10-10
「え、あ?」
気分よく木村さんのバーに入ると、きらきらした金髪の美男と、これまた美しい女がいた。
男は撫山で、女は永香だ。
「来ましたね! 予想通りです。永香さん、やっぱり来たでしょ?」
「そうね。すごいわ」
二人はふふふと笑いあっている。
いや、これ、どういうこと
眞有が誘ったとか?
嫌、ありえない。
「さあ、池垣さん、何飲みますか?今日はあなたの驕りですよね?」
「嬉しいわ。今日はおいしいお酒飲めそう」
社長令嬢でお金が有り余るくらいあるはずだろう?
俺は永香にそう突っ込みを入れそうになるが、恩人だと思い堪える。
「えっと、色々ありがとう。おかげで助かった」
「ほほほ。池垣さんの力になれてよかったわ。ね、撫山さん」
頭を下げた俺に、永香は朗らかに笑う。
もしかして、俺は弱みを握られたのか?
「本当、私達も嬉しいですよ。池垣さん」
俺の嫌な予感は的中だと、撫山の美しい笑顔が語っていた。
散々二人に言われまくってげっそりしてると、からんと店の扉が開く音がした。
「あ、眞有」
店に入ってきた眞有で、俺が声を掛けるよりも先に奴が名を呼ぶ。
なんかいらつく。
反射的に顔を強張らせる。すると永香が笑い声を上げた。
「池垣さん、子供みたいよ。ほほほ」
くうう。反論できない。
俺が眉をひそめていると戸惑った様子で眞有が口を開いた。
「えっと、今日はみんなで飲むの?」
「いや、ちがっつ」
そんな予定じゃなかったんだ。
俺がそう言おうとすると、撫山はにっこり笑い俺の言葉を遮断する。
「そうですよ。宮元グループがホテル建設を中止したお祝いです~」
「撫山!」
邪魔するなと思って声を掛けるが、永香が長い睫毛を瞬かせて俺に見る。
「あら、池垣さん。私達に抜け駆けで祝賀会を開こうとしていたのかしら?」
そうだよ。そう。
俺は誰にも邪魔されず、ひっそり眞有を祝いたかったんだ。
「そんなこと、永香と撫山には今週末に地元で開く祝賀会にお礼も兼ねて参加してもらおうと思ってたんだ」
そんな気持ちを押し殺して、笑顔でそう答える。
本当のこと言ったら、何言われるかわからん。
「そうなんですね。じゃあ、今日は前祝いですね」
撫山は、多分俺の魂胆に気がついていたはずだ。しかし無邪気な笑顔をにっこりと浮かべる。
こいつっていい奴だけど、性格はちょっとゆがんでる気がする。
なんか妙に永香と息が合ってるような気もするし。
「安田さん、ここに座ってちょうだい。私が今回いかに努力したか聞かせてあげるわ」
「はあ……」
俺の隣に座らせようと思っていたのに、永香は眞有を撫山と自分の間に座らせる。
明らかに俺への嫌がらせだと思えて、むすっとしてしまう。
そんな俺を横見し、眞有がくすっと笑ったような気がした。
なんかかっこ悪いな、俺。
「眞有は甘いお酒がいいですよね。木村さん、何か甘いカクテルを眞有に作ってください」
へこんでる俺を撫山はさらに無視して眞有に話しかける。
木村さんは苦笑いしながら、カクテルを作るために背を向けた。
「さあ、何から話しましょうかしら」
恩人二人を前に俺は何も言えない。
永香は眞有を見つめると、彼女が来る前に俺に聞かせたことを話し始めた。




