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友情なんてクソくらえ!  作者: ありま氷炎
第3章 純粋な関係
7/46

3-1

ちょっとだけ外野でBL要素があります。

「映画に付き合って」


 そう強引に玲美に言われ、前回途中で帰った詫びと思い、誘いに乗った。

 映画は『幽霊になった元カノ』というもので、祟り系の怖い話し方と思ったらラブコメディだった。なんでも女たらしの男の元に、高校生の時に付き合った彼女が幽霊になって現れて、過去の女遍歴を見せていくという話だった。

 最後はどれだけの人を傷つけてきたかと男が反省し、自分が本当に好きな人と結ばれて終わっていた。

 

 男は俺のことかよと思うくらい似ていて、かなり痛かった。

 しかし隣に座る玲美は笑ったり、目をうるうるさせたりと感動して見ていたようだった。


「あーいい話だったね」


 映画を観終わり、俺達は夕食をとるため近くのレストランに入る。玲美は大満足で、映画の感想を楽しそうに話していた。

 ぎこちない笑顔を浮かべながら、適当に相槌を打つ。


 なんか、どうなんだろう。

 俺もあの映画に見習い、ここは反省するところなんだろうなあ。

 本当に好きな女のこともわかったわけだし。


「武! 聞いてるの?」

「あ、悪い。なんだっけ?」


 俺は悪びれずにそう答える。

 すると、もうっと言い、玲美は口を尖らせた。


 可愛い。


 玲美は二十代前半の可愛い女の子だ。

 多少子供っぽいが、可愛いから許せてしまう。


 やっぱり可愛いって大事だよな。


 眞有はガタイが大きいから、可愛いタイプじゃない。

 性格もあーだし。

 なのになんで俺は……


「武ったら!」


 またぼーとしていたらしい、玲美に上目遣いで睨まれる。

 唇がつやつやと輝き、キスを待たれているような錯覚を覚える。


 いやいや、だめだ。

 俺は生まれ変わるんだ。


 誘いに乗りそうな本能を押しとどめて、グラスを煽り、中の水を口に含む。

 そしてタイミングよく、注文した前菜が運ばれてきて、俺は安堵した。


「きたきた。この店のアスパラガスとローストビーフのサラダはお勧めなんだ。食べてみて」


 俺は二コリを笑うと、テーブルに置かれた前菜を勧める。玲美は一瞬不服そうな顔を見せたが、「いただきます」と食べ始めた。



「じゃ、また。今日は楽しかった」


 夕食を終わらせ、もう帰るの?という玲美を押し切って、彼女に別れを告げた。彼女は溜息をついた後、送ろうかという俺の申し出を断り、その場で別れた。


 玲美は謎の子だよな。

 あの名刺も名前だけしかなかったし。


 ま、いいか。


 駅に向かって歩きながら腕時計を見る。

 時間はまだ午後九時だ。


 木村さんとのとこでも寄って帰るか。

 俺は家近くのバーで飲むことを決めると、足を速めた。



「いらっしゃい」


 店の扉を開けると、穏やかな声がかけられる。

 狭い店内には、数人の客がいた。しかし、カウンターの席は空いており、安堵して座る 。


「池垣さん、今日もウォッカ?」

「うん」


 いつものようにそう尋ねる木村さんにそう答え、鋭い視線を向けられていることに気づく。それは右端に座る男で、黒のスーツを纏った四十代くらいのビジネスマンだった。髪は短く切られており、額が見えるほどで、少しきつめの瞳を俺に向けていた。

 

 知り合いか? 

 いや違うはず。


 しかし男はじっと俺を見つめていた。


 いや、男に見つめられても嬉しくないんだけど。

 どっかで見たことあるかな。

 俺は記憶を探る。


「はい、どうぞ」


 そう木村さんの声がしてカタンと俺の前にグラスが置かれると、男が視線を緩めた。


霧元きりもとさん。この人は僕の常連さんで池垣武さんです。池垣さん、こっちは霧元きりもと建都けんとさんで僕の友人です」


 友人というところで霧元と呼ばれた男が苦笑する。


 えっと、そういうことか。

 だから俺が敵視されていたわけね。


 俺は納得し、無害な笑顔を浮かべた。


「霧元さん。俺は池垣武です。木村さんの単なるお客なのでご心配なく」

「……池垣さん!」


 木村さんが少し赤くなって俺の名を呼ぶ。

 

 予想的中か。

 ま、そうだと思ってたけど。

 俺は対象外でよかった。


 安堵してると霧元さんが再度睨んできた。


「それはよかった。よろしく、池垣武くん」


 フルネームで君付けにかちんときたが、俺もいい大人だと思って二コリと笑顔を返した。


「宜しくお願いします」


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