第8話
「というわけで、その翌日です、はい。ということで、ラルドちゃん、案内よろしく。」
キャンシーたちは朝早くに宿の入り口にいた。
「あの、本当にいいんですか?」
「まぁ、最初に私の方から連れ出しちゃったから断るのもおかしな話だからね。」
「ありがとうございます!」
ラルドの笑顔が華やぐ。
「それじゃあ行こう!おー!」
「お、おー!」
二人は宿から出て行った。
「で、何であなたは行かないのよ?」
「昨日ラルドちゃんを連れ出して誰にも後をつけられなかったって言ってたから、狙いは君かもしれないって、キャンシーが言ってた。」
「だから何よ?」
「お守りは必要だよね?」
「腹立つ言い方だけど、でも、ありがとうございます。」
「いえいえ、どういたしまして。」
キャンシーたちは分かれ道に来ていた。
「昨日は右に進んだので今日は左に行きましょう。左の方が実は安全なんです。」
「安全?」
「はい、この道危険な生物が出てこないんです。」
「へー、それは興味深いなぁ。」
「この道は何もない一本道ですけど、突き当たりに洞窟があります。」
「洞窟?」
「はい、少しだけ入ったことありますけど、そこまで広くなくて、何もいなかったので安全なところです。」
そんなこんなで洞窟の前に着いた。
「んー、特に変わったところは…なさそうだね、入り口は。」
キャンシーは洞窟入り口の壁を小突いた。
(確かに…そこまで広くない。けど、中に誰かいる…)
ラルドはキャンシーの顔を覗いていた。
「ラル、君は最近はここに入った?」
「ら、あ、え、あ、はい!ん?いいえ!最近は来てないです。面白いものもないので。入り口付近には来たりしますけど、中には入ってないです。」
「ふーん、そっか。じゃあ、
キャンシーは少し中に入り壁を思いっきり叩いた。
「ここ、入ろうか…」
キャンシーの足元に人が倒れる。
「わ!え、え?何?え?人が急に…え?な、何、なんですか?」
「驚きすぎだよ…確かに変わった魔法だけど。」
「魔法…へー!私魔法って初めて見ました!」
ラルドは倒れた人の頰をつついている。
「初めて、見た?」
「はい。」
(魔法なんて普通の人でも使えるものもあるし、何よりあの人のオーラ的に結構な使い手だと思ったけど…何か訳ありなのかな?)
「ラル、ちょっとどいて。」
ラルドが離れると同時に倒れていた人を外に蹴っ飛ばした。
「まぁ、とりあえずだけど、ここからは結構厳しいよ。死んでもいいならついてくる?」
「何かを達成するのにリスクは背負わなければならない。それが果てしないリスクでそれに見合った結果が得られなくとも。」
「?????」
「私の好きな言葉です!私だって冒険家の卵!ついていきます!」
キャンシーはラルドの頭を優しく押さえた。
そして、歩き出す。
「あ、待ってください!」
人のことを呼び捨てにするタイミング、難しいですよね。