらなくても、常に痛みは伴うはずだ。
そんな疑問を抱いていると、シルヴァリオンはすぐに解決してくれた。
「……以前は痛かった」
「以前は?」
「ああ。今は痛くないのだ」
合点がいった。
以前は虫歯が痛くて、今は痛くない理由。
それは一つしかない。




