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溺愛、要りません!~きゅるるん令嬢がヤンデレ戦隊を撃退していく10日間~  作者: ゆいレギナ
黄緑のぶいぶい♡第四章

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第33話 わたくしは早く帰りたいですわ…。


 ――あぁ、ラグリさんにまで笑われてしまいましたわ……。


 レッドモンド殿下の付き人だった頃から、わたくしは今まで彼が口角をあげた姿を見たことがない。殿下からも『とても有能だが、寡黙すぎてな』と言われていたくらいの方に笑われるなど……落ち込んでもしょうがないというものではなかろうか。


 ――こうなれば、ぐれるしかありませんわね!


 わたくしはアイリーンさんから受け取ったフルーツを摘みながら、隣で未だ笑っているラグリさんに訊く。


「どうして、わたくしの従者になりたいなどと言いだしたの?」

「おや。その口ぶりだと、専属従者の座は変えないとおっしゃっているように聞こえますが?」


 たしかに……やり方がどうであれ、先にいじめ(疑惑)の首謀者を見つけたのはラグリさんである。勝負の結果を優先するなら、このまま専属従者も変更になるわけだけど。


 わたくしは小さく零す。


「……わたくしはシルバーがいいですわ」

「なら、そのようにグリムヴァルド殿下にはお伝えしておきます」

「え?」


 あっさりすぎる引き際に彼の方を見やれば、すでにいつもの寡黙顔に戻っていた。


「そもそも今回の申し出は、グリムヴァルド殿下からのご命令によるものだったのです。『僕の従者なら、主のリベンジでもしてきてよね!』という」


 ――あの天然ヤンデレめ。


 殊勝に落ち込んでくれたかと思いきや、なかなかせせこましい執念である。


「あの兄弟……似てないにも程がありますわ」

「そうでしょうか?」


 ため息混じりに零した愚痴に、ラグリさんは疑問符を返してきた。


「とても似ている兄弟だと思いますよ――慕っている相手に対して素直じゃないところとか」

「んんん?」


 そしてまた思い出し笑いのようにくつくつと笑い出したラグリさん。


「少々口が滑りましたかね……酔いでも回ったのでしょうか? ……こんなにバカバカしい気分なったのは初めてです」


 ――それには少しだけ同意しますわ。


 実は笑い上戸なのかと思っていると苦笑していると、彼の頭がこちらに傾いてくる。「楽しいですね」とわたくしの肩に頭の重みがかかり、思わず口から「はわわ」が飛び出しそうになった時だった。


「こら~‼ そこのおまけのヤンデレ! 俺のお嬢様にくっつくんじゃねーっ‼」 


 テーブルの上でノリノリだったシルバーがひょいっと飛び降りる。そしてずいずいと近づいてきては、ずっと片手で持っていたお玉でラグリさんの頭を叩いた。


 それに、ラグリさんが眉根を寄せたまま視線だけあげる。


「勝負に勝ったのは自分の方なんですから。このくらいの報酬は構わないでしょう? それとも、本当に専属従者の座を譲ってくれるので?」

「絶対にお断りだ‼」

「そうですよね。自分も主に他の男がイイと言われているのに、無理やり仕える趣味はございません」

「ちょっ、ラグリさん⁉」


 ――何を余計なことを口走っているのですかッ⁉


 だけど、時すでに遅し。

 目の前には、シルバーのニヤニヤ顔が迫っていた。


「ふ~ん。そんなにお嬢様は俺がいいんですか?」

「……いきなりわたくしの関与しないところでの人事異動が気に食わないだけですわ」

「ふ~ん♡」


 あぁ、もう。最低。ラグリさんも思いっきり笑っている。いい性格してるわ。

 だけど、そんなわたくしたちが気に食わない者がいたらしい。シルバーの腕をグイッと引き寄せるのは、首謀者だった令嬢だ。


「もうシルバー! わたしという者がおりながら、結局はラムネリア嬢がいいんですの?」

「は? 当たり前だろ?」

「え?」


 シルバーの即答に、彼女が一瞬固まって。

 その隙に、彼は彼女の手を振り払って踵を返す。戻る先は当然のごとく中央テーブルの上。

 シルバーはお玉を片手に、堂々宣った。


「たしかにみんなは俺の女だ。だけど、俺はリュミエールお嬢様の俺。金で買われる恋愛にはもう飽き飽きだからな。この世界じゃ、そこんとこだけは譲れないからヨロシク!」


 その宣言に、周囲からは令嬢の非難の声があがる。

 しかし、シルバーは悠然と口角をあげた。


「いいだろ? お前らは俺の声だけで濡れて、俺の視線だけで天国までイケるんだから」


 その直後、割れんばかりの黄色い悲鳴が会場を揺らす。


 ――濡れる? 行ける?


 今度は雨の中で傘も差さずにピクニックに行こうとでも誘っているのだろうか。それまた愉快な催しだが、五十名を超える大勢を同時に風邪でも引かせようものなら、その責任をとるのもわたくしである。勘弁してほしい。


 ――今日の分の領収書は、お父様にどう言い訳すればいいのかしら。


 たとえ私財で賄ったとしても、支出は両親に都度報告している。まだ学生ですもの。

 長期休暇の時に怒られるのか、呆れられるのか……それを思うだけで、どうにも今宵はわたくしだけ酔えそうもない。……みんな同じジュースのはずなんですけどね。


 あぁ、またわたくしのシルバーが叫んでいる。

 どうやら、このばか騒ぎを朝まで続ける予定らしい。


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【去年のイロモノ小説】 捨てられた未亡令嬢ですが最強家政婦でもあるので、隣国の聖王子と幸せになりました。
ヒロインの名前はコジマさん
そろそろコミカライズが始まります。 『100日後に死ぬ悪役令嬢は毎日がとても楽しい。』
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