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友情なんてクソくらえ!  作者: ありま氷炎
第10章 幸せな結末
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10-11

「ね、がんばったでしょ?」


 永香はふふんと笑っている。


 そうですね。

 ありがとうございます。


 永香は大企業の社長である父の名を借りて、宮元社長にアプローチし、俺が用意した報告書を読ませた。アドリの社長さんは娘に名を貸す条件として、彼氏を自宅に連れて来させることを約束させたらしい。その彼氏というのはパーティー会場で見た男前で、眞有の先輩だ。

 永香は彼に自分の家のことを説明してなかったから、かなりしぶしぶこの条件を飲んだと語った。


 はいはい、感謝してます。

 でも弱みを握られたような気持ちも反面ある。


 俺はきっと永香、いや撫山にも一生、頭が上がらない……


 

「ありがとうございます」


 げんなりしてる俺に構わず眞有は顔いっぱいに感謝の気持ちを表せて、ぺこりを頭を下げる。すると、永香が俺に視線を投げかけた。


「安田さんがお礼をいうことじゃないわ。ね?池垣さん」

「……そうだ。俺のためだから。永香、本当にありがとう」

「理解してくれて嬉しいわ。池垣さん」


 ほほほと永香が勝ち誇ったように笑い、やっぱりしまっという気持ちになってしまう。



「安田さん、どうぞ」


 ふいに木村さんがそう言い、かたんと眞有の前に透明の液体の入ったグラスが置いた。


「パイナップル・フィズです。たまにはこういうのもいかがですか?」


 彼女はいつものように色がついているものではない、カクテルをじっと見つめている。


 そうだ。辛いの苦手だもんな。

 俺が試してやろうかな。


「じゃ、私が試してみましょうか?」


 俺が眞有のグラスに手が届く寸前で、奴が先にグラスを掴む。


「!」


 撫山の奴!

 奴が口をつける前に、奴の手を掴んだ。


「俺が試す」

「……いいですよ」 


 撫山は苦笑すると、素直にグラスを武に渡す。


 まったく、油断も隙もない。


「うわあ。甘っつ」


 口に含んだカクテルは思ったよりも甘く、ふいに飴玉を食べたような気分になった。


 これが酒?

 いまだにカクテルがアルコールの分類に入るのが信じられない。


 でも、眞有はこういうのを好むんだよな。


「ほら、眞有。きっとお前が好きな味だ」


 邪魔だと、ぐいっと港を押すと眞有にグラスを返す。


「あ、ありがとう」


 彼女は笑いかけながら、グラスを受け取った。

 

 なんか笑顔がいつもと違うんだけど。

 かっこ悪いとか思われてる?


 そんな俺の気持ちも知らないで、眞有は笑顔でカクテルを煽ろうとした。しかし、それは奴の言葉で遮られる。


「あ、眞有。ちょっと待って。その前に乾杯しましょう」

「乾杯?」


 彼女が訝しげな表情をする。


 そういや、すっかり忘れていた。

 今日は前祝なんだから。


「おお、そうだな」


 グラスを掴むと、掲げる。


「そうね。大事なこと忘れていたわ」


 永香も同意して、ほほほと笑いながらグラスを持った。


「じゃあ、池垣さん。一言どうぞ」


 え、俺か?

 撫山にそう振られ、一瞬戸惑う。

 しかし、そうだ。俺だよな、と思い直し、頭をフル回転させる。そして考えがまとまったところで咳払いをした。


「まず、みんなにお礼を言いたい」


 まずそう始める。


「永香、本当に今回はいろいろありがとう。おかげで助かった。撫山。お前にも感謝してる。眞有のことは絶対に渡すつもりはないけど、お前のことはいい奴だと思ってるから」


 一旦どこで言葉を切る。永香は微笑したままで、奴は肩をすくめると乾杯のため、グラスを持った。


 奴はいい男だ。

 でもやっぱり渡したくない。


「最後に眞有」


 息を吐くと、彼女を見つめる。眞有は俺をじっと見返した。


「色々ごめん。心配かけて悪かった。お前のことはこれから、もっと大切にしようと思ってる」


 本当にごめん。

 でも好きなのはお前だけなんだ。


「武……」


 眞有はじっと俺を見つめたままだったが、その瞳が潤むのがわかった。

 

 眞有。

 好きなんだ。本当に。

 だからずっと側にいて欲しい。


 本当はそう続けたいのに、俺は奴の手前言葉を飲み込む。

 今ここで言うのはフェアじゃない。


「こほん。しょうがないですね」


 しかし、奴は咳払いした後、苦笑した。


「池垣さん。とりあえず私はあきらめることにしました。でも眞有の友人であることには変わりませんので、もし泣かせることがあったら覚悟しててくださいね」

 

 当たり前だ。

 そんなの、泣かせるわけがない。

 眞有は奴の言葉が嬉しかったのか、涙をぽろぽろとこぼす。そんな彼女に永香がすかさずハンカチを差し出してるのが見えた。


「……わかってるよ。そんなこと」


 俺は眞有を大切にする。

 決めたんだ。


 しかし、永香が納得いかないと口を挟む。


「池垣さん。その調子じゃわかっていない感じよね。撫山さん、あきらめちゃ駄目よ。私は撫山さんを応援するから」

「永香!」


 なんってことを言うんだ。

 まったく!


「あら。恩人を怒鳴りつけるとはどういうことかしら?」


 俺の怒声が大きかったらしい。永香がじろりを俺を見た。


 降参だ。

 何も言えない。


 ふん、好きに言ってろ。

 俺は絶対に眞有を大切にするんだから。


「ぷっつ」


 泣いていたはずの眞有がふいに噴出した。

 

 何がおかしいんだ?

 いや、涙が止まってよかった?

 でもなんで笑ってるんだ?


 戸惑う俺の前で、眞有は笑い出し、カウンターに向こう側にいた木村さんも笑う。すると、永香も撫山も笑い始め、店内は笑いに包まれた。

 そのうち、俺も堪えられなくなり、笑い出す。笑いが笑いを呼び、なんだか楽しかった。


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