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聖女の契約:5-2

 ふわふわとリトリスがわたしのほうへ近寄ってくる。

 か、かわいい!

 思わず抱きしめたくなってしまうかわいらしさだ。


「よろしくね、ご主人さま」

「わたしのことはミーシェって呼んで。わたしもリトリスって呼ぶから」

「わかったよ、ミーシェ」


 お互い笑顔であいさつ。

 悪魔の封印を解くことになったときはどうなることかと思ったけれど、こんなうれしい出会いがあるなんて。

 聖女に仕える精霊――うん、サマになってるね。


「……」


 視線に気づく。

 振り向くと、キール王子がわたしとリトリスをじっと見ていた。


 真剣な面持ちだ。

 もっとも、キール王子はいつもそういう表情をしているんだけれど。

 でも王子、なにか考えごとをしているみたい。


「マリーゴールド。リトリスの件はまだ町の人たちには話すな」

「いいですけど。どうしてです?」

「少々思うところがあってな」


 キール王子はじっとリトリスを見る。

 リトリスは怖がってわたしの背後に隠れてしまった。

 まあ、知らない人からすればキール王子はちょっと怖い人かもしれないね。



 そうしてわたしたちはリトリスを連れて家に帰ってきた。


「ここがミーシェとキール王子の家! いい家だね」

「てへへ。ありがとう」


 リトリスは興味津々といったようすで家の中を飛び回る。

 暖炉を覗いたり絵画を見たり、窓の外を眺めたり。


「これからは三人での生活だね」

「それって、ボクを家族として扱ってくれるの?」

「もちろん」


 聖女の使いの精霊だとしても、リトリスは人の言葉を話して意思疎通ができる子。

 とてもじゃないけど使い魔だとか召使いだとか、そんな扱いはできない。

 わたしたちは対等な関係だ。


「キール王子も、それでいいですよね?」

「……」

「キール王子?」

「……ん。ああ。僕もそのつもりだった」


 キール王子、さっきからようすがおかしい。

 どうしたのだろう。


「さっそくなんだけどさ、ミーシェ」


 リトリスが言う。


「ボクの部屋をあてがってくれないかな」


 部屋ならちょうど空いている。


「いいよ。でも、リトリスには広すぎるかも。ベッドも人間用だし」

「あ、人間の部屋じゃなくて、精霊用の部屋だよ」

「精霊用の部屋?」

「あれ、ミーシェは知らないんだ。ちょっと待っててね。たぶんどの家にもあると思うんだけど」


 リトリスがキッチンのほうへ飛んでいく。

 しばらく待つと、リトリスは紅茶を淹れるためのポットを抱えて戻ってきた。


「ボクの部屋はこれがいい。おしゃれな形をしているしね」

「それってポットだよ!?」

「うん。この中に入ってボクは寝るよ」


 リトリスによると、精霊というものはビンやポットを部屋にして生活するのだという。

 でも、狭くないのだろうか。

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