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聖女の契約:5-6

 書庫を調べてみる。

 ざっと見た限り、どうやら分類わけのようなことはされていないらしく、書物は無作為に保管されている。

 そもそも経年劣化で表紙の文字が読めなかったり、開いた瞬間バラバラになってページが散らばる本まであるありさまだ。


 キール王子が眉をひそめる。


「マリーゴールド。書物というものは貴重なものだ。先人たちの知識が書き記されているのだからな。それをぞんざいに扱うなど――」

「あー、すみませんすみませんー。ご先祖さまによーく言っておきますー」


 マリーゴールドさんが耳をふさぎながらそうわざとらしく答えた。

 キール王子は呆れたようすでため息をついた。


 知識の集約は人間の特権。

 書物とはとても大事なものなのだ。


 さて、この中から精霊の泉に関する資料をさがすのか……。

 闇雲にさがしていたら途方もない時間がかかる。

 というか、どう考えても現実的ではない。


 不可能だけれど、仮に片っ端からさがして、結局資料はありませんでした、なんて結果だとむなしいどころではない。


「ミーシェ。書庫を出よう」

「……そうですね」


 わたしたちは書庫を後にした。

 それから客間で紅茶を飲みながら、これからのことについて考える。


「おいしいよ、このお菓子!」


 リトリスはテーブルに座ってクッキーを抱えて食べていた。

 自分の身体くらいあるお菓子なら、さぞ食べ応えがあるだろう。


 うらやましいな。

 わたしも一度でいいから、絵本に出てくるようなおっきなお菓子を思う存分食べてみたい。


「リトリス。お前、ゆうべは食事をとらなかったが、平気だったのか」

「精霊は空腹という概念はないんだよ」

「ならばなぜクッキーを食べる?。そもそもお前が封印された原因も、果物の盗み食いだったろう」

「おなかは減らないけど、おいしいものは食べたいでしょ。ねえ、ミーシェ」


 あ、それには同感。

 わたしも空腹とは無関係にお菓子を食べたくなるし。


「それにしても愛らしい子ねー」


 マリーゴールドさんが指でつんつんリトリスをつつく。

 リトリスはくすぐったそうに身をよじる。


「この子が悪魔だなんてね」

「悪魔じゃないって!」


 リトリスが即座に否定した。


「それはともかくミーシェちゃん。精霊の泉のありかをさがす方法は思いついた?」

「わ、わたしを頼るんですか?」

「あなた、今までいろんな問題を解決したでしょう? 今回もひらめかない?」

「ミーシェを困らせるな」


 実を言うと、精霊の泉を見つける方法は思いついていた。


「……魔脈をたどれば精霊の泉にいけるかも」


 わたしがつぶやくとキール王子とマリーゴールドさん、リトリスの視線がわたしに集中する。

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