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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

テレパシストが前線で生き残るには

作者: りゅー


コンコンコン、とドアがノックされた。


真っ白な壁に、ベッドと簡素な机、椅子がそれぞれ2つずつ。

そんな小さな部屋に、監察官No.27が入って来る。


「紹介しよう、実験体F962番だ。コードネームはオールラウンダー。仲良くしてやるんだぞ。」


「…よろしく。」


そう言って紹介されたのは、17歳くらいの黒髪の少女。

今日からこのオールラウンダーが、僕のパートナーとなる。


「よろしく。僕は実験体M1番、コードネームテレパシーだ。」


オールラウンダー…万能選手、か。

大体の能力予想はつく、だが一体どれくらい…


「テレパシー。オールラウンダー。早速だが1時間後に模擬演習だ。相手はM869番とF215番。頑張るんだぞ。」


「「はい!!」」


監察官No.27は、そう言うと僕の…

正確には、今日から僕とオールラウンダーの部屋になる部屋から出ていった。


この施設、異能力開発局実験体収容所では、男女のペアで生活を共にする。

僕の前のパートナーは廃棄処分されてしまったので、新たなパートナーがあてがわれたと言うわけだ。


「改めてよろしく。僕はテレパシー。聞いたと思うけど、M1番…要するに、男性体初の実験成功者だ。今日は模擬演習、頑張ろうね。」


「…オールラウンダー。あなたは有名だよね、天才くん。パートナーを、自らの能力で壊しちゃう…って。」


大人しそうだけど、割といい性格してるじゃないか。この子。


「あっ、はは…まぁ、ね。僕の力は制御に難があると言うか…単独行動を前提に作られたからね…」


M869番…今日の模擬演習の相手は、僕のデータを参考に制御を可能にした個体、らしいけど。


「一応、能力の擦り合わせと作戦会議をしないかい?オールラウンダーってことは、遠近索敵のどれもこなせるモデルなんだろ?」


「近距離性能は評価点8、遠距離性能は7、索敵能力も7。個体特有保有能力は感情切除…あなたのパートナーとして作られた、あなた専用能力。」


感情切除…各個体が1つずつ持てる能力を、まさか僕専用に作るとは…ね。

無駄といえば無駄、だよなぁ。


「凄いな、バランス型でオール7以上。君だって、僕なんかよりよっぽど天才じゃないか。」


驚いた。最新個体に近いとは言え、評価が高すぎる。


「別に。作られたのが最近だから、技術が進歩していただけ。あなたの能力は?」


「あー、えっと。オール8だけど…まぁ初期個体だし、廃棄寸前って感じかな。」


「…そんな事、ニコニコしながら言うことじゃあないと思うけど。」


僕の能力自体は、別にそんなに強くない。

ただのテレパシー、ただの精神感応だ。


まぁ、弱い力も使い道、ってね。


「酷いなぁ。最近は、ちょっとずつ制御…ではないけど、使い方を変えられるように頑張ってるんだよ?僕。」


対多人数戦闘ばかりさせられて来たけれど、最近は1対1、2対2の戦闘も増えた。


僕程度の能力で、僕なんかよりずっと強い能力を持った人間に勝つためには、より戦略的で、より高度な立ち回りが要求される。


「今日の模擬戦相手の能力だけど、M869番は僕の能力の…上位互換、いや下位互換かな?僕と違って制御しやすく、より使いやすくされているらしい。F215番は遠距離索敵型。遠距離性能と索敵性能は8だけど、近距離はからきしらしい。まぁそれは嘘っぱちで、情報操作してるんだって噂もあるけどね。」


ぺらぺらぺら。

相手の情報を、知りうる限り話す。

オールラウンダーがキョトンとした顔をして、僕の話を聞いている。


「す、すごいね…。被検体全員の能力を覚えてるの?廃棄されたのも含めたら、男女で合わせて2000人は下らないでしょう…?」


「テレパシーは情報集めに最適だよ。まぁ、1回バレてちょっと怒られちゃったから、最近はあまりやっていないんだけどさ。」


脳内を探られている、という感覚に耐えきれなくて。

大体の人が自殺しちゃうから。


「…それ、やっぱり笑顔で言うことじゃないよ。」


「うん、そうかもね。じゃあもう時間だし、演習場に行こう。」


演習場は、今いる生活棟から少し離れた森だ。

森とは言えどもめちゃくちゃに広くて、様々な地形が用意されている。


模擬演習をする被検体達は、地形の中からランダムに1箇所が選ばれ、目隠しをした状態で演習場のどこかに輸送される。


今回僕らが降ろされたのは、演習場の中でももっとも見晴らしがいい丘の上。


「おー、なかなかいい場所に降ろされたね。ラッキーだ。」


「嘘つき。君の索敵能力なら、演習場の端からでも、もう片方の端にいる敵を殺せるでしょ。」


あらら、バレてる。

オールラウンダーは、僕についてどのくらい知っているんだろう。


「よーゆーぶっこいてんじゃねーぞコラ。」


脳内で。声が響く。


「おっと、見つかっちゃったかな。」


僕は今居る場所から3時方向、2.4キロ先に敵を見つけた、とオールラウンダーにハンドサインで伝えた。


「てーめーみたいな出来損ないに、俺様が負けるわけねーんだよォ!」


M869番、僕と同じテレパシスト。


ちらりとオールラウンダーを見る。

特に異常は無さそうだ。


「きゃぁぁぁ!!」


2時の方向、2.7キロ先でF215番の悲鳴が聞こえる。


「オールラウンダー、何かした?」


「…F215番の腹部を、周りの空気ごと削りとった。ちょっとだけだけどね。」


…怖っ!オールラウンダー、空気で色々できるって言ってたけどこんな事が出来るのか!!


「スナイパーに何したァ!ちくしょう、ペアリングのせーで俺様までいてーじゃーねーかよォ!!」


「へー。彼女、スナイパーって言うんだねぇ。」


一緒に死ねて、よかったねぇ。


そう言って僕も、能力を発動させる。

僕の能力は性質上、周囲にいる人をみんな巻き込んでしまう。


スイッチonとスイッチoffしかないのだ。


僕の思考を、演習場にいる全ての人の脳内に直接流し込む。

ちなみに僕は今、脳内で150冊の本を、記憶だけで逆から読んでいる。


僕の強さの所以は、一度見たり聞いたりした情報を決して忘れないこと。

そしてそれをいつでも活用出来ること。


M869番の頭が弾ける音がした。

脳の処理能力が限界になって、頭の中に異物が入って来たことに嫌悪を覚えて、支給された銃で自らの頭を撃ち抜いた。


「あ、オールラウンダー大丈夫?」


隣に立っていたオールラウンダーを確認すると、泡を吹いて倒れていた。


死んでしまったらしい。


「うーん、またやっちゃったなぁ…」


まぁ、僕のことを色々知っていたみたいだし、能力は強かったし。

死んでもらえてよかった。


本当は、能力、制御出来るんだよなぁ。


今回も、やろうと思えばM869番の脳だけを弄ることも出来たのだけれど。


いつか時が来たら、この施設の人間全員殺さなくちゃいけないし…


死ぬのが、ちょっと早くなるだけだ。

殺しておくのが、正解だよね!


テレパシストが前線で生き残るには、ほかの全てを殺せばいいんだよ。

ふふ、簡単でしょ?

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