町と村の交易:4-5
わたしはしばし考える。
悩む。
わたしは聖女の力で錬金術が使えるけれど、魔法で魔物や盗賊をやっつけることなんかはできない。
いずれそうしなければならないときがきたらどうするか……。
誰かを助けるための力なら……。
「わかりました。壺を開けましょう」
「そう言ってくれると僕は信じていた」
て、照れちゃうな……。
キール王子に『信じる』って言われただけで舞い上がっちゃうなんて、ホントわたしったら……。
「では、開けるぞ」
キール王子が壺に手を伸ばす。
……ところを、マリーゴールドさんが手首をつかんで阻止した。
顔を青ざめさせている。
「ウチで開けないでちょうだい」
「それもそうだな」
開けた途端、巨大な悪魔が飛び出してきたらお屋敷が壊れちゃうものね。
そういうわけでわたしとキール王子、それとマリーゴールドさんの三人は村の郊外にある空き地へとやってきた。
ここなら巨大な悪魔が出てきても被害は出ない……と思う。
「さて、なにが出るやら」
マリーゴールドさんは壺からだいぶ離れた場所でようすをうかがっている。
わたしとキール王子は壺の前に立っている。
「ミーシェ。悪魔が出てきても決して恐れるな」
キール王子が言う。
「恐れを見せたら悪魔はつけあがる。聖女として凛と振舞え」
「わかりました。たぶんだいじょうぶだと思います。キール王子がそばにいますから」
「僕がいるから?」
「は、はい」
ちょっと照れくさい。
キール王子はどうして自分がいるから平気なのかわからないようす。
とぼけているわけでも、照れ隠しをしているわけでもないのは明らか。
うーん、その言葉に秘めた想いに気づいてくれなくてうれしいようなさみしいような……。
「それじゃあ、壺を開けますね」
「神さま、どうかご加護をー」
マリーゴールドさんが神に祈っている。
わたしは壺のふたに手を伸ばし、そしてふたを開けた。
ふたがポンッと壺の口から抜けた瞬間、閃光が走って世界を瞬時に白に染めた。
まぶたを貫く強烈な光。
肌がじりじりと痛むほどの熱。
「ミーシェ!」
わたしは背後から抱き寄せられる。
キール王子だ。
王子がわたしをかばってくれている。
強い光はなおも続いている。
「やばい! これやばいわよ!」
マリーゴールドさんの叫び声が聞こえる。
わたしは目をつぶって、強烈な光にじっとたえていた。
そうしていると、徐々に光が弱まっていくのを感じる。
やがて光は完全に収まった。
ゆっくりと目を開ける。
首をひねって後ろを向くと、キール王子の顔があった。
「だいじょうぶか、ミーシェ」
「は、はい。ありがとうございます、キール王子」




