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盗まれた杯:3-2

 マリーゴールドさんだった。


「王都から帰ってきた例の子、捕まえたわよ」


 マリーゴールドさんの家に行くと、数人の大人と『例の子』がいた。


「縄をほどきやがれ!」


 こ、こわい……。

 彼はかなり大柄で筋肉も隆々。背も高い。

 おまけに顔もかなりいかつい人で、乱暴な性格なのが一目でわかった。


 第一印象は山賊とか海賊とかの悪党。

 彼には申し訳ないけど……。


「ガジ。いい加減白状なさい。あなたが黄金の杯を盗んだのでしょう?」

「知らねえよ」


 シラを切る彼――ガジさん。

 マリーゴールドさんがため息をつく。


「あんな悪趣味なモン、誰が欲しがるんだ」

「ガジさん、黄金の杯を見たことがあるんですか?」

「そっ、それは……」


 ギクリとするガジさん。


「私は見せたことないわよ。なーんで見た目を知ってるのかしら」

「い、いや、その、町の連中から聞いたんだ……」

「王都に出かけた理由を言え」

「さ、散歩……」

「荷馬車を使って遠い王都まで散歩か」


 この人、ウソが苦手なんだな……。

 もうこの時点でわたしと同様、キール王子とマリーゴールドさんはガジさんが犯人だと確信しているようだった。


「ガジさん、正直に話してください。あの黄金の杯は町の財産で買ったんです」

「知ったことか」

「ガジ。今なら悪いようにはしないわよ」

「俺が盗んだのなら証拠を持ってこい」


 それからいくら問いただしてもカジさんはシラを切るのだった。

 証拠もないのに疑うのはよくないけど、あの反応からして十中八九、彼のしわざだろう。

 とりあえずガジさんの処分は保留となり、町長命令で一時的に見張りを立てて謹慎させた。


「ちょっと傷ついちゃったわ」


 マリーゴールドさんが憂鬱そうに言う。


「グリーンヴェイルの町に犯罪をする人はいないと思ってたんだけど」

「本気でそう思っていたのか」

「ガジはああいう見た目だけど、悪い子じゃないのよ。よく教会で孤児たちの面倒を見てくれるし」

「意外だな」

「なのに……」


 またため息をつく。


「あの反応や状況からして犯人なのは間違いないのよね」

「だろうな」

「落ち込まないでください。きっとガジさんには理由があるんです」

「ふふっ。やさしいわね、ミーシェちゃん」

「とりあえずは黄金の杯をさがしませんか。あれさえ見つければ、ひとまずマリーゴールドさんも安心ですよね」

「僕が王城の者を使って調べさせよう」


 ところが黄金の杯は見つからなかった。

 正規の古物商などは当然として、怪しい品が流れていくブラックマーケットも調査したらしい。

 それでも黄金の杯が取引された記録はなかったのだった。


 行方知れずの黄金の杯。

 一体どこにいってしまったのか。


 町をぶらぶらと散歩しながら考える。

 けど、見当もつかない。


「問題が絶えない町だな」


 となりにキール王子がいる。

 二人での散歩だ。


 グリーンヴェイルは王都から離れた小さな町。

 貧富の格差は王都ほどではなく、だいたいの人たちが顔見知り。

 この小さな輪の中の社会では人と人の距離が近い。良くも悪くも。


 けど、小さいとはいえ、ここにはさまざまな人たちが暮らして、自分だけの人生を歩んでいる。

 その中にはやむを得ず法を犯す人だっているだろう。


 防止するのも大事だけど、起こったときの対処に関しても同じくらい大事だ。

 世の中には『絶対』なんてないのだから。


「町の人たちの中には黄金の杯を買うのに反対した人もいたみたいです」

「ガジのような者たちか」

「マリーゴールドさんの私財にしてしまうんじゃないか、って」

「実際、あいつの家に飾ってあるのだからな。反発はあるだろう」

「難しいですね。人の上に立つのって」

「ああ。僕も他人事ではない」


 キール王子ももしかすると、人の上に立つことになる人。

 ロッド王子になにかがあれば、キール王子が王位を継承する。

 そうなったらここでの生活もおしまいか……。


 ずっとここで暮らしていたいな。二人で仲良く。

 いつもそう願っている。

 聖女とはいえ、田舎の村娘が一国の王子と正式に結ばれるなんてありえないし。


「ミーシェ、あれを見ろ」


 ふいにキール王子が立ち止まって、前方を指さす。

 そこには露店があった。

 露店には金属の大きな箱が置いてある。


 あれってもしかして……。

 露店の前まで行くと、店主のお姉さんがにこりと笑顔をくれた。


「聖女さまに王子さま。ぜひ召し上がってください」


 金属の箱のフタはガラスになっていて中が見える。

 ガラスの中には――一面真っ白な雪原が広がっていた。


「アイスクリーム!」


 驚きだ。

 王都でもアイスクリームはなかなかお目にかかれない。

 魔力を用いた冷却箱は高価だから。


「食べるか?」

「はいっ」


 キール王子にアイスクリームを買ってもらった。

 甘くて冷たくておいしい。

 キール王子も珍しく微笑んでいる。


 甘いものは人をしあわせにする力がある。

 アイスクリームやチョコレート、それにキャンディ。


「魔力とは便利なものだ。物を冷やすこともできるなんて」

「単に『魔法だから』じゃなくて、ちゃんと科学でも証明できるんですよ」

「教えてくれないか」


 原理は単純。

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