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神に愛されたアンデッド  作者: しまやん
3/5

このアンデッドはどうしたものか・・(3)


自宅の寝室。


目の前には意識を失ったフレアが、

顔色を悪くしてベッドに横たわっている。




「・・・瀕死になるまで魔力を与えちまうなんて

なに考えてんだこいつは・・」



おでこに乗せたタオルを新しく変えてやる。



苦しそうに荒い息を繰り返している。




「お前がそこまでする必要はないだろ・・・

なんでここまでして・・」



「ん・・・」



「っ!! フレア!!!」



「・・・・ここは?」



「俺の家だ」







「・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・あぁ」






全てを思い出したのか、納得したように呟く。




「・・・ふふっ

なんだかこの光景デジャヴですね。

昨夜も私たち同じやりとりしてた」



「笑い事じゃない。

いいから休んでろ。

無理をすると消滅するぞ」



「大丈夫ですよ・・・

だって私、アンデッドなんですもん・・」



「お前が不死なのはアンデッドとしての魔力を持っているからだ。

魔力がほとんど空っぽの今は、いつ消滅してもおかしくない。

それくらい馬鹿アンデッドでもわかるだろ」



「あはは・・」



「なんでそんなになるまで魔力を渡したんだ。

お前がそこまでする理由がわからん」



「だって、小さな子が死にかけてるのに

放っておくわけにはいかないじゃないですか」



急に力強い言葉で話し出す。



それで、自分が死にかけてたら意味ないだろ。





「アンデッドから出てくる言葉じゃないな」



「そういうのも世の中にはいるんですよ」




本来、生者の敵であるアンデッド。


それなのに、こいつは人間の子供を命がけで助けた。




「なあ、昨日は聞きそびれたが教えてくれ。

なんでお前はアンデッドになったんだ?」






しばらくの沈黙。



そして、声を絞り出すように話し始めた。








「・・・・

・・・・・私の両親の魔法なんです。」




「魔法・・・・どういうことだ?」









大きな深呼吸をし、意を決したように口を開く。







「レナルドさんにはお話ししますね。

・・私はその日、ハンターである両親と一緒にモンスター狩りをしていたんです。

私は正式なハンターではないので、両親について行ってただけなんですが」




ハンターの一家だったのか・・・




「たいした強さではないモンスターでしたので、仕事はすぐに終わりました。

それで、帰ろうとした時・・・・

その辺りでは生息しないはずの、大型ドラゴンに遭遇したのです。」



「ドラゴン!?」



「はい。

懸命に逃げようとしましたが、次第に追い詰められていき・・・・

私たちは致命傷を負いました。

もうこのまま死んじゃうのかなって思ってたんですけど・・」




当時のことを思い出したのか、

フレアの目には涙が浮かんでいた。





「両親が死の間際に最後の魔法を私にかけてくれたんです。

絶対に死なせないって。

それが・・・・」




「禁忌の不死の魔法。

すなわちアンデッド化の魔法か」




「はい、その通りです。

とても治癒できる状態ではない私に、どうしても生きて欲しいと

両親が命を尽くしてかけてくれた魔法で私はアンデッドになりました。

でも、こんな体になった以上帰るわけにはいきません。」




「それで、路頭に迷っていたと」




「はい」




「・・・はあぁ〜・・

だいたいわかった」




こいつがアンデッドのくせに色々ポンコツな理由がわかった。


そりゃ、そんな理由でいきなりアンデッドにされたら

アンデッドの常識なんてわからないだろう。




・・・果たしてこいつを人間の敵と簡単に片付けていいのだろうか。



望んでアンデッドになったわけじゃない。

困っている人は全力で助けるお人好し。



・・・こいつにも神のご加護ってやつがあってもいいんじゃないのか?






「事情は把握したよ。

お前に悪意がないこともな。

・・・とりあえず、次の行き先が見つかるまでここにいろよ」



「・・・へっ?」



「お前一人じゃ外に出たところで、

自分から教会とかにノコノコ入って行って退治されるのがオチだ。

せっかく命がけで助けてもらった命を無駄にするな」



「で、でも!

私がいたらご迷惑じゃ!!」



「迷惑ならもうかけられてる。

乗り掛かった船だ」



「・・・本当にいいんですか?」



「ああ」




するとフレアはついに泣き出してしまった。




明るく、天然っぽい雰囲気だったが、

少し前に両親が亡くなってアンデッドにされて帰る場所も失ったんだ。

生半可なショックじゃなかっただろう。





・・この少女を救ってやりたい。



司教として??



いや、そんな大げさなことじゃないのかもな。



ただ、目の前にいるこいつを助けたいと思う気持ちは恐らく本物だ。





「ほら、いつまで泣いてんだ。

いい加減泣き止め」



慣れていないせいで、ぎこちない笑顔になりながらも

なんとか安心させてやろうとする。




「うぅ・・だって!!だって・・

・・ありがとうございます・・

私・・・もう人間じゃないから・・・

人と関わることなんてできないと思って・・・」




きっとこの街に入ってきたのも、

こいつなりの最後の抵抗だったんだろう。



フレアが俺の手を握り、泣きながら満面の笑みを見せた。




「私、アンデッドになっても絶望しないで本当によかった!

この街に勇気を出して入って本当によかった!!


私、レナルドさんと出会えて本当によかった!!!!!!」




「っ!!!!」




その眩しさに思わず、顔を背けてしまう。



それほどまでに、最高の笑顔を浮かべるフレアは輝いていた。






「これからよろしくお願いしますね!!」



「あ、ああ・・こちらこそ」





なんでこんなにドキドキしてるんだ俺!



・・いくら美人といっても相手はアンデッドだ!



落ち着け!!






「・・そういえばレナルドさん」



「あ、ああ!どうした!!」



「その・・レナルドさんは体の調子はどこも変わりないですか?」



「?? どういうことだ」



「いえ・・・仮にもアンデッドの魔力を大量に注入したわけですから・・・

なにか体に異変とか起きないのかなーって・・」



最後の方になるにつれてどんどん声が小さくなるフレア。



・・・・異変・・・だと・・・・




「おい・・・・実はさっきから腹の調子が悪くて吐き気がするんだが、

それってもしかして・・・」



「・・・・あはは・・」



目を泳がせて、大量の汗をかきながら苦笑いをするこいつの反応ではっきりした。




「・・・・さ、さすが司教ですね!

アンデッドの魔力を体内に流し込まれても

お腹を壊すだけで済むなんて・・・」




「お前・・・さっきまで俺がどれほどの死闘をくりひろげてたか・・・」




フレアが、頬をだんだん引きつらせていくのがわかる。





「そ、その・・

レナルドさん?

顔が怖いんですが・・・

ま、待ってください!

これから私たち一緒に暮らすんですから!

同居人にそんな怖い目を向けちゃダメですよ!」



「同居人・・?」



「そ、そうです!

だ、だから改めて・・・・・・」




フレアが真面目な顔に戻り、

微笑みを浮かべながら口を開く。




「私をこの家に置いてください!」




ひょんなことから始まったフレアとの出会い。



その正体がアンデッドだと知り、

なんとか追い出そうとしていたが、俺はこいつを敵だと思えなかった。



そしてこいつの過去や性格を知り、

美しい微笑みを浮かべる彼女に俺は満を辞して答える。











「ダメだ、帰れ」

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