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聖女の契約:5-3

「じゃあ、ボクは寝るよ。おやすみ」


 リトリスの身体が緑に発光する。

 そして小動物の姿から小さな光の球体に姿を変えてポットの口から中に入っていった。

 精霊にはこの広さがちょうどいいのかな。


「ミーシェ」


 リトリスがいなくなったのを見計らったかのように、キール王子がわたしに言う。


「まだリトリスを信用するな」

「どうしてです?」

「悪魔が騙っている可能性も捨てきれない」

「でも、こんなにかわいくてすなおな子なのに……」

「かわいくてすなおな子が、いたずらをして封印などされはしない」


 さすがキール王子、抜け目がない。

 確かに不用心だったかも。

 でも、わたしはリトリスを信じてあげたい。


「あの、キール王子。疑うことも大事かもしれませんが、信じることも大切だと思います」

「しかし……」

「『偽聖女』扱いされていたわたしを信じてくれたように、リトリスも信じてあげてください」


 にこりとわたしは笑う。

 ぽかんとするキール王子。

 それからふっと笑みを浮かべた。


「やさしいな、ミーシェは。それがキミのすてきなところだ」


 キール王子は本当に真正面からそういうことを言う。

 わたしは照れくさくなって「あはは」と頬をかいてごまかした。



 そして夕食後。

 リトリスはあれからずっとポットから出てこなかった。

 おなかへらないのかな。


「ミーシェ、キミの番だ」

「あ、はい」


 わたしとキール王子は就寝時刻まで暇つぶしにカードで遊んでいた。

 ルールはかんたん。

 互いの手札から一枚ずつカードを引き、同じカードがそろったらそれを捨てる。すべての手札を先に捨てたほうが勝ちだ。


 しかもこのルール、二人だと更に単純になる。

 なぜなら、最終盤になるまで必ず手札はそろうのだから。

 必然的にわたしたちは次々とカードをそろえて捨てていき、すぐに最後の局面になった。


 わたしの手札は二枚。

 12の番号が振られたカードと、死神が微笑むハズレのカード。

 キール王子の手札は一枚。


「……」


 キール王子が12のカードを引けば王子の勝ちだ。


「……」


 じっとわたしの顔を見つめてくるキール王子。

 ひょっ、表情が出ないようにしないと……。

 キール王子の手が12のカードへと伸びる。


「ひえっ」

「……」


 が、思い直したのか死神のほうのカードを引いた。


「ハズレか」

「ざ、残念でしたね」


 次はわたしがカードを引く番。

 キール王子の表情を見つめる。

 うーん、いつものクールな表情だ。


 ……。

 あれ、よく考えたら、これってキール王子の顔を好きなだけ見つめられるんじゃ……。

 いつもは恥ずかしくてそんなことできなかったけど。

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