呼ばれまして、こんにちは。4 〜橘さんの場合〜
私に芽生えた殺意を感じ取ったのか、私の前には冷や汗を流しながらもへらへらと笑うザイル君がいる。
「自分で帰る魔法とやらはねぇのか?」
勇者さんはそう言いながら、送り返し方もわからないのに私を召喚したザイル君に困惑の眼差しを向ける私の喉元から刃が離した。
「あるにはあるけど・・・。」
転移魔法も召喚魔法同様にとても高度で難しい。
「ここから私のいた場所まで移動するのに必要な魔法の力の強さを知る必要があって。強さが弱くても強過ぎても駄目だから、知ってる場所に呼び出されたならともかく呼び出した人じゃないと元の場所に戻るのは不可能に近いの。」
私が視線を勇者さんに移すと勇者さんの眉間にしわが寄り、鋭くて怖い目付きがより怖くなった。
「かなえ。おれ、どうしたらいい?」
ザイル君の顔にさっきまでのヘラヘラっとした笑い顔はなく、私に対して申し訳ないと思っているのかしょぼんとして声も暗い。
「どうしたらって言われても・・・。」
魔法に関しての資料もなければ先生もいないから調べようもないし。
「う・・うぅ。」
どうしたら良いのか考えて込んでいると、気を失って倒れている年下の男の子が呻いた。
考える前に、倒れてる二人にも回復魔法をかけてあげなきゃ。
「あ、あの・・勇者さん?」
「あ"あっ?」
ヒッ!
すごい顔で睨まれた!!
「ボスは勇者だけど勇者って呼ばれるのが嫌いなんだ。」
まぁ、勇者って顔じゃないしね。
「ジオ・・だ。」
私に勇者と呼ばれて不機嫌になってしまったのかブスッとした顔で名前を教えてくれたジオさんに、私自身もジオさんに名前を教えていない事を思い出す。
「私は橘かなえです。」
ジオさんの不機嫌な表情がとっても怖いけど、私は自分の名前を告げながらぺこっと頭を下げた。