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「博士!博士!!」
メアリーは老人の体を揺すり声をかけました。
ですが、老人が目を覚ますことは有りませんでした。
ポタリ、ポタリと老人の顔に滴が落ちました。
「あれ?…これは、何ですか?」
メアリーの瞳から一滴、一滴と涙が流れては老人の顔に落ちていきました。
「博士。これは何ですか?何故、流れるのですか?博士!お願いです。教えて下さい!博士…。」
メアリーは泣き崩れました。
そして、メアリーは初めて感情という名のココロを知るのでした。
「博士…。これが悲しいと言う感情なのですか?どうしてこんなにも、胸の辺りが苦しいのでしょうか?こんなにもぐちゃぐちゃして、言葉に出来ないモノなのに、どうして暖かい気持ちになるのでしょうか?これが博士が求めていたモノなのですか?」
メアリーは沢山の疑問を老人に投げ付けましたが、老人が答えることはもう一生無いこともわかっていました。
「こうして、アンドロイドのメアリーは最愛の人を失う事によって感情を知ることが出来ましたとさ、おしまい。」
静かな広場でメアリーの朗読が終わりました。
「皆さんどうでしたか?」
メアリーの質問に静かに話を聞いていた子供たちが次々と答えました。
「お話のメアリー可哀想だよ!」
「違うよ!可哀想じゃないよ!ちゃんとココロがわかったんだからいいんだよ!」
「ハッピーエンドじゃないよー!」
子供たちはいろんな表情で、色々な感情でメアリーに話しかけました。メアリーは優しく微笑みながら、子供たちの話を聞いていくのでした。
「メアリー次の話はないの?もっとメアリーの話聞きたいよ。」
「私も皆さんとお話したいのですが、そろそろお家に帰る時間ですよ?」
メアリーが子供たちに諭すように告げると、子供たちにはお互いの顔を見ながらメアリーに訪ねました。
「ねー。メアリー、またこの村にくる?」
子供たちの質問に、メアリーは愛しそうに見つめながら、近くにいた子供の頭を撫でました。
「はい。また来ますよ。その時はまた、私と遊んでいただけますか?」
メアリーの質問に子供たちは元気な声で、
「いいよ!!また、遊ぼうね!」
と笑顔で答え帰って行くのでした。