表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/50

聖女の契約:5-1

「なに、どさくさにまぎれてイチャイチャしてるのよ」


 マリーゴールドさんも無事のようだ。

 イチャイチャはしていないんだけどなぁ。


 さて、封印は解けたけれど、中に入っていたのは本当に悪魔だったのだろうか。

 視線を壺のほうに戻す。

 ところが、そこにはふたの開けられた壺以外、なにもなかった。


「悪魔がいない……」

「壺のなかにはなにもいなかったのか」

「ふーむ、あの派手な演出でハズレとは考えられないわね」


 マリーゴールドさんの言うとおりだ。

 間違いなく、わたしはなんらかの封印を解いた。


「ボクをさがしているのかい?」


 声が聞こえた。

 少年の声だ。

 声は頭上からした。


「あっ」


 壺の真上に一匹の小さな生物が浮遊していた。


 太いしっぽが特徴的な、リスに似た生き物。

 身体はエメラルドのような緑色。

 ぬいぐるみのような愛くるしい顔をしている。


 そんな小動物的な生き物が、翼もないのに宙に浮いていた。

 この子が、壺に封印されていた悪魔……?

 疑問形なのは、どう見えてもこの子が悪魔には見えなかったからだ。


「お前が壺に封印されていた悪魔か」

「悪魔とはひどいなぁ。ボクは悪魔じゃなくて精霊だよ」


 精霊……。

 この世界の自然のあらゆるものに宿るという存在。


「ボクの名前はリトリス。封印を解いてくれてありがとう、お姉ちゃん」

「お姉ちゃん……」


 なんだかむずかゆい。

 自分のことを『お姉ちゃん』って呼ばれたことなんてなかったから。


「リトリス。あなたが悪魔じゃないのなら、どうして封印されていたの?」

「そ、それは……」


 うろたえるリトリス。

 口ごもってわたしから視線をそらしている。

 どうやら言いづらい事情があるようだ。


 そこにキール王子が追撃を加える。


「白状しろ。さもなくば再び壺に封じる」

「わーっ、それはやだやだ! 壺の中は退屈なんだもん」


 リトリスは壺に封じられた経緯を話してくれた。

 はるかむかし、キッコロ村に果物のなる木がたくさんあったという。

 ある日、リトリスはそれを一人で全部平らげてしまったのだ。


 果物は村の大切な食糧。

 怒った村人たちは魔法使いに頼み、リトリスを壺に封じ込めたのだった。


「……そういうわけなんだ」

「自業自得ではないか」

「反省してるよ……。だから壺には封じ込めないで」

「わかっ――」

「まて」


 わたしが「わかったよ。許してあげる」と言おうとしたのをキール王子が制した。


「リトリス。お前の罪は免じよう。ただし、条件がある」

「なんでも言うこと聞くよ」

「彼女の召使いとして働くことだ」

「その女の子に力を貸せばいいってこと? お安い御用だよ」


 リトリスはほっと安堵の息をついた。


「いいの? リトリス」

「うんっ。お姉ちゃん、きれいでかわいいから。命じられなくてもいっしょにいたいくらいだよ」

「か、かわいい……」


 わたしは自分を指さす。


「そうだ。ミーシェは美しい女性だ。そして神に選ばれた聖女でもある」

「聖女さま? それはすごいね!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ