第6話 ヤンデレ戦隊殲滅作戦、始動ですわッ!
嫌われ大作戦四日目。
「きゅるるん♡」
これはもう挨拶だ。そう割り切って上目遣いをする相手は四人に増えていた。
校門に赤・青・黄・緑、四色の美少年たちが並んでいる光景に、いつも通り手を差し出してくれるシルバーが耳打ちしてくる。
「どこのヤンデレ戦隊ですか」
「……よくわからないけど、面白すぎる語呂はやめて」
ずんずんと我先に近づいてくるネルネージュ帝国最高峰の令息たち。
そんな彼らに、わたくしは両手に腰を当てて頬を膨らませた。
「ぷんぷんっ」
『お、怒ってる~♡』
彼らは今日も一斉に目を輝かせ始める。
「あぁ、どうして怒っているんだい? 僕だけのリュミエール」
「いやレッド、俺に怒っているんだ」
「いやいや、オレに怒っているじゃないか」
「いやいやいや、ぼくに怒っているんですよ」
――全員ですわっ!
そう指摘して差し上げたいものの、こちらも今更ぶりっこがわざとであるとバレるわけにはいかない。腕を組んで「ぷいっ」としたわたくしの半歩後ろで、シルバーが「差し出がましいですが」とお辞儀をしてから珍しく話し出す。
「『わたくしの出迎えなどより、皆様にはすることがあるんじゃありませんの⁉』と言いたいようです」
その通訳(事前に打ち合わせなどしていないのですが、なぜか当たっている)に、まず反応したのはレッドモンド殿下だった。
「な、なぜ貴様がリュミエールの言いたいことがわかるんだ⁉」
「おや、ご存じありませんでしたか? この首輪には、いざという時のテレパシー機能が備わっているんですよ」
――初耳ですわっ!
シルバーが下心持てないように首輪をしていることはお父様から聞いていたが、心の中が読まれてしまう機能なんて聞いたことがない。
そもそも、こうした魔法道具が今の世の中、とても希少なのだ。
大昔は誰しもが『魔法』という特別な力を用いて文明を発展させていたというが、歴史が進むにつれて、そんな『魔法使い』の数は減少していった。
魔法が使えない人々の生活を助けるため、魔法道具が発展していく。
それと同時に魔法道具を作れる人も減少していったので、文明を衰退させないためにあらゆる技術が代わりに伸びていき――今の豊かな人間の世界が続いているのだ。
その結果、かつて生活の変体を補った魔法道具は希少な遺物として、国や貴族の間で骨董品扱いされているのである。
シルバーの『隷属の首輪』もお父様が趣味で集めている遺物の一種だった。当然そんな機能があるのなら、お父様から一言あるはずなので――十中八九、これはシルバーの嘘である。
そのシルバーは今も何喰わぬ顔で恭しくお辞儀をしていた。
「なので俺も授業がある時間は難しいですが、お嬢様の生活のためにもこれまで以上にお傍に仕える所存ですので。皆様もどうかよろしくお願いします」
「そんな機能があるなんて聞いてませんわよ!」
「当たり前じゃないですか。俺が適当にホラ吹いただけなんですから」
「やっぱり……」
それでももしかしたら……そんな可能性を考えて訊いてみれば、シルバーはあっさりと嘘だと認めた。だけど、その嘘のおかげで殿下たちから解放されて、久々に落ち着いて教室まで向かうことが出来ているのだから、本来なら感謝しなければならないのかもしれないけれど。
「あんな嘘に騙されるなんて、さすがお嬢様はお可愛らしいですねぇ」
「う、うるさいですわ……」
そんなこと言われると、やっぱりイラっとするわけで。
わたくしがうっかり彼の足を踏んだのに、彼は眉根一つ動かさずに告げた。
「まぁ、こういうわけで。適当に俺が通訳(笑)しますので、お嬢様はそれに合わせてオノマトペしてください。昼休みから本格的に調査を始めますよ」
……そうですわ。たとえシルバーの手のひらの上だとしても、国のため、民のためにこの奇怪なヤンデレ現象をどうにかしなければなりません。
なので「誰から行くんですの?」と問えば、シルバーは小さく笑う。
「まずはブルーノ様から、ですかね?」
本作をお読みいただきありがとうございます。
ここまででプロローグが終わった…て感じですね。
明日の朝からはヤンデレを一人ずつ撃退していく流れとなります。
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明日は朝昼晩と三回更新予定です。
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