町と村の交易:4-3
わたしはキール王子に目配せする。
「錬金術を使うのだな」
「はい。えっと、そのためには対価が必要で……」
「わかっている。これが必要なんだろ」
キール王子は金貨を三枚、わたしに手渡した。
すっごい大金……。
これだけあれば錬金術の対価としてはじゅうぶんだ。
金貨を握り締めて、祈るように手を握り合わせる。
そして精神を集中させて魔力を自分の意思に応じるように操る。
魔力が手に集まった瞬間、わたしは魔力を使って錬金術を使った。
手の中の金貨が消失する。
それと同時に、目の前に無数のタルが出現した。
「すごいにおいだな……」
顔をしかめるキール王子。
確かににおう。
ただ、それは錬金術の成功も意味していた。
「い、いきなりタルが現れた!」
「これが錬金術……」
「金貨を対価に堆肥を錬成しました」
タルを開けてみると、中にはしっかりと茶色い堆肥が詰まっていた。
「さすがは聖女さま!」
「これだけあれば畑すべてに堆肥をまける!」
村の人たちはさっそく堆肥をまいて畑を耕しだした。
これで畑に養分が行き渡って作物もしっかりそだつはず。
「ありがとうございます、聖女さま。我々を救っていただいた」
「お、大げさですよ」
「大げさなどではない。ミーシェは人々を救う心優しき聖女だ」
キール王子までほめてきた。
照れちゃうな……。
「聖女さまにお礼をしなくてはなりませんね」
「いえ、お礼だなんて結構です」
「そういうわけにはいきません。錬金術とやらに対価が必要となるのと同様、恩には報いなければならないのです」
そういうわけで村長さんはわたしたちにお礼の品をくれたのだった。
「壺、ですかね」
「いかにも。壺にこざいます」
もらったのは古ぼけた壺。
下の部分は丸く太っていて、口のほうへ至るにしたがって細くなっていく。
そんな形をしていた。
ガジさんもキール王子も、わたしも無言で壺を見つめている。
骨董品に関してはまったく知識がないから、この壺にどれほど価値があるのかわからない。
見た目は……、古ぼけた壺だ。
「キール王子はこういうの詳しくないのですか?」
「あいにくな」
「この壺、栓がしてあるぞ」
ガジさんが気付く。
よく見ると、壺の口は栓で塞がれていた。
「村長。中にはなにが入っているんですか?」
「悪魔です」
「へ……?」
ぽかんとするわたしたち三人。
「はるか昔、この村の呪術師が邪悪な悪魔を封じ込めたという言い伝えがあるのです」
「そんなもんいらないぞ!」
「そうですか。聖女さまなら悪魔も使役できるかと思いましてな」
「あはは……。無理だと思います」
お礼をしたいという気持ちはうれしいけれど、気持ちだけ受け取っておこう。




