そんな二人の旅立ちの時2
「では各自具現化したい魔法をイメージしながは魔方陣を展開して下さい。この時周りの人と魔法陣が重なってしまい事のないよう十分なスペースの確保を怠らないように。」
教頭の話も終わり生徒達が各々必要なスペースの確保に移動するはが私語はなく、そんな生徒達を教頭は眼鏡を光らせながら見回っている。
まず必要な魔方陣を描くのに教科書を眺めながら地面に直接書き込む方法と魔力と使って魔方陣を描く方法があるが、圧倒的に地面に直接書き込む生徒の方が多いようだ。
比較的魔力の強い生徒は魔法陣を描こうと神妙な表情で呪文を詠唱しているのだが、魔法陣がいびつな形になってしまったり、魔法陣がその形が形成される前に弾けて消えてしまっているため成功には到らず、魔力で綺麗な魔法陣を展開出来ているのは先程教頭に注意された橘と呼ばれた女生徒と桐生と呼ばれた男子生徒だけ。
「良いですよ、橘さん。そのまま魔力を具現化してみてください。」
桐生よりも先にウエストの高さで自身の周りをぐるりと囲うように魔方陣を完成させた橘は、教頭の声が聞こえたのか、ウエストの高さにある魔法陣を足元にまで下げて目を伏せた。
「・・・・・。」
集中する橘の足元からは水が溢れ出し、その水は重力に逆らって橘の体の周りを回りながら上昇していく。
「では、そのまま水ではない別の・・・。」
ドッカーン!!!
教頭が橘の魔法の指導をしている最中、教頭から少し離れた場所で何かが爆発したような音と爆風が教頭を襲った。
「桐生君?!またあなたですか?!」
爆音と共に舞い上がった土埃に視界を遮られているため何が起こったのかはわからないが、音のした方角から橘以外で唯一綺麗な魔法陣を描けていた桐生が原因ではないかと予測される。
教頭はなるべく土埃を吸い込まないように片手で口元を覆い、もう片手に魔力を込めて掲げた。
「この土埃を風で飛ばします。目や口に入らないよう顔を伏せていなさい。」
教頭の手に込められた魔力が風の魔法へと形を換え、辺りに舞った土埃は教頭の風の魔法により吹き飛ばされいく。
「す、すごい。」
土埃を吹き飛ばず風力、そして運動場の隅へと吹き飛ばせる教頭の魔力を目の当たりにした生徒の一人が呟いた。
その圧倒的な教頭の魔法が収まった後には、先程の爆音が嘘のような静けさが広がる。
「桐生君・・・あなたって人は。」
教頭の呆れたような声に我に返った生徒達の目に入ったのは、大きく窪んだ地面の中心で座り込む桐生の姿だ。
「あはっ、すみましぇ~ん。」
自らが起こしたとは言え、多少のダメージを受けたのか立ち上がるもフラフラしている。
「私はこの穴の後始末をします。誰か桐生君に回復魔法を・・・。」
「はい!はーい!!おれ、橘希望でーす!!」
教頭が言い終わる前に彼女なわけでもない橘を逆指名をして走り出す桐生の姿を見る限り、体は大丈夫そうだ。