聖女の契約:5-5
「よし、リトリス。精霊の泉へと案内しろ」
「それが、精霊の泉の場所はボクにもわからないんだ」
しょぼんとするリトリス。
話によると、リトリスはもともと遠くの地方から引っ越してきた精霊で、この地方にやってきてから精霊の泉には行ったことがないという。
しかも、リトリスは船に紛れ込んで別の大陸からやってきたらしいから、ちょっと遠出してリトリスの故郷の泉に、というわけにもいかなかった。
「マリーゴールドに尋ねてみるか」
わたしとキール王子、それとリトリスの三人で村長邸を訪ねた。
事情を説明すると、マリーゴールドさんは難しい顔をして腕組みした。
「精霊の泉……。聞いたことないわね。力になれなくてごめんなさい」
がっくりとうなだれるわたしとリトリス。
「この邸宅には古い時代の書物が残っているはず。それを見せてもらう」
「ええ、王子がそうおっしゃるのなら」
古い書物になら精霊の泉について記されているものがあるかも。
望みは薄いけれど、わたしたちはそのかすかな望みにすがって書庫へ向かった。
マリーゴールドさんが書庫の扉のノブに手をかける。
ところが、扉のノブは回らず、ガチャガチャとわずかに動くばかりだった。
カギがかかっている。
「マリーゴールド。カギが必要なのではないか」
「……」
「……マリーゴールド?」
「カギなんて知らないわよ」
マリーゴールドさんは涙目になっていた。
マリーゴールドさん自身、一度も書庫に入ったことがなく、カギのありかなどまったく知らなかった。
「す、すみません、王子……」
「ふむ……」
少し考え込んだあと、キール王子がわたしのほうを向いた。
「ミーシェ。あのときのようにカギを錬成できるか?」
「まかせてください」
こういうときのためにポケットにいつも銅貨を入れておいたのだ。
銅貨を取り出して手のひらに乗せる。
そして集中し、身体をめぐる魔力を一か所に集めると、錬金術を発動させた。
まぶしい光が発せられる。
光が収まると、手のひらの上の銅貨はカギに変わっていた。
リトリスが「わぁ」と感嘆の声を上げる。
「すごいや、ミーシェ」
「これくらいどうってことないよ」
「いやいや、助かったわよ、ミーシェちゃん」
「ミーシェのおかげだな」
カギ穴にカギを挿し込む。
カギをひねると、かちりと手ごたえがして施錠が解かれた。
書庫はだいぶ長い年月、人が立ち入らなかったせいでホコリまみれだった。
一歩、歩くだけでホコリが舞う。
マリーゴールドさんがしきりに咳をしていた。
「いっぱい本があるよ、ミーシェ」
リトリスの言うとおり、書庫にはぎっしりと書物が収められていた。
書架にしまわれているものもあるし、床の上に雑然と積まれたものもたくさんある。




