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聖女の契約:5-4

 これはチャンスだ。

 わたしはまじまじとキール王子の顔を見る。


 端正な顔立ち。

 鋭く削られた氷のような冷たさを感じる。

 けど、わたしは知っている。その氷の内部にはあたたかいものがあるのだと。


「だいぶ悩んでいるな」

「あっ、ごめんなさい!」


 見つめすぎた……。

 わたしは慌ててカードを引いた。

 ……死神。


「次はボクの番か」


 そしてキール王子もまた死神のカードを引いた。

 またわたしの番になると、今度はわたしは12のカードを引いた。

 わたしの勝ちだ。


「おめでとう、ミーシェ」


 ふっと笑みを浮かべるキール王子だった。

 ちょうど就寝の時刻になった。


「おやすみなさい」

「おやすみ」


 わたしとキール王子はそれぞれの部屋に入って就寝した。

 リトリスを一人残すのはかわいそうだったので、あの子が入っているポットを持ってきた。

 テーブルに置き、わたしはベッドに入る。


 暗い部屋で目を閉じ、眠りが訪れるのをじっと待つ。

 ……。

 ……そうしていると、ふとあることに気付いた。


 さっきのカードゲーム、キール王子はわざと負けたのだ。

 どう考えてもわたしは当たりの手札を取られようとしたときにそれが表情に出ていた。

 にもかかわらず、キール王子はハズレの札を引いていた。


 キール王子はわたしを勝たせてくれたんだ。

 ……ほんとうにやさしい人だな。

 とてもステキだ。


 そんな人に好かれるなんて、わたしはきっと、とてもしあわせなんだな。

 氷の王子はわたしの心をあったかくしてくれたのだった。

 わたしは枕を抱きしめてごろごろとベッドを転がった。


 翌朝。

 リトリスがわたしたちにこんなことを言った。


「実は、キミたちに秘密にしていたことがあったんだ。ごめん」


 後ろめたそうにしている。

 ま、まさか、実は悪魔だったり……。

 そんな心配をしていると、リトリスはこう続けた。


「ボク、魔法が使えないんだ」

「精霊なのに魔法が使えないのか。僕が知る精霊は、魔法の矢で獣を退治したり、風や火をおこしたりするものなのだが」


 わたしの認識もそうだった。

 本の物語に登場する精霊は魔法を操っていた。

 てっきり魔法でわたしを助けてくれるとばかり思っていたのだけれど。


「イタズラして捕まって壺に封印されるとき、魔力を奪われちゃったんだ」

「なるほど」

「リトリスはもうずっと魔法は使えないの?」

「魔力を取り戻せばまた魔法を使えるよ」

「どうすればいい。僕たちに教えろ」

「『精霊の泉』に行けば魔力を取り戻せるんだ」


 精霊の泉とは精霊たちが集まる泉だという。

 泉の水には魔力が含まれていて、それを浴びれば魔力を取り戻せるのだとリトリスは説明してくれた。

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