ひとさらい
ひみつの国から、小さな女の子を連れ出した
記憶を頼りに、そっと手を繋いで
遠い昔にあきらめた、夢の欠片
あの日こぼせなかった涙を、女の子が流している
ああ、涙は…自由に流れていいんだ
積み重ねた歴史の上を、小さな女の子と歩く
……ここは、私が歩いた、選択の瓦礫
迎えに来たよ
あなたは私
ようやく迎えに来ることができた
迎えに来たよ
私はあなた
置き去りにされたあなたを迎えに来たの
こどもであることを諦めたあなた
心を閉ざして進むしかなかったね
もう怖い人はいないから
もう従わなければいけない人はいないから
もう感情をぶつける人はいないから
さあ、今から一緒に、世界を楽しもう?
あなたが望んだ世界を見せてあげるから
あなたが望んだ願いを叶えてあげるから
あなたが望んだ時間を与えてあげるから
……にっこり笑う、あなたを見ることができて、良かった
さあ、今から一緒に……思いきり、遊びに行こう!
ひみつの国から、小さな女の子を連れ出した
痛みを頼りに、ぎゅっと手を繋いで
遠い昔に手放した、微かな希望
あの日飲みこんだ言葉を、女の子がつぶやいている
ああ、言葉は…自由に話していいんだ
数々の苦しみの上を、小さな女の子と歩く
……ここは、私が乗り越えた、痛みの残骸
迎えに来たの
あなたは私
ごめんね迎えに来るのが遅くて
迎えに来たの
私はあなた
おいてけぼりにした私を許してほしい
こどもでいられなかったあなた
心を開放する事なんかできなかったよね
もう何を言ってもいいんだよ
もう何を願っても怒られないからね
もう何も心配しなくていいよ
さあ、今から一緒に、世界で歌おう?
あなたが求めた楽園を見に行こう
あなたが求めた優しさをもらいに行こう
あなたが求めた安息を抱きしめに行こう
……陽気に笑う、あなたを見ることができて、うれしい
さあ、今から一緒に……思いきり、はしゃごう!
私の奥底に眠っていた、小さな少女
一人ぼっちで、膝を抱えて、大人になるのを待っていた
一人ぼっちで、顔を伏せて、子供のままで待ち続けていた
大人になるために、私が手放した、私の心
生きていくために、私が手放した、私の心
ねえ、私は子供の頃、何を考えていたんだっけ?
何がしたかった?
何が欲しかった?
何を夢見た?
何をあきらめた?
何に怯えた?
何に憧れた?
忘れてしまった私の心を、ほんの少し見せて欲しい
忘れはじめた私の記憶に、ほんの少し分けて欲しい
ひみつの国から、小さな女の子を連れ出した
記憶を頼りに、そっと手を繋いで
迎えに来たよ
あなたは私
ようやく迎えに来ることができた
迎えに来たよ
私はあなた
置き去りにされたあなたを迎えに来たの
そして私は「子供に帰る」
……にっこり笑う、あなたを見ることができて、良かった
さあ、今から一緒に……思いきり、叫ぼう!
「大好きだよー!」